パナソニックの介護事業に何が起きたのでしょうか?それまで介護福祉用品等の取り扱いをしていたパナソニックエイジフリーが有料老人ホームに本格参入してまだ日が浅いと思います。特に施設系については小規模多機能型居宅介護施設から取り組み始め、現在汎用モデルとしているエイジフリーハウスは小規模多機能施設+サービス付き高齢者向け住宅です。

最初は、高級型の介護付き有料老人ホームを展開していましたが、現在のモデルへと転換して一気に数を増やしてきました。

エイジフリーハウスは居室数は概ね20室と小規模型で料金も20万円を切る値段(一部20万円を超えるプレミヤハウスも発売をしています)で汎用モデルと言えます。このモデルを全国に一気に展開を図ったものと思われます。

今回大きく軌道修正をした背景には、人手不足が挙げられていますが、それだけではないのではないかと思われます。小規模多機能併設サ高住というモデル自体にも着目したいと思います。

小規模多機能施設はこれまで人員基準が厳しく、採算性が難しい事業と言われてきました。看護師の配置、ケアマネの配置、訪問、デイサービス、お泊りと何でもありの施設なのですが、採算性をとるのは厳しい事業で、国の思惑に反して思った以上に伸びておりませんでした。

このモデルにサ高住を組み合わせたのですから、小規模多機能の介護サービスを活用するサ高住となり、一般の居宅系介護の限度額よりも低い金額の介護サービスを使うことになりますので、決して収益性の高いものにはならなかったのではないでしょうか?このモデルを使って汎用型にしたところに問題はなかったのでしょうか?

それゆえに、今回は富裕層を対象とした高級型の施設への転換を図っているのではないかと考えられます。

いつも言いますように、高齢者住宅は介護度、介護保険適応率、施設稼働率、人件費率の4つの重点管理指標をベースに組み立てる事業です。パナソニックの介護事業戦略(ビジネスモデル)がこの基準を満たしていたかどうかを検証する必要があります。

パナソニックの方針転換はビジネスモデル自体の問題に加えて、人手不足が重なって起きたものではなかったのでしょうか。
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パナ、「異分子」に託す介護事業(日経ビジネス)

コラム(ビジネス)

2017/12/5 6:30

情報元:日本経済新聞 電子版

パナソニックが2026年3月期に2000億円としていた介護事業の売上高目標を撤回した。介護サービスの拠点数を増やして事業拡大を狙ったが、人材確保がままならず赤字のため、現実路線に転換した。主導したのはアナリスト出身の片山栄一執行役員。社外の「異分子」は伝統企業の殻を打ち破れるか。