みわよしこ氏が介護保険業務の外部委託は福祉現場の崩壊につながると警告を鳴らしている。その理由は、人間の生死を左右する職務であり、最もデリケートな個人情報を預かる業務であるからだと指摘。これから急増するであろう高齢者の生活保護に対応するのに、現状の行政の対応では限界ということであろう。高齢者のケースワークは大阪府のように既に外部委託をしている行政もあるという。高齢者の人権は後回しにしてもよいということであろうか。福祉に対する行政の責任放棄ではないか。
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生活保護ケースワーク「外部丸投げ」で始まる、福祉現場の崩壊
(みわよしこ氏)
ダイヤモンド・オンライン2020.1.24
 生活保護ケースワーカー業務は、自治体職員が、自治体の設置した福祉事務所で行う原則となっている。人間の生死を左右する職務であり、最もデリケートな個人情報を預かる業務であるからだ。しかし、2019年後半から急激に、外部委託の可能性が現実味を帯びてきた。

福祉事務所の外部委託については、どのような思いを抱いているのだろうか。今年度、厚労省が開催した「生活保護担当指導職員ブロック会議」では、外部委託および非常勤職員によるケースワーク業務の是非については、賛成 44%、反対 26.4%、その他 29.6%であった。しかし、「おおむね半数が賛成している」と考えてよいのだろうか。内容を詳細に見てみると、疲弊する地域、削られる資金、不足する人員の中で模索する自治体の姿が浮かび上がってくる。

働ける年齢層に手厚いケースワークを行って就労を促進し、高齢者は生存確認プラスアルファ程度に留めるという“割り切り”を表明している自治体もある。しかも、高齢者のケースワークはすでに外部委託しているという。同様の”割り切り”を迫られた自治体は全国にいくつかあるけれども、堂々と表明する自治体は限られる。この自治体は、自由記述欄で「大阪府」であることを表明している。

筆者には、行間から「真綿で首を締め続けているのは、どなたでしょうか?」という皮肉を含んだ怨念のつぶやきが浮かび上がってくるように感じられる。さらに、期待される負担軽減やコストカットなどの効果に対する疑問の声もある。

「最終的には正規職員が判断することになり、負担軽減にはつながらない」

「深刻な人員不足である。外部委託すると、指揮命令や職種多様化でさらに業務が困難になる」

「採用、労務管理、委託業者への指示など、正規職員の仕事が増える」

「業務内容や裁量による判断が多い。すべて契約書に書くことは難しい。外部委託は無理」

ケースワーク業務の「外部委託」という文言を見ただけで、自治体福祉の外部委託や指定管理に食い込んでいる巨大企業の社名を思い浮かべる方もいることだろう。しかし、企業名が透けて見えるほど具体的な外部委託について考える前に、行政として、自治体として、そして政府として、すべきことがありそうだ。