米国で患者の送迎サービスが大きな市場になっているようです。その背景には病院や保険会社が費用負担をするという仕組みにあるようです。日本にはまだそのような会社はありませんし、制度的な問題もありそうですが、低所得者や高齢者を対象としたサービスは今後日本でも必要なサービスでしょう。
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米国で患者送迎サービスが必要な理由
[AP通信] 配車サービスの米LyftとUberは、低所得者や高齢者が抱える、医療に関するある大きな問題の解消に取り組んでいる。その問題とは、病院までの足の確保だ。
ライドシェアの大手2社は配車事業を医療分野に拡大し、全米各地の患者を対象に、救急以外の通院時の送迎サービスの提供に乗り出している。ターゲットとなる市場の規模は巨大だ。
医療経済学者のポール・ヒューズ・クロムウィック氏によれば、米国では毎年700万人以上の人たちが、移動手段がないせいで治療を受けられずにいる。
医療保険会社と医療機関は長年この問題の解消に取り組んでおり、担当者らは、LyftとUberの参入は大いに助けになると期待を示す。ただし医療へのアクセスを向上するためには、送迎サービスの提供だけでは不十分だという。
本稿では、こうした患者送迎サービスの概要と課題を確認する。まずLyftとUberは具体的にどのようなサービスを提供しているのだろうか。
Lyftは3月5日、 医療IT企業のAllscriptsと提携し、診療所などの医療機関への患者送迎サービスの事業規模を拡大すると発表した。Lyftは既に保険会社や公的医療保険制度などと提携し、毎年何百万人もの通院患者に送迎サービスを提供している。
Uberは3月1日、同社がサービスを展開する米国の各エリアにおいて、医療機関への送迎車の配車サービスを提供すると発表した。2017年夏から試験的に運用してきたサービスの正式な始動となる。
両社とも、都市部と人口の少ない地域の両方でサービスを提供する方針だ。送迎費用は、患者本人ではなく医療機関や保険会社が負担する。患者はスマートフォンやアプリがなくても、このサービスを利用することが可能だ。
両社が解消を目指しているのは、保険会社と医療機関にとって長年の課題となってきた問題だ。州と連邦政府が共同で費用を負担している、低所得者や身体障害者向けの公的医療保険制度「Medicaid(メディケイド)」の場合、多くの州で通院時の交通費が給付対象となっている。
メディケイド専門の保険会社Molina Healthcareは約25年間前から、病院への交通手段の提供に取り組んでいる。現在はバス乗車券の配布に加え、輸送仲介業者との連携により、相乗りの送迎サービスを提供している。
●どのような恩恵をもたらすか
医療機関によれば、UberやLyftが提供する送迎サービスはタクシーなどの選択肢と比べて、スケジュールを組みやすく、費用が安価だ。例えばUberの場合、数時間後から最大30日先までのサービスを手配できる。
こうした送迎サービスは、このサービスがなければ知人や家族の誰かが車で迎えに来てくれるのを待つしかない交通弱者たちの役に立つ。ニュージャージー州の理学療法施設Pro Staff Physical Therapyで臨床最高責任者を務めるカルロス・オスピナ氏はそう指摘する。
「こうしたサービスのおかげで、患者はより自立して通院できる」と同氏。
Pro Staff Physical Therapyは2017年秋にUberのサービスを使い始めたが、それ以降、移動手段がないことを理由にキャンセルされる予約は「大幅に減少した」という。
●残る課題も
だがこうしたサービスは本当に問題解決につながるのだろうか。ペンシルベニア大学の研究者らは、フィラデルフィアの2カ所の診療所への通院に利用できるよう、約300人のメディケイド加入者に対し、Lyftのサービスの提供を申し出た。だがその後の調査では、意外なことに、この申し出を受け入れた加入者がかなり少なかったことが判明した。予約の無断キャンセルを減らす効果もなかったという。
調査報告書の主執筆者であるクリスダ・チャイヤチャティ博士によれば、こうした関心の低さには幾つかの理由が考えられる。送迎サービスについて電話で案内したことも、その1つだ。診療所でスタッフが直接サービス内容を説明していれば、利用を検討する患者が増えていた可能性もあるという。
さらに別の理由として、同氏は、患者の多くがLyftのことを知ってはいるが使った経験がないことを挙げる。公共交通機関など使い慣れた移動手段からの切り替えに、患者たちが抵抗を感じた可能性があるという。
チャイヤチャティ氏は、ライドシェアサービスは一部の人たちにとっては移動手段の問題の緩和につながると楽観している。ただし往診や遠隔医療など、その他の選択肢も用意する必要があるという。
「そう簡単にはいかない。それほど単純な問題ではない」と同氏は語る。
(日本語翻訳 ITmedia ニュース)
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