今までタブー視されてきた介護職員への暴行、セクハラに現場は限界にきているのではないでしょうか。虐待は全て介護する側の問題点として行政に報告をされますが、逆については誰もが目をつむっている現状です。このまま放置することは出来ない段階にきているのではないでしょうか。被介護者の問題行動を解決するのは介護のプロとしては当然のことですが、行き過ぎた暴行やセクハラについて対策する制度はありません。
このままでは介護人材の不足は更に激化することになりかねません。健康社会学者の河合薫氏のお考えに賛成です。
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介護職員への暴行、杖を股に当てるセクハラも

家族だって見て見ぬふり。もう目を背むけていられない

河合 薫

河合 薫

河合 薫
日経ビジネス 2018年3月20日(火)

介護される側から介護する側への「暴力」もある。それは肉体的なものだけでなく、言葉や性的な暴力も含まれる。その現実を目の前に、我々はどうしたら良いのだろうか……

 「介護職員の虐待はメディアで大問題になります。でも、介護職員が暴力を受けても、注目されることはありません。自業自得って言われるんです」──

 言うまでもないことだが、高齢者への虐待は絶対に許されることではない。
 だが、介護はすべて現場頼みで、暴力と背中合わせだった。その過酷な現実を語ってもらおうとインタビューした介護士さんのひとりが、冒頭の男性だった。

・介護職の55.9%が身体的・精神的暴力を経験し、施設介護職員では77.9%、訪問介護職員では45.0%
・介護職の42.3%が性的嫌がらせを経験。施設介護職員では44.2%、訪問介護職員では41.4%
(以上は「介護現場にあるケアハラスメント」より)

・訪問看護師の33.3%が身体的暴力を経験
(「在宅ケアにおけるモンスターペイシェントに関する調査」より)

・訪問看護師の50.3%が身体的暴力・精神的暴力・性的嫌がらせを経験。
(「訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力の実態と対策」より)

ご存知の通り、政府は医療費抑制のため、入院による治療から介護施設や在宅看護も含めた「地域包括ケア」に医療・介護を変えようとしている。だが、在宅でケアするための人手が不足している。在宅医療の現場で主役となる訪問看護師数は、全看護師の2%前後からまったく増えていないのだ。

 また、厚労省は3月9日、介護職員による高齢者への虐待が過去最高だったと発表したが、その一方で、うつ病などで労災認定される介護職員は増加。2014年までの5年間で2倍以上に増えた。

 介護をする人も看護をする人も劇的に不足し、介護を受ける人も看護をされる人も今後劇的に増加する。そして、超超高齢化社会では、ほとんどの人が「その家族」や「利用者」になる。

 おそらく私が今回、取り上げたことで、また心ない言葉を浴びせたり、看護師や介護士側の問題とする人もいるのだと思う。

 それでもやはり、「現場で起こっていること」をまずは知ってもらいたいという気持ちで、書きました。あなたは、どう感じましたか? ご意見をお聞かせください。