共生社会と障害者 誰にもやさしい社会へ
「共生社会」は、これまで必ずしも十分に社会へ参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会であると言われます。一昨年の相模原市の障害者支援施設における殺傷事件は、障害者との共生社会の実現のあり方について大きな問題を提起しています。
障害者とどのように共生社会を作っていったらよいでしょうか。障害者というと特別の人のように捉えがちです。しかし、高齢になれば、多くの人が身体に障害が生じる場合があります。また、認知症など精神に障害が生じることは今後の高齢化時代の最も切実な課題です。今は障害という状態をもたない多くの人にもかかわることです。誰もが、障害者になる可能性があるということとも捉えられるでしょう。
障害者は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)がある人とされています。障害の「害」と文字が適切なものでないということから「障がい」という言葉を使う人もいます。ここでは法律用語である「障害」という言葉を使わせていただきます。障害には、これらの他に高次機能障害や難病などを含むとされています。それぞれの障害は多様なものですが、共通していることは、これら心身の障害と社会的障壁によって、日常生活や社会生活に相当な制限がある状態であることと言われます。
車椅子を利用する障害者にとって、下半身の麻痺(まひ)は心身の機能の障害ですが、階段は2階への移動を困難にする社会的障壁です。以前は、障害の原因とは本人の心身の状態とされていましたが、最近では本人の日常生活や社会生活を困難にしている社会的障壁に多くの原因があるとされています。
車椅子の方々が2階に上がることが困難で仕事に支障が生じているのは、下半身の麻痺というより、エレベーターなどを設置していない建築物に原因があるとされます。これら社会的障壁は、社会が作り出しているものですから、日常生活や社会生活を困難にしているこれらの社会的障壁を取り除いていくことが重要な政策的課題となってきています。
障害のある人にとって優しい社会はどのような社会でしょうか? だれでもけがをしたり、病気になって一時的であっても移動が困難になることがあります。その際、社会がバリアフリーになっていることは誰にでもやさしい社会であるといえるでしょう。
障害のある人のみならず障害のない人も含めて誰もが安心して生活できる社会を目指すことは、わが国において最も積極的に取り組むべき重要な課題であると思います。このようなバリアフリーの社会を構築していくことこそ、障害者との共生社会を実現していくことと考えています。
上智大総合人間科学部社会福祉学科教授 大塚晃 高崎市八千代町
【略歴】重度知的障害者施設指導員、厚生労働省専門官を経て現職(障害者福祉論担当)。主な研究テーマは発達障害者などの地域生活のためのシステムづくり。高崎市出身。
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