ヘルパーさんの生半可な知識により成年後見人制度を活用して地獄を見るケースが多発している。「法定後見制度は、全ての人にとって必ずしもよい制度とは言えないことをしっかりと認識しなければならない。本人の判断能力があるうちに、任意後見制度を活用することも一つの方法、多様な制度の理解が必要である。安易な選択はすべきではない。
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夫が認知症に… 赤の他人に財産を管理される60代妻の悲劇
マネーポストWEB2020.1.6
 遺産分割を巡り全国の家庭裁判所で争われた事件数は、2012年の8000件から2018年は1万3000件と急増している。そのうち3割は遺産総額1000万円以下というから、もはや他人事ではない。

「最初はちょっとした物忘れだけでした。でも、少しずつ感情のコントロールができなくなり、今では人が変わったように暴力的に。財産管理は夫がしていたので、お金を口座から引き出せなくなって困っていると、ヘルパーさんから『成年後見制度』をすすめられました」(松田さん)

本人に判断能力があるうちに自分の意思で後見人を選ぶ「任意後見制度」と、判断能力が衰えてから家庭裁判所で決定される「法定後見制度」がある。松田さんは、必然的に後者の法定後見制度を選ぶことになったが、これですべてが解決すると安心したのも束の間、最悪の現実が現れた。

 妻である自分が、後見人に選ばれなかったうえ、経済的な自由を奪われたからだ。弁護士の外岡潤さんが話す。

後見人が指名されると、本人が死ぬまで後見人が財産を管理します。そのため、親族はもちろん本人の望むものも自分の判断で買うことができなくなるのです。お菓子や日用品ひとつ買うのも制限されるケースもあると聞きます」

後見人には本人の財産額に応じて月1万~6万円の報酬も支払う。松田さんがこぼす。「法定後見制度は、全ての人にとって必ずしもよい制度とは言えません。本人の判断能力があるうちに、任意後見制度を活用することが何よりの対策です」