株式会社ニッセイ基礎研究所が興味深い論文を発表しています。分権と集権が同時に進む医療・介護改革の論点の中で地方自治体と国の役割について次のように述べています。

『国は可能な限り「自治」に影響を与えない制度改正を考慮するなど、集権と分権のバランスを常に考える必要性が求められる。自治体サイドについても、機能的集権に無気力に対応するのではなく、むしろ地域の現状や特性を直視し、与えられた権限や責任を活用しつつ、地域の関係者とともに適切な医療・介護体制を構築する「ガバナンス」の発想が必要となる』

しかし、どうみても国と自治体は集権と分権のバランスを共に考えているとは到底思えません。責任の所在が不明確なまま、改革の遅れと先延ばしのツケは国民が追うことになります。三原 岳 氏が言われるところの「社会中心アプローチ」に移行できないものでしょうか。とどのつまり我々国民がしっかりとせねばならないということだけは確かなようです。
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分権と集権が同時に進む医療・介護改革の論点-「機能的集権」で考える複雑な状況の構造と背景
株式会社ニッセイ基礎研究所2018.08.14

 医療・介護分野では「惑星直列」と呼ばれるほど、2018年度に一斉に制度改正が進められた。一連の制度改正を総合すると、医療分野では都道府県、介護分野では市町村の役割や権限を強化しており、「分権化」という特徴が見られる。今後、都道府県や市町村には地域の実情に応じた体制整備が求められており、1990年代以降に進んだ地方分権改革の蓄積が問われる。

その一方で、国が都道府県や市町村の取り組みを評価する制度改正も進むなど、国の関与が強まる「集権化」の動きもあり、現在の状況は一概に「分権化」と言い切れない側面を持つ。