福祉ジャーナリストの浅川澄一氏は「がんの終末期において緩和ケア病棟より介護施設の方が苦しまない、という驚くべき報告を上げています。大変うなずける内容です。生かす医療から死なせる医療への転換が遅れている日本の緩和ケアの姿が浮かび上がってきます。「終末期以降は過剰な延命治療をするのではなく、自然の流れに身を任せながら緩和ケアをしっかり行えば、人間、それほど痛がったり、苦しんだりせずにあの世に逝けるはず」という言葉が非常に重い。 
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がんの終末期、緩和ケア病棟より介護施設の方が苦しまない実態
浅川澄一:福祉ジャーナリスト(元・日本経済新聞社編集委員)
ダイヤモンドオンライン2019.1.30
 がん患者総数は約313万人に上るという。国立がん研究がんセンターが、今から5年以内にがんと診断され、生存している患者数を推計した。今後ますます増えていくとみられる。

 年間の新規がん患者が100万人時代を迎え、増勢は止まらないからだ。毎年生まれる子どもの数より多い。2016年に新たにがんと診断された患者数が99万5132人だったと厚労省が1月16日に発表した。

 一方、がんで亡くなる人は17年に約37万人。総死者数134万人のうち28%を占め、死因別でみると断然第1位である。「国民の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死ぬ」と言われる。がんの発症は早晩「日常的な出来事」に近づくだろう。

「がん患者の終末期」が遺族調査で明らかに約3割が亡くなる1ヵ月前に「痛み」
「痛み」が少ない療養場所は、ホスピス・緩和ケア病棟より「介護施設」
 死亡場所別に、亡くなる1ヵ月間の答えを見ると驚くべき事実が明らかになる。「身体の苦痛」と「痛み」は、共に   
 介護施設が最も少なく、次いでホスピス・緩和ケア病棟、そして自宅、最後に病院の順だ
ホスピス・緩和ケア病棟への評価が患者から意外に低いワケ
 病院など医療機関で緩和ケアが浸透しない理由として、自然な死につながるQOD(死の質)への理解不足を 
 挙げる声もよく聞かれる。「終末期に入っても栄養分を投入し続ける延命処置への依存体質」が医療界を覆っ
 ているのは確かだ。

「過剰な延命治療をするから、不要な痛みとつらさを患者さんに味あわさせている」「終末期以降は自然の流れに身を任せながら緩和ケアをしっかり行えば、人間、それほど痛がったり、苦しんだりせずにあの世に逝けるはず」――。 埼玉県新座市で在宅医療を手掛ける小堀鴎一郎医師は、「日本は『生かす医療』はトップクラスであるが、『死なせる医療』は大きく立ち遅れている」とその著書『死を生きた人々』で記す。

全死亡者の90%は65歳以上である。がん患者313万人のうち65歳以上の高齢者は約70%を占める。がんは、認知症と同様に老人特有の障害とみても過言ではないだろう。つまり、老衰とともに現れる症状といえるのではないだろうか。