新聞各紙が安曇野市の「あずみの里」のドーナツ事件を取り上げています。いずれも介護現場への影響の大きさを指摘しています。「不十分な処遇のまま責任のみ重くなれば、高齢社会で最も切実な介護の受け皿は安定しない。国と自治体は対応を急いでほしい」とする論説は多くの関係者の望むところです。     

特養の死亡事故 職員だけの責任なのか
信濃毎日新聞2019・3・26
 介護現場への影響が懸念される。

 安曇野市の特別養護老人ホームで、入居者がドーナツを食べた後に死亡した事故の判決公判が地裁松本支部であった。当時介護に当たっていて業務上過失致死罪に問われた准看護師の女性を有罪とした。

 どの施設でも起こり得る事故が職員個々の刑事罰につながれば、関係者は萎縮し、ただでさえ足りない介護の担い手の確保が一層困難になりかねない。

裁判を巡り、介護や医療に携わる全国の個人と団体が支援組織を結成、無罪判決を求める44万5千筆の署名を集めて松本支部に提出していた。公判のたび100人以上が傍聴の列をつくったのは、危機感の表れと受け取れる。

 介護職員の不足は深刻だ。2025年までに33万7千人増やさなければならないが、確保を見込む都道府県は一つもない。平均給与は月27万円余で、全産業平均に比べて10万円以上も低く、離職率も高止まりしている。

 厚生労働省は今月、全国の特養と老人保健施設で2017年度に事故により死亡した利用者が1547人いた、との調査結果を公表した。職員に責任がないとは言えないものの、直ちに刑事罰に問うことには疑問が募る。