<前回に続く>

検査費用は日本への渡航費の半分程度

 同社が新たな取り組みとして力を入れているのが、ViewSendの在宅医療現場への応用と海外展開だ。顧客の声を反映し、ViewSendを病院内だけでなく、タブレット端末でも使えるようにした結果、医師は自宅にいながら診断ができるようになり、産休や留学などで一時的に医療現場から離れている医師に画像診断の依頼もしやすくなった。

 嗣江社長は「在宅医療を利用する患者の容体をタブレット端末の画面を通して知ることができれば、医師の業務も軽減でき、医師不足の解消にもつながるはず」と先を見据える。

 同社は海外展開にも力を入れる。医療ツーリズムが盛んな中国にViewSendのノウハウを輸出。中国の病院で撮影された画像を中国国内でクラウドサーバーに保存し、国際病院として認定を受けた日本の中核病院の医師が画像診断を行い、日本での検査が必要かどうか、訪日前にスクリーニングを行う新事業をスタートさせた。

検査費用は日本へ来る渡航費の半分程度で済むという。同社は今後もクラウドを活用した遠隔医療モデルを国内外で展開し、さらなる事業規模の拡大を目指す。

 製品の開発に携わる者が直接現場に赴き、顧客の声を丁寧に拾い上げ、それを商品に反映させる。その姿勢こそが同社の「攻めのIT」経営を成功に導いた必要不可欠な要素だろう。顧客が抱く不満や社会が抱える問題の中には、次のビジネスにつながるアイデアが予想以上に詰まっている。

トップの素顔

同社の経営理念は「インターネットを駆使した遠隔医療支援技術を用いて社会に貢献する」。嗣江社長は他の人にとって役に立つビジネスを行い、感謝されながら収益を出すことを何よりも大切にしている。同社が展開する遠隔医療支援システム「ViewSend」は、そんな嗣江社長の理念やビジョンがギュッと詰まった分身かもしれない。