介護職員の解雇問題は非常に難しいです。今回の判決も原告の男性に服務規律違反があるものの、法人側に解雇を避けるための努力を十分に尽くしたとは言えないとの認定です。
安易な解雇は当然できるものではありません。結局は法人側がどれだけの努力をしたかが問われますので、日ごろの指導記録をきちんと取っておくことが必要です。解雇に至るまでに、厳重注意、訓戒、減給等々、懲戒の手続きには段階がありますので、この手続きを踏まえての対策が求められます。
人手不足で現場も、経営側も非常にストレスがたまる環境のなか、細心の注意をもってあたる必要があります。
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ORICON NEWS 2018/01/30 

介護職員の「解雇無効」、原告男性が逆転勝訴…顧問社労士による退職強要は認めず

特別養護老人ホームなどを運営する「社会福祉法人蓬莱の会」(相模原市)から不当に解雇されたとして、元職員の男性が地位確認などを求めていた裁判は1月25日、東京高裁で控訴審判決があった。解雇手続きに問題があったと認め、解雇は無効だと判断した。一審判決(横浜地裁相模原支部)は男性の訴えを退けていたため、逆転判決となる。

●解雇は労働契約法に抵触し無効

判決はまず、解雇が労働者(原告の男性)にもたらす結果の重大性に鑑み、使用者(被告の法人)において解雇を回避する努力を尽くさない限り、その解雇が客観的に合理的な理由があるとはいえないと指摘した。

その上で、男性には服務規律違反があるものの、法人側が解雇を避けるための努力を十分に尽くしたとはいえないと認定。「他の部署へ配置転換することで解雇を回避できる可能性を否定できない」として、解雇は労働契約法16条に抵触する無効なものだと結論づけた。

労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定している。

●損害賠償請求までは認めず

一方、原告は顧問社労士による不当な退職強要があったと主張したが、今回された解雇と退職勧奨が慰謝料請求権を認めるべき不法行為とまではいえないとして、損害賠償請求については認めなかった。

原告代理人の甲斐田沙織弁護士は、「請求の根幹部分を逆転した判決だったが、認められていない部分があり、上告するかどうか慎重に検討する」と話した。

被告である社会福祉法人蓬莱の会は取材に応じなかった。