地域での医療に若者が活路を切り開く、本当に素晴らしいことだと思います。そして、医療とは何かを教える教育の重要性を強く感じます。
このような記事をみると本当に救われます。地域医療の在り方に取り組むこのような先生方を是非、応援したいと思います。
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格差広がる地域医療、若者に活路

第4景・地域の形(8)

福井新聞2017年12月5日 午前7時20分

「立ち上がるときに膝から下が痛いんや。ええ体操を教えてほしいわ」。間口義一さん(71)の問いかけに、福井県高浜町国保和田診療所の医師、井階友貴さん(37)は「お風呂に入ったらゆっくり筋肉を伸ばしてみてくださいね」。

 同町の関屋集会所。持病がある高齢者7人が井階さんの診察を受けた。「ナンテンの木を切ってたら、ひっくり返ってしもた。足は痛いし、頭にはこぶができた。木を切るのに人を頼んだら金がいるしな」。80代の女性には「そうですね。でもあまり無理せんといてね」。

 井階さんは毎週火曜日、町内8カ所を1カ所ずつ巡回診療している。間口さんは「日ごろの生活についても時間をかけて聞いてくれる。病院ではこうはいかないから、本当にありがたい」と話す。

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 「人と人の関係性の中で医療を提供したい」

 井階さんは地元兵庫県の総合病院の内科医を辞め2008年、同診療所にやって来た。

 受け入れ側の高浜町は医療崩壊の危機に直面していた。00年には13人いた医師が、08年には5人に減った。地域医療の再生を目指す町と、井階さんの思いが一致した。

 県内の医師数は、実は増加している。04年の1672人に比べ、14年は1896人で13・4%増。ただ嶺南地域は5人減、奥越地域は6人減。県内で「無医地区」またはそれに準ずる地区は10カ所あり、高浜町など嶺南地域で8カ所を占める。10万人当たりの医師数も福井・坂井(福井、坂井、あわら市、永平寺町)は339・1人だが、嶺南は164・2人、奥越になると113・7人と、地域間格差が広がっている現状が浮かび上がる。

井階さんは、地域医療を続ける方策として「医師の教育の提供」を第一に挙げる。町と福井大は連携し、09年度から同診療所などに、同大医学部の講座を開設。井階さんは同大講師として、学生や研修医に外来、巡回、訪問診療など地域に寄り添う医療を教えている。

 学生たちを呼び込むために、海水浴場での救護体験と地域医療の研修を組み合わせたツアーの企画やホームステイなど、ユニークな仕掛けも実践。学生や研修医の数は08年度は48人だったが、16年度は122人になった。そして、ここで研修を受けた医師ら3人が今年4月に移住し、活動の輪に加わった。

 09年には地域医療のためにできることを実行する有志団体「サポーターの会」が発足。月に1度は健康について語り合う「健高カフェ」を開いている。井階さんが目指す「地域全体で医療を支える」形ができつつある。

 肺炎を治療した高齢者から「治ってもまた苦しむかもしれない。そのままにしておいてくれたらよかったのに」と言われるなど、現実を突き付けられることもある。井階さんは「地域医療とは病気を治すだけでなく、近い距離で安心感を与えてあげること。生活や人生を支えてあげること」と話す。

 巡回診療の関屋集会所。終わりかけに、90代の女性がふらりとやって来た。「先生に会いたかったんや。頭は痛いし、急に(胸が)ドンドンしてきた。私は先生に家に来てもらって死にたいんや。頼むの」。井階さんは言葉の代わりに、穏やかな笑顔でこたえた。