住宅セーフティネット制度は住宅確保要配慮者を守るために改正された制度ではあるが、住宅を供給する側にとっては“うまみ”が小さく、リスクが大きい。これが登録を阻む原因となっている。

オーナーは高齢者や外国人に対して約6割、障がい者に対しては約7割、子育て世帯に対しては約1割が拒否感を抱いているという。今後、ますます増えることが想定される住宅確保要配慮者の住宅政策は後手に回っている。このままでは国が公営住宅を増設するか、地主から借り上げるしかない。

NPOほっとプラスの藤田孝典代表が講演で、先進諸外国が「住宅は人権」とした施策をもつなか、日本は「住宅は商品」であり、支援策がほぼないと指摘している。重い住居費負担が国民生活を圧迫し、「貧困、苦しさを加速させている」として、政府が長年進めてきた持ち家政策からの抜本的な転換が必要だという主張はうなずける。

「預貯金あっても高齢者の入居は断ってます」という賃貸住宅は多い…事故物件サイトも影響
Business Journal2020.1.12

 人口減が叫ばれる日本は今後、ますます高齢化が進んでいくと推測されている。国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」(2013年1月推計)によると、65歳以上の単身世帯は2010年の498万から2035年には762万にまで増えると推計された。また厚生労働省の「被保護者調査」によれば、生活保護受給世帯数も右肩上がりで、その多くは公営住宅ではない借家住まいだという。


こうした人々は、家賃滞納などのリスクがあると考えられることなどを理由に、入居審査が通らない場合が多い。住居の確保が困難な人たちについては、公営住宅に受け入れる必要があるが、現状では公営住宅の大幅な増加が見込めない。そこで、増加しつつある民間の空き家などを住宅確保要配慮者向けの住宅として確保しようとしたのが、この制度改正である。

 施行から2年たったが、住宅の登録数は目標には遠く及ばず、その制度すらあまり知られていない。その背景には、住宅確保要配慮者たちの入居に拒否感を持つ大家さんが少なくないという現実がある。


 話を聞いた2人は異口同音に、「この制度を浸透させるには、大家さんへの支援額を増やすべき」だと語る。さらに、「政府が公営住宅を増設するのが一番で、それができないならば民間の物件を一括借り上げしたほうがいいのではないか」とも言う。今後、ますます増えることが想定される住宅確保要配慮者への対策は、再検討する必要がありそうだ。