作家の大山眞人(おおやま まひと)氏のシニアレポートをご紹介します。高齢者の置かれている現状を客観的にとらえて頂いており、家族社会が崩壊し、無縁社会にとなった我が国おいて何をなすべきかを大変示唆に富むお話を頂いております。家族が責任を放棄し、国家が責任を放棄する。その中で高齢者の生存戦略をどう組み立てればよいか、新たな共同体の構築が求められています。
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集団的生存戦略を駆使し、無縁社会を乗り切るには(後)
大さんのシニアリポート第66回

(NET-IB NEWS2018年05月18日 )


 ホームに入所しても、“個”の生活を保障してくれるところは少ない。このままの生活が続けられれば良い/子どもたちに迷惑をかけることだけはしたくない/金はあの世にもっていけないし、子どもたちに残しても父親のために使ってくれるとは限らない。捨てられてしまう場合も多い。金は見せ金だ。ちらつかせて子どもたちの機嫌を買う以外にない/結局、子どもに嫌われる親だと簡単に見捨てられる。常日ごろから、子どもたちから可愛がってもらえる年寄りになるしかない。

「血縁(親子)関係が崩壊」しているのであれば、残された道は、桜井政成(立命館大学政策科学部教授 副部長・政策科学)氏の「NPO・ボランティアグループ、互助組織といった集団的な『生存戦略』を駆使し、『無縁社会』を乗り切る方策を考えるべきである」(ネット・「考える犬」~桜井研究室から)という提唱に真剣に耳を傾けるべきだ。

 宮台真司(社会学者・首都大学東京教授)氏が出演する人気ラジオ番組、「荒川強啓 デイ・キャッチ!」の「金曜ボイス」(2018年5月11日放送)で、宮台氏がまた興味深い発言をした。宮台氏の発言を私なりに整理したい。「日本における貧困救済対策の遅れは、国があえて貧困対策を無視し、救済する側(国)とされる側の間にあるはずの共同体を空洞化したままで、救済される側のセルフヘルプ(自助)に判断を委ねたことだ。自己責任化することで肝心の問題を放棄した」という趣旨の発言があった。共同体の存在価値は絶大なものなのである。