我々は重要な選択を迫られている。コロナ禍は命を守るための大規模な経済封鎖をもたらし、社会に大きな打撃を与える。命を守る代わりに、とてつもない困窮を引き起こし、経済弱者を直撃する。命を守るための極端な措置には、貧困層と若年者を特に苦しめる深刻な犠牲が伴うことになる。それをどれだけカバーできるか、そこに政治力が問われている。
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ロックダウンで脅かされる命もある
Newsweekjapan2020.4.7
<現在のイギリスの「都市封鎖」は経済的封鎖でもあるために、とてつもない困窮を引き起こしている>

新型コロナウイルスの死者数と感染者数が積み上がっていく恐ろしい状況とはまた別に、不安に駆られるようなデータがある。イギリスの4世帯に1世帯が貯蓄100ポンド以下だというのだ。これは、何百万もの人々がギリギリの生活をしていることを思い知らせる。

現在の「ロックダウン(都市封鎖)」は、経済的封鎖でもあるために、とてつもない困窮を引き起こしている。ロックダウンで影響を受けた人々を対象に所得の80%を補償するとした英財務相の発表は寛大だが、十分に迅速でもなければホテルやレストラン、パブ、タクシー業などで収入が途絶えて資金不足に陥った世帯を支援するのに十分でもない。今後確実に起こる失業者急増は、多くの破産と大惨事を生むだろう。

たとえ無情に見えようと、ロックダウンに反論できる根拠もある。スウェーデンで今のところ実施されているような、あまり強硬でない路線は、近いうちにより多くの死者を出すかもしれないが、経済状況はましな状態で持ちこたえるだろう。

だが、これは単に「命かカネか」という問題ではない。「コロナウイルスで失われる命か、ロックダウン不況で失われたり打撃を受けたりする命か」という問題なのだ。


 未来の人々が(誰の犠牲のおかげかも知らずに)よりよい暮らしをするために、今この場にいる多くの命を犠牲にするような政策は、策定することはもちろんのこと、その算定を試みることすらかなり冷酷だろう。

僕はイギリスでの即時のロックダウン解除を支持しているわけではない。このロックダウンは、イギリスの病院が患者急増に対応しきれなくなり、治療が行き届かないことで感染者の致死率が上がるといった状況下で、急きょ実行された。でも、命を守るための極端な措置には、貧困層と若年者を特に苦しめる深刻な犠牲が伴うということを、冷静に理解することも必要だと思う。