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非効率な特養 なぜまだ増える

さて、ここまで特養を中心とした介護施設のニーズと現状について取材してきたが、特養の存在意義自体に疑問を呈する論者もいる。

一般財団法人「高齢者住宅財団」の理事長、高橋紘士氏だ。「地域包括ケア」を中心に様々な研究、提言を行っている高橋氏は、特養の非効率性を指摘する。

「特養を一つ建てるのにいくらかかるかご存じですか。土地価格にもよりますが、およそ100人規模の特養で10億~15億円ほどです。東京なら20億を超すかもしれません。たった100人の利用者のために15億円ですよ。さらに特養利用者の平均利用日数は何日か。一人約1400日ほどです。つまり特養に入った人はだいたい3年から4年はそこで過ごすんです。この数字だけ見ても、非常に回転率が悪く非効率的なやり方だとわかると思います」

それでも特養を国がつくり続ける理由は、「特養」という目に見える福祉施設をつくることで「福祉対策をしている」アピールができるからだという。

「特養をつくるといって反対する党はほとんどないでしょう。けれども、たった100人のためだけの施設に億単位の金をつぎ込むなら、そのお金を在宅介護サービスの充実や介護従事者の人件費に充てるなど、できることはたくさんあるはずなんです」

高橋氏が加えて指摘するのは、日本人の「死に場所」の変化だ。高橋氏によると、1950年代までは日本人の自宅死亡率は8割だったという。それが70年代に5割になり、2000年には逆転、8割が病院死となった。


「僕は冗談めかして、日本の経済成長が日本の寝たきり老人をつくったといっているんです。かつては脳卒中、心臓発作、肺炎などで自宅死していた高齢者は、今みんな病院に搬送されます。その結果、日本人の寿命は延び、85歳以上になるまでなかなか死亡しない長寿国になったんです」

もちろん、長寿国であること自体は悪くはない。しかし問題は、「どのように長寿であるか」だ。

「北欧に寝たきり老人はほとんどいない。日本とは対照的です。病院で一命をとりとめた人が、1年後に重度の認知症になり、寝たきり状態になるというのが日本のスタンダード。

その原因の一つは、医療、家庭、役所、介護訪問、それぞれの連携が取れていないことにあると私は思っています。

一命はとりとめたけれども障害が残っている人がいるとします。でも家族は日中仕事に出ており、話す相手がいない、障害があるから自由に出歩けない。そのうち体が弱りオムツをするようになる、張り合いがなくなり仰向けのままほとんどの時間を過ごす。つまり認知症や寝たきりの多くは、日本人が意図せず生み出してきたものなのです」

現在、日本社会は急速に高齢化している。内閣府の高齢社会白書(平成28年度版)によると、15年10月時点で日本の総人口は1億2711万人で、65歳以上の高齢者は26.7%だ。だが、約40年後の2060年には、日本の国民数は8674万人になり、65歳以上が約40%を占めるという。国民の約2.5人に1人が65歳以上。街を歩いても電車に乗っても、周囲は白髪の人が溢れている光景が広がるのだ。

<次回に続く>