公共政策と地域社会に詳しい早稲田大学公共経営大学院の藤井浩司教授の話 「超高齢社会に伴い、地域で人と対話する機会がないまま一日を過ごす独り暮らしの高齢者も増えている。『孤立』という現代病ともいえ、行政だけでこうした問題に対処するのは困難だ」という考えに賛同します。今日、高齢化対策に行政になにもかも依存する体制は改めねばなりません。地域の問題は地域で解決する、地域住民の自治によってしか、高齢化の問題は解決しないと考えます。その中で、新たな施設公民館活動「私設Co−Minkan」の動きは注目です。
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【地方再考】私設Co−Minkanで人のつながり創出 デンマーク参考に新しい「茶の間」目指す

11月18日(土)10時38分 産経新聞

「見知らぬお客さん同士をどうつなげるか悩むことも」と語るCo-Minkan館長の能塚翔子さん。カフェの店長でもある=横浜市保土ケ谷区

高齢化社会に伴い独り暮らしの住民が増える中、地域で社会的な孤立を防ごうと、公園や空き店舗などを活用した人と人の“つながり”を目指す「私設公民館」(Co−Minkan)が注目されている。

企画や運営に住民自ら参画することで、市民講座などを中心に行政が運営するものとは機能が異なる。趣味や娯楽、悩み相談など身近な話題を元に出会いや対話する空間の創出を目的とし、地域の人と情報の拠点として期待されている。

 先月、横浜市保土ケ谷区にあるカフェ「見晴らしのいい場所」が「Co−Minkan」としてオープンした。地元の人々が思い思いの会話を楽しみ、子供たちが店内と外を行ったり来たりと、にぎやかな雰囲気を醸し出していた。店内では子供向けの遊びのイベントや健康相談なども日替わりで企画される。

 「誰でも自由にやってきて少しずつ顔なじみを増やし、地域をちょっとずつ良くしていこうとするたまり場がCo−Minkanの役割です」

 こう話すのは、「見晴らしのいい場所」のほか、秋田県でも私設公民館の開設に携わった「Co−Minkan」普及委員会の西上ありささん(38)。地域の課題を地域で暮らす住民が解決していくコミュニティーデザインに携わる「スタジオL」の創設メンバーの一人だ。

 西上さんは「Co−Minkan」プロジェクトに取り組む前に社会教育施設である全国の公民館の活用状況などを調査。その結果、「多くは貸スペースのようになっており、生活課題を解決する本来の役割を果たせずにいる

年配者を中心に限られた人しか出入りできない施設となる傾向があり、公民館自体が消滅の危機だ」と話す。


 文科省作成のパンフレット「公民館」によれば、その役割について「つどう(気軽に集うことができる)」「まなぶ(興味関心から知識や技術を学ぶ)」「むすぶ(ネットワークを形成する)」と明記。人づくり、地域づくりに貢献することを定義していることから、「Co−Minkan」ではこうした「公民館思想」を取り入れ、私設の新しい“茶の間”を目指すことにした。

 参考とするのは、デンマークの成人教育機関(学校)の「ホイスコーレ」。北欧で最も歴史があるホイスコーレは、一定基準を満たせば誰でも設立が可能▽設立者の興味、関心で学ぶコースを設定でき、地域課題や仕事、生活習慣の改善などを考える▽大空間や専門性を持つ教師がいなくても、場所さえあれば、教えられる経験を持つ人が教壇に立つことができるーことなどの特徴がある。

 ホイスコーレのノウハウも取り入れ、「Co−Minkan」を各地に浸透させることで、本来の「公民館」機能のリノベーション(再生)を促していく狙いもあるという。

 普及委員会のメンバーで医師の横山太郎さん(37)は、米アラバマ州のがんセンターでは医師から教育を受けた地元住民が患者を支え受診に寄り添う日常を知り“つながり”が患者の満足度を上げることを学んだという。医療費が年間20億円の削減につながったことにも驚いた。

 「人がつながるCo−Minkanでは楽しさと未来について人々が考えるきっかけを結びつけていきたい。地域で孤立させず、誰でも参加したくなる場や機会にしていきたい」。こう意気込みを語っている。

「公民館」は昭和21年に当時の文部省が町村公民館の設置の奨励を通達したことで全国各地に設置されていった。教育、娯楽、自治や産業振興、若者の要請に関心を持つなど5つの機能を担う地域の中核機関に位置づけられた。

高度成長期と同時に発展を続け、ピーク時には映画やイベントの有料開催、診療所や売店の開設、出版事業などにも乗り出した。平成11年には全国で1万8000超だったが、28年には約1万4600と年々減少の一途をたどっている。

■公共政策と地域社会に詳しい早稲田大学公共経営大学院の藤井浩司教授の話 「超高齢社会に伴い、地域で人と対話する機会がないまま一日を過ごす独り暮らしの高齢者も増えている。『孤立』という現代病ともいえ、行政だけでこうした問題に対処するのは困難だ。

公共とは行政が担うだけでなく、地域の実情に沿った問題をよく知る地元住民が参画し、主体的に動いて課題解決に結びつくケースも多い。年代にとらわれず対話ができ、人や情報が集まる私設の拠点は孤独死などが深刻な社会問題となる中では、今後ますます重要になってくるだろう」