介護現場で働く人と介護サービス利用者が、互いに傷つけ合う。断じてあってはならないことですが、負の連鎖が続いています。お互いにストレスをためるだけではなく、傷害致死事件や訴訟にまで発展するケースが多くなっています。その最大の原因は低賃金による人手不足。それを外国人労働者でカバーしようとしても新たな問題をはらむだけで、根本的な解決にはなりません。ましてや介護の担い手の需要は、香港や台湾、シンガポールなどでも高まっており、既に人材獲得競争が始まっており、長期的な人手不足解消につながるかは心もとない、とする岩手日報の論説は正しいと思います。長期的な視点にたった処遇改善が必要です。
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高齢者虐待 介護職の心労にも目を
岩手日報2019.3.29
 またも、介護職員による高齢者虐待が過去最多を更新した。厚生労働省の調査で、2017年度は500件超。被害者の8割が認知症だった。原因は「教育・知識・介護技術の問題」が最多で、「職員のストレスや感情コントロールの問題」が続く。

 しかし、職員を責めるだけでは、歯止めは掛かるまい。今月、介護現場のハラスメント(嫌がらせ)被害に関し、厚労省が初めて実施した大規模調査の結果も判明。特に、訪問介護職員の半数が被害を受けた経験があるという実態はショッキングだ。

介護現場で働く人と介護サービス利用者が、互いに傷つけ合う。人間的交流からほど遠い現状の背景には、介護人材不足の問題が横たわっている。仕事の負担が大きい割に賃金は低い。限られたマンパワーで働き続け、認知症の周辺症状などに丁寧に対応する心身の余裕を持てない。ストレスはたまる一方だ。

介護を受ける側も、介護職の専門性への敬意を持てず、過酷な職場環境への理解も及ばないまま、十分なケアを受けられない不満が募り、つい不適切な言動に走ってしまう。それが、介護職のストレスを倍加させる。

 こうしたギリギリの状況が続く中、25年には介護人材約34万人が不足すると推計されている。このままでは、相互の葛藤がさらに深まり、虐待の深刻化も懸念される。

外国人材は切り札になるだろうか。受け入れを拡大する新たな在留資格が4月に創設され、政府の19~23年度の介護人材確保計画では最大6万人の外国人労働者を見込む。

 だが、介護の担い手の需要は、香港や台湾、シンガポールなどでも高まっており、既に人材獲得競争が始まっている。長期的な人手不足解消につながるかは心もとない。

 外国人頼みではなく、日本人の介護職の抜本的な待遇改善こそ急がれる。専門性に見合った待遇が社会的地位を高め、若者にとって魅力ある仕事になるだろう。