<前回に続く>

線維芽細胞を刺激するコラーゲンペプチド

図2 褥瘡治癒とコラーゲンペプチド
 コラーゲンはアミノ酸またはペプチド態として消化吸収される。アミノ酸は新たなコラーゲン合成の原料となりうるが、ヒドロキシプロリン(Hyp)が直接原料として利用されることはない。Pro-HypやHyp-Glyなどのペプチド態は、皮膚、骨、軟骨などの線維芽細胞を刺激して機能を活性化/抑制したり増殖を促進したりする。その結果、コラーゲン合成や生体の様々な反応を引き起こす。(出典:小山洋一:皮革科学 2010;59:71-9.)(*クリックで拡大します)


 近年、栄養摂取が困難な高齢者向けの様々な栄養素を含有した栄養補助食品が数多く販売されている。中でも最近注目されているのがコラーゲンペプチド含有栄養補助食品だ。コラーゲンペプチドはコラーゲン成分としてだけでなく、創傷部位における線維芽細胞を直接刺激し、増殖を促進することが分かってきた(図2)。中でもコラーゲンペプチド10g配合の「CP10」という商品名のコラーゲンペプチド含有飲料は、最近国内で行われた多施設RCTで褥瘡治癒への臨床効果が認められた。

 このRCTでは、22施設において「CP10投与群」「アルギニン飲料投与群」「非投与群」に無作為に割り付け、それぞれの飲料を1日1本、4週間摂取させた。CP10投与群では非投与群と比較して、DESIGN-R(褥瘡創面評価指標)の点数が有意に改善しており、血清Alb値を見るとあまり変化していなかった。(Journal of Nutrition&Intermediary Metabolism 2017;8:51-9.)

「コラーゲンペプチドの摂取で上乗せ効果が得られる可能性がある」と若草第一病院の山中英治氏は語る。

 コラーゲンペプチド含有飲料「CP10」の摂取により、どのようなメカニズムで創傷治癒が早まったのか。その詳細は明らかではないが、CP10にはコラーゲンペプチドのほか、亜鉛などのミネラルやビタミン類も含有しているため、これらの栄養素も奏功したのではないか、と考えられている。

 RCTにより有意差を認めた栄養補助食品は珍しい。RCTを行った若草第一病院(大阪府東大阪市)院長の山中英治氏は「コラーゲンペプチドを、亜鉛などとともに摂取させることで上乗せ効果が得られる可能性がある。まずは三大栄養素、特に蛋白質やミネラルを中心とした、必要十分な栄養素を摂取させ、コラーゲンペプチドを追加投与することで創傷治癒効果を高めることができるのではないか」と話している。