無料低額宿泊所(無低)の規制強化に向けて動き始めています。札幌市で11名の入居者が火災で死亡した生活困窮者向け共同住宅「そしあるハイム」を無料低額宿泊所(無低)に位置づけ、規制を強化する方針です。 厚労省の調査によると、ハイムのような施設は2015年時点で全国に1236施設あり、このうち道内には307施設(全国の4分の1)、3868人が入居していたと言われます。国は火災を受け、こうした施設を無低として位置づけようとしています。

来年4月に改正社会福祉法が施行されると、その無低に対する規制が強化され、設置するには、都道府県への事前の届け出が必要になります。施設の床面積や職員数、災害時の安全確保に関する基準を省令で定め、基準を満たさない施設には、都道府県が改善命令を出せるようにするとのこと。規制を強化すればするほど、無低にもなれない無届の施設が実質的に増えることになるのではないでしょうか?規制強化だけでは低所得者高齢者の問題は解決しません。家賃給付等高齢者の一般住宅を活用した住宅政策に本腰を入れねばなりません。
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そしあるハイム火災から1年【そしあるハイム火災から1年】

同様の施設「無料低額宿泊所」へ
朝日新聞2019.2.16

■「法的位置づけ」効果は
 昨年1月31日の火災で入居者11人が死亡した生活困窮者向け共同住宅「そしあるハイム」(札幌市東区)は、法的な位置づけがない施設だった。国は同様の施設を無料低額宿泊所に位置づけ、規制を強める方針だ。札幌市は防火対策のため、火災後に独自の補助制度を設けたが、困窮者支援の現場に行き届くには、課題が多い。


■来年春、安全確保の規制強化
 ハイムは社会福祉法が定める「無料低額宿泊所」(無低)にも、老人福祉法上の「有料老人ホーム」にも当てはまらない、法的位置づけのない施設だった。行政による安全確保のための規制が及びにくく、補助の対象にもならなかった。


 厚生労働省の調査によると、ハイムのような施設は2015年時点で全国に1236施設あった。このうち道内には307施設あり、3868人が入居していた。国は火災を受け、こうした施設を無低として位置づけようとしている。


 来年4月に改正社会福祉法が施行されると、その無低に対する規制が強化される。設置するには、都道府県への事前の届け出が必要になる。施設の床面積や職員数、災害時の安全確保に関する基準を省令で定め、基準を満たさない施設には、都道府県が改善命令を出せるようにする。


 さらに国は、ハイムのような施設を無低と位置づけることで規制を強める。時期は未定だが、省令や通知などで無低の定義を改め、来年4月の改正法施行に間に合わせたい考えだ。


 一方、無低と位置づけられることで、補助を受けられるようにもなる。国は来年度、無低を対象に、スプリンクラーの設置といった防火対策工事の費用の補助を始め、国と都道府県で費用の4分の3を負担する。


 立教大大学院の稲葉剛特任准教授(居住福祉論)は「首都圏を中心に貧困ビジネスが深刻な問題になる中、規制を設けて住宅の質を底上げすることには賛成だ」と話し、スプリンクラーの設置補助も評価する。その一方で、「規制のやり方次第では、これまで困窮者を幅広く受け入れてきた小規模な事業者などが運営しづらくなる可能性があり、注意を払う必要がある」とも指摘している。