認知症には様々な問題行動がありますが、徘徊のケース一つを取ってみても、アルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型では同じ徘徊でもその症状は異なります。共通して言えるのは本人を否定しないこと、一緒に歩いたり、話を聞いてあげることが大事と言われます。原因がわかればどのように対処すべきかもわかります。問題行動の背後には必ず原因があります。科学的な介護が求められます。
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産経ウエスト 2018.3.11 07:00
更新

【脳を知る】
認知症 タイプによって違う徘徊の理由と対応

一般に「認知症になると困ってしまうのではないか」と思われている症状の一つに、徘徊(はいかい)があります。認知症になると徘徊の症状が必ず出ると誤解されていることが多いものの、症状が出る人もあれば、出ない人もあります。また、認知症のタイプによっても徘徊の理由は異なり、その対応方法も変わってきます。

 まず認知症の中で約50%を占めるといわれるアルツハイマー型認知症ですが、記憶障害のほかに人・場所・時間の認識が悪くなり、人の見分けがつかなくなったり、自分の居る場所が分からなくなったり、今の時間が分かりにくくなったりします。そういった障害を医学的に「見当識(けんとうしき)障害」といい、アルツハイマー型認知症の特徴的な症状の一つです。

 そのため、夜なのに昼だと思って寝ないで活動したり、自宅に居るのに「家へ帰る」と言って家から出ていこうとしたり、といった症状が出現することがあります。また、何かの用事で外出したのに目的を忘れ、徘徊してしまう場合もあります。家族の対応としてはまず本人を否定せず、一緒に歩いたりして話を聞いてあげてください。

 次に幻覚とパーキンソン症状が特徴的なレビー小体型認知症は、実際にないものが見える幻視が出現することが多く、存在しない人影を追いかけて徘徊につながる場合や、何かの妄想で屋外へ出てしまうことがあります。その場合も本人を否定せず、一緒に歩いて話を聞いてあげましょう。

また、前頭葉や側頭葉の萎縮がみられる前頭側頭型認知症は行動を抑制する前頭葉の働きが衰えるため、同じ行動を繰り返す症状(常同行動)が出ます。そのため、毎日同じ時間に同じ道を歩かないと気がすまないかのように散歩を繰り返したりしますので、これが徘徊ととらえられます。

 家族は「事故に遭うのではないか」「行方不明にならないだろうか」と不安になるでしょうが、前頭側頭型認知症の人の行動を抑制すると、よけいに混乱してパニックになったり、暴言や暴力につながったりします。命にかかわることがなく、他人にも迷惑をかけないようなら行動を止めず、見守ってあげる方がいいでしょう

 しかし、家族が24時間365日介護することは不可能なので、介護保険によって訪問や通所(デイサービスなど)のサービスも利用してください。また、認知症の人が一人で外出してしまう場合の備えとしては、連絡先を書いたものを携帯させたり、居場所が分かる携帯電話を持たせたりする方法が挙げられます。最近は、徘徊する高齢者を地域で見守る体制もできつつあります。

 (橋本市民病院 脳神経外科 部長 大饗(おわい)義仁)