淑徳大学総合福祉学部教授結城康弘氏が新型コロナ緊急事態宣言解除後の介護現場の課題について警鐘を鳴らしている。介護の現場で今何か起きているのか。耳を傾けねばならない。660万人にも及ぶ要介護者と就労人口1000万人にもなろうとするヘルスケア産業において起きている事象をどうしてマスコミは真剣に捉えないのか。ケアの仕事をもっと評価する大転換が必要である。

1.介護人材不足の深刻化
2.介護事業所減少の懸念
3.地方と都市部との分断(遠距離介護の危機)
4.今、求められる介護施策
  ・介護スタッフへの「特別支給」
  ・介護スタッフ離れの懸念

今後、社会全体では秋にかけての第二波、第三波に備える議論も出始めている。しかし、介護分野は一人でも関係者に感染者が生じれば、もしくはその疑いがあれば、介護事業の休止もしくは介護スタッフの出勤停止などが継続する。

 

今後も、一時、世間では収束したとしても、要介護者やその家族、介護スタッフらの新型コロナ対策への戦いは息がつけなく、継続していくといえる。そのためにも、繰り返すが、早期に大幅な介護分野への財源措置が急がれる。 
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緊急事態宣言解除後も介護現場は課題つづき――感染症にもろい介護現場
結城康博 / 社会保障論
シノドス2020.5.26

1.感染症にもろい介護現場
緊急事態態宣言の解除によって、一般市民にとっては、全国的に収束の道筋を描き始めている。「小中学校の限定的な登校日の設定」「飲食業の営業自粛緩和」「医療現場におけるオーバーシュート回避への実態」など、わずかながらでも収束の気配はうかがえる。
しかし、介護現場においては、まだまだ予断を許さない状況だ。たとえ、一般社会では収束したとしても、「ポストコロナ」として大きな課題が残され、その対応に追われることが予想される。

筆者は5月半ばにかけて、在宅介護現場を中心に、介護従事者を対象とした緊急アンケート調査を行った(「在宅介護現場における介護従事者の意識調査報告(2020年5月21日)」)。このアンケートから、介護現場は感染症に「もろい」ことが再認識された。その深刻な実態を、本稿では述べていくこととする。

中でも介護職員の疲労はピークに達している。筆者の調査結果の自由意見でも、多くの回答者が、介護人材不足の深刻化を指摘する声が多かった。

 

たとえば、「ノイローゼになりそうな職員もおり、その方の仕事は他の職員に振り分け対応しているため、心身ともにぎりぎりの状態になってきています」「介護現場については、元々の報酬の兼ね合いで人材不足に悩まされている状況です」「介護に関わる人が決定的に減る」「コロナ収束までは、使命感から仕事を続ける介護職もいるが、収束後も介護の仕事をしようと思う人は減り、コロナで営業を継続できない事業所の閉鎖は増える」「倒産、閉鎖事業所が多く出ると思う」などといった意見である。