三大死亡原因といえば、がん、心臓病、脳卒中と話が決まっていましたが、どうやら実際の死亡原因の第3位はなんと、過剰な医療によるものとの記事が米ワシントン・ポスト紙に掲載されたとのことです。ショックです。
もっとも多いのが薬の副作用と言われます。二位が院内感染、三位が不要な手術といいます。病院そのものがリスクとなっています。日本でも同様かと思われます。

死亡原因3位は「過剰な医療」…不必要な手術や薬服用等で年20万人が死亡
文=岡田正彦/新潟大学名誉教授

ニュースサイトで読む: http://biz-journal.jp/2018/02/post_22328.html
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三大死亡原因に関する衝撃的な記事が、米ワシントン・ポスト紙に掲載されました【注1】。これまでの公式統計では、日米で順位は少し異なるものの、がん、心臓病、脳卒中、肺炎のいずれかが死亡原因の上位を占めるとされてきました。しかし実際の死亡原因の「第3位」はそのどれでもなく、「過剰な医療」によるものだったというのです。データの出所は、同じ時期に発表された複数の論文でした【注2、3】。

 過剰な医療とは、いったいどんなものでしょうか? ある報告によれば、もっとも多いのが、不必要な薬を飲まされて生じた副作用によるもので、米国では年間10万6,000人がこれで死亡しているとのことです。また別の報告では、これらは病院内に限った推計であり、病院外での出来事も含めると、死亡者数は薬の副作用だけで年間19万9,000人に上るとしています

 過剰な医療で2番目に多いのは、病院内で他の患者からうつる病気、つまり院内感染で、これによる年間の死亡者数は8万人です。病院は、細菌やウイルスなどの微生物に感染した患者が集まる場所であり、なかには繰り返し強い薬が使われてきたために、いかなる薬も効かなくなってしまった極悪の微生物を持っている人もいて、死亡率が高いのです。医師がきちんと手洗いをするようになれば、院内感染による死亡者数は減少するのではないかとも分析されています。

 3番目は、不必要な手術による死亡で、年間1万2,000人です。この点は、少し補足が必要かもしれません。たとえば盲腸炎の手術です。正確には虫垂炎といいますが、多くの人々がこの手術を受けてきたのはよく知られているところですが、ある調査によれば、手術を受ける人の割合が昔に比べて激減しているとのこと。必要がなく、かつ死亡リスクもある手術がつい最近まで行われていたのです。

 このように、後になってから必要がなかったと判断される手術は、いくらでも指摘することができます。がんについても同様で、本連載でも具体的な指摘をいろいろと行ってきたところです。

 ここまでは、医療の高度化・複雑化によって生じる避けがたいトラブルといえるかもしれません。一方、明らかな勘違いや伝達ミス、処置の不手際など、いわゆる「医療ミス」による死亡も無視できず、年間2万7,000人になると推計されました。別の研究者は、年間5万2,000人に達するとも報告しています【注4】。

再発防止の壁


 医療行為がむしろ患者の死亡率を高めてしまっているわけですが、その背景には2つの問題があります。

 ひとつは、医療ビジネスが過熱するあまり、論文のデータが捏造されたり、正しい情報が意図的に捻じ曲げられて医師に伝えられたりしていることです。これがまかり通る理由としてワシントン・ポスト紙は、「たとえば飛行機で旅をするには、キャビンアテンダントからマニュアルに従った注意を受け、粛々と離陸の準備をするだけでよく、乗客にとって難しいことは何もない。しかし病院では一人ひとりに異なる医療が行われるため、患者から見て何が正しいのか判断できないから」と説明しています。

 もうひとつの背景は、単純なミスによる死亡事故が後を絶たないことです。不幸にして飛行機事故が起こった場合は、刑事訴追をしないという免責をパイロットに与えた上で事実を証言してもらい、事故の原因を解明し、世間に公表することが慣例となっています。そのことが再発の防止にも役立つわけですが、医療の場合は訴訟に発展してしまうことが多く、医師も病院もなかなか真実を語ることができません。そのため実態がよくつかめず、また再発防止にもつながってこなかったのです。

 どこの国でも、公式な死亡統計は医師が書いた「死亡診断書」に記載された病名を集計したものとなっていますが、本文で紹介したような一連の出来事は、病名とみなされないまま見過ごされてきました。医療を行う側にも受ける側にも、いま、意識の改革が求められています。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)