日本の男性を蝕む「孤独という病」の深刻度 前回に続く

群れない男がカッコいい?

特に、男性の場合、「男」「孤独」で検索すると、「いい男」「モテる」「かっこいい」「魅力」などと、ポジティブワードばかりが上がってくる。「男性は自立して、強くあるべき」という社会通念から、「群れない男がカッコいい」という「神話」が独り歩きし、男の孤高が極端にロマン視され、美化されている節がある。

問題は、英語では、孤独にはネガティブな意味の「Loneliness」とポジティブな意味合いを持った「Solitude」(一人で楽しむ孤独)があるが、日本では、その2つがごちゃ混ぜになっていることだ。ポジティブに、「一人」、自立した時間を楽しむことは必要だし、外向的、内向的な人、それぞれに「孤独」の与える影響は異なる。

しかし、「孤独は人生を豊かにする」「孤独が人を強くする」といった昨今の「孤独」礼賛は、「ぼっちライフ」を過度に推奨し、結果的に、「つながり」を求める人間の本能的欲求をそぎ、「黙って孤独に耐えるやせ我慢」を強いることになりかねない。

幸せな人生に最も必要なのは、「良い人間関係」。これは海外の多くの研究で実証されている。特に、被験者の人生を10代から老年期まで、75年間という長期間にわたり、つぶさに記録した、ハーバード大学の長期研究が有名だ。この研究を指揮してきた心理学者ロバート・ウォールディンガー氏はTEDトークの中で以下のように語っている

75年にわたる研究から はっきりとわかったことは、私たちを健康に幸福にするのは「良い人間関係」に尽きるということだ。人間関係に関してわかったのは、周りとのつながりは健康に本当に良いということ、孤独は命取りであるということだ。家族や友達、コミュニティとよくつながっている人ほど、幸せかつ身体的に健康で、つながりの少ない人より長生きするということがわかった。

孤独は毒であり、孤立して生活している人はあまり幸せだと感じていなかった。中年期に入ってからの健康の衰えは早く、脳機能は早期から減退し、孤独でない人より寿命は短くなった。重大なのは、友人の数だけがものをいうのではなく、生涯を共にする相手の有無でもない、身近な人たちとの関係の質である。(筆者要約)

<次回に続く>