他者の痛みに鈍感な社会の行き着く先が、どのような様相を呈するか?という問題提起に思い当たる節がいくつもあります。高齢者や低所得者、生活保護受給者、外国人労働者を自己責任論や生産性で評価し、経済弱者を見下す社会に未来はありません。映画『PLAN75』(監督:早川千絵)はこの問題を提起しています。
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現実を認めたがらない人たち(前)
大さんのシニアリポート第72回

NET-IB NEWS2018.11.26
 
映画監督の是枝裕和氏がプロデュースした「十年 TEN YEARS」を観た。是枝氏が選んだ5人の新進監督が、「10年後の日本」を脚本制作したオムニバス作品である。
 (1)『PLAN75』(監督:早川千絵)、(2)『いたずら同盟』(監督:木下雄介)、(3)『DATA』(監督:津野愛)、(4)『その空気は見えない』(監督:藤村明世)、(5)『美しい国』(監督:石川慶)の5作品。いずれ起きるだろう日本の近未来を描いていて、見応えのある作品となった。とくに、『PLAN75』には衝撃を受けた。

『PLAN75』は、高齢社会を解決するため、75歳以上の高齢者に安楽死を奨励する国の制度である。将来に希望を見い出せない高齢者に、公務員の伊丹(川口覚)が死のプランを勧める。
 「ただ、膏薬を貼るだけ。痛みも不安もありません。支度金として10万円差し上げます。好きなようにお使いください」という。10万円を受け取って笑顔を見せる高齢者。プランの対象は貧乏人。関係部署の課長はいう。「裕福な高齢者は、消費することで国に多大なる貢献が期待できる。貧乏な高齢者は、国の金を無駄遣いするだけだ」と。

 生産性の見込めない不要な高齢者を始末する政策である。衆議院議員・杉田水脈氏の「LGBTの人たちは生産性がない」発言と見事に合致する。

監督の早川氏はこの作品の制作意図を、「社会に蔓延する不寛容な空気に対する憤り。それがこの作品をつくる上での原動力でした。弱者に対する風あたりはますます強くなり、〝価値のある命〟と〝価値のない命〟という思想が、世の中にすでに生まれているような気がしてなりません。他者の痛みに鈍感な社会の行き着く先が、どのような様相を呈するか、『穏健なる提案』を映画で表現してみたいと思いました」と『十年』パンフレットで述べている。