老後2000万円問題は政府が「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)の公表を意図的に遅らせたことで参院選では決定打になりえず、本格的な議論を先送りすることになりました。その結果、高齢者の生活保護化に歯止めがかけられず、将来に禍根を残すことになりました。そのリスクを血縁支えあいで血縁に押し付けし、後世に先送りすることになるとすれば、社会不安と不満はますます増大することになります。
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年金問題と増える高齢者生活保護。老後生活の「血縁支え合い」リスクとは?
トウシル2019.7.29
ポイント
・年金だけで暮らせないのは想定内?
・増え続けている高齢者の生活保護
・政府の将来設計では語られない高齢者生活保護世帯
・家計はリスクの見える化が必須。血縁支え合いに警鐘

5年ごとに作成される「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」の公表が参議院選挙後に先送りになったため、アベノミクスが将来の年金見通しにどのような影響を与えたのかを確認できず、選挙戦では、抽象論が飛び交うことになりました。

厚生労働省が公表している「福祉行政報告例」および「被保護者調査」によると、2005年4月の生活保護世帯数(現に保護を受けた世帯数)は101万世帯、うち高齢者世帯数は45万世帯、高齢者世帯の比率は44.2%でした。

 生活保護世帯数は増加を続け、2019年4月には162万世帯、うち高齢者世帯数は89万世帯、高齢者世帯の比率は55%に達しています。

民法877条1項には、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と定められています。生活保護の受給資格は、別途、生活保護法の定めがありますが、民法の条文に大きく影響を受けていますし、2013年および2018年の改正で、扶養義務の強化と生活保護基準の引き下げが行われました。