損保会社が実際に介護施設や介護サービス産業に参入するのは世界的に珍しいと言われます。損保ジャパンが介護事業に乗り出す背景には、ブランドだけでは保険業界で生き延びていることは困難であり、「健康寿命の延伸」というキーコンテンツで新たな保険市場を開発する同社の戦略が伺えます。虚業と実業の両輪において「健康寿命の延伸市場」における派遣を狙うということでしょう。
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損保会社が自ら「介護事業」まで手がけるワケ
SOMPOホールディングス流「保険と介護」
東洋経済オンライン2018.12.07
 SOMPOホールディングス(以下、SOMPOHD)は東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングスと並ぶ3メガ損保の一角である。傘下に大手損保の損害保険ジャパン日本興亜、生保の損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険を擁しているが、最大の特徴は介護関連への独特な取り組みである。2015年にワタミから介護子会社「ワタミの介護」(現SOMPOケア)を買収。2016年にはメッセージ(同)の株式を公開買い付けした。
介護保険や認知症保険のみならず、介護施設の運営や在宅介護サービスの提供までを手がける損保会社は世界的にも珍しい。その仕掛け人こそがSOMPOHD取締役常務執行役員の奥村幹夫氏である。介護関連事業の予算や人事の権限を一手に有する「介護・ヘルスケア事業オーナー」の奥村氏に、介護施設運営など実業を損保会社が手がける狙いを聞いた。

――お話を伺っていると保険が何か脇役というか、ワンオブゼムのように感じてしまいます。SOMPOがやることの意義を教えていただけますか。

保険会社は介護事業に比べると歴史が長いので、信頼感やブランド、顧客基盤が圧倒的にあるわけです。そのブランドを活用して、介護業界で抱えている課題にチャレンジをしていきたい。保険会社で培った顧客基盤を活用しながら、健康寿命の延伸とか、お客様のニーズに応えていく必要があります。単に事故が起こった、保険金を払いますというだけでは、お客様が満足することはもうない。デジタル技術などの新しい技術を使って、お客様の声なき声も含めて、データを収集して補填していくことがグループ全体を通して必要になっていくと思います。その1つがすでにお話しした認知症サポートプログラムです。