今後、少子高齢化は我々に街の在り方について、恐ろしい現実を突きつけることになるでしょう。

各自治体間で人口の奪い合いが始まり、立地適正化計画を遂行してコンパクトシティを実現させたり、子育て支援施策を充実させて定期的な人口流入のある自治体が郊外でも生まれるだろうと言われます。

一方、行政サービスが悪く、人口を減らす都心の自治体も出てくることが予測されます。特にハザードマップで浸水可能性があるような災害が予想される区域は、未来の居住誘導区域からはずされるので、立地適正化計画の指定から漏れた地域は「捨てる街」になるかもしれないのです。

捨てられた街ではごみ収集などの行政サービスが低下し、空き家が増え、ただただ荒廃していくかもしれないと言われます。

都心か郊外か。一戸建てかマンションか。その二項対立ばかりにとらわれず、ラクに暮らせる自治体を選ぶ目線も必要と指摘されています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
将来必ず荒廃する「捨てる街」の選ばれ方
老後に安心、ラクな住まいはどれ?

PRESIDENT Online2018.08.25
「自分の家を持ち、その畳の上で死ぬ」──かつて日本人の多くはそんな往生をしていたかもしれない。しかし時代が変われば「終の棲家」も変わる。どこで暮らせば、安らぎを得ることができるのか。老後にふさわしい住居を検証した。

「駅から徒歩7分以内」の需要が上昇中
都心の駅近マンションと郊外の一戸建て。老後に安心して暮らすには、前者に住むのが手堅い選択だとされてきた。その理由は「トク(資産価値が落ちにくい)」であり、「ラク(利便性に優れている)」であるからだ。
不動産コンサルタント・長嶋修氏は、「リタイアしたら都心マンションから郊外や田舎の一戸建てに引っ越し、第二の人生を謳歌する例はごく少数です」と語る。

「一方、定年退職した高齢者世代が、郊外の一戸建てから都心の駅近マンションに移住するケースは多い。それだけでなく、駅から離れた一戸建てを売り、同じ駅から距離の近いマンションに住み替えすることも珍しくありません。駅近マンションであれば車の運転は不要。足腰が弱くなっても移動しやすく、介護される場合でも介護者が足を運びやすい。また子育てが終わって子どもが独立すると、広すぎる一軒家が必要なくなることも理由の1つです」(長嶋氏)

では、すべての郊外一戸建てが「トク」でも「ラク」でもないかと言えば、そんなことはない。鍵を握るのが、「街のコンパクト化」だ。

これから本格的な人口減少が始まる日本では、地方だけでなく、都心でも持続不可能な地域・限界集落が生まれる可能性が指摘されている。自治体は限られた場所に人口を集約し、行政のコストを減らしていかなければ、存続していけない。

それを受けて2014年、都市再生特別措置法が改正され、「立地適正化計画」が進められるようになった。各自治体が集中的に税金を投入してインフラ整備していくエリア、つまり「活かす街」を指定できるようになった。「都市機能誘導区域」には、医療・福祉施設、子育て施設、学校、役所、商業施設などを集約。さらにその周囲の「居住誘導区域」に住民が住むように働きかける。現在、約350の自治体で進行中だ。

逆に言えば、指定から漏れた地域は「捨てる街」になる。ごみ収集などの行政サービスが低下し、空き家が増え、ただただ荒廃していくかもしれない。未来の居住誘導区域を、どう見分ければいいか。

「浸水可能性があるような災害が予想される区域は、おそらくはずされるので、ハザードマップを必ず確認すること。また市町村役場の都市計画課などで、都市構想や計画を調べたり、地域住民に聞き込みしたりすると、概要がある程度理解できます」