ICT・ロボットを使って介護の効率化を進めよという考えは十分にわかるのですが、それだけでは現在の人出不足には焼け石に水でしょう。介護の現場はどうしても労働集約的な仕事が中心となります。生産性を上げるのにも限界があります。

確かにICTを使うことで、事務の合理化等に寄与することは可能です。むしろ介護の品質向上に意味においてもICT化は必要なのですが、それでも絶対数が足りません。

厳しい人員基準により、労働時間を削減することが極めて難しい状況です。介護以外の時間数をどれだけ削減できるかという問題と、将来的にはロボットを人員配置に見てくれるのかという問題が出てきます。試行錯誤が続くと思われます。
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社説/介護現場の人手不足−ICT・ロボットで効率化進めよ

日刊工業新聞(2017/12/4 05:00)

介護業界で人材不足と事業者の経営難が深刻さを増している。情報通信技術(ICT)やロボットを活用して介護現場を効率化し、介護の魅力を高める取り組みが必要だ。

65歳以上の高齢者が全人口の約3割を占め、介護需要が拡大する一方で、担い手となる人手不足が進んでいる。厚生労働省によると、介護の就業者数は2015年時点で約192万5000人。年率5%(約7万人)で増えているものの、需要の伸びに追いつかない。介護人材の需給ギャップは25年に約38万人になると試算される。

介護情報サービスを手がけるエス・エム・エスによれば、介護職への入職者は年約47万人いる一方、離職者も約36万人に上る。そのうち4割の約14万人は同じ介護職に再就職するが、6割の約22万人は飲食店や小売業など他業界に流れる。景気が上向くにつれ、この傾向は顕著になるそうだ。

介護は人に依存し、人材確保が不可欠。だが保険収入が売り上げの大半を占める事業者にとって、医療費抑制で“実入り”が減る中、賃金を増やすことは困難だ。それが人材不足を招き、人材を確保したい事業者の経営悪化につながっている。

ただ、賃金だけでなく、職場環境や働きやすさが離職や定着を左右するという指摘もある。介護業務では収支管理や報告書類作成といった、直接介護に関わらない間接業務も多い。

ICTやロボットで業務のムダをなくし、職場環境の改善や従業員の満足度を高められれば、離職リスクの低減に寄与する。空いた時間を教育や研修に充て、知識や技術を高めることで、サービス品質の向上も期待できる。

国の社会保障費抑制は事業者の経営を直撃し、倒産・廃業も少なくない。18年4月には3年ぶりに介護報酬が改定される予定で、介護を取り巻く環境はより厳しくなりそうだ。

事業者の6―7割を占める中小事業者は、ICT導入が遅れているといわれる。人材不足と経営難という悪循環を食い止める仕組みが求められる。