<前回に続く>

◆大規模病院を経営していた地方の有力業者も破綻

 医療、福祉事業の形態別では、事業消滅型の破産が226件(前年比8.6%増、前年208件)と全体の9割(構成比90.4%)を占め、業績不振に陥った事業者の再建が難しいことを反映した。

 また、再建型の民事再生法は17件(前年11件)と増加した。この17件の主な内訳では「病院・医院」が6件、「療術業」が5件、「老人福祉・介護事業」が4件など。「病院・医院」の中には、地元では大規模な総合病院を経営していた地方の有力病院もみられた。

医療、福祉事業の地区別では、全国9地区すべてで倒産が発生した。近畿の88件(前年65件)を筆頭にして、関東73件(同72件)、九州26件(同28件)、中部26件(同23件)、中国16件(同8件)、北海道8件(同9件)、北陸5件(同7件)、東北4件(同11件)、四国4件(同3件)の順。

 前年より上回ったのは、関東・中部・近畿・中国・四国の5地区。これに対して減少は北海道・東北・北陸・九州の4地区だった。

◆人件費上昇で収益悪化

 東京商工リサーチの調査では、全国の医療、福祉事業者1万4834社の2017年3月期決算は、「増収増益」企業の構成比が33.1%に対し、「減収減益」企業も同29.1%と拮抗した。

 さらに、「減益」企業は51.4%と半数を超え、同業との競合や人手不足を補うための人件費上昇が収益悪化につながり、収益確保が難しいことが透けてみえる。

 2018年度の診療・介護報酬の同時改定では、診療報酬が医師技術料などの「本体」部分を0.55%引き上げる一方で、「薬価」などの引き下げにより全体ではマイナス1%前後になる見通しになった。また、介護報酬は0.54%の引き上げに決定したが、通所介護での事業規模やサービス提供時間に応じた基本報酬の細分化など「給付適正化」も進められる方向である。

 このように医療・福祉関連業界では、淘汰の動きに緩みがないことから、引き続き今後の動向から目を離せない。(東京商工リサーチ)