毎年大規模災害が起きるたびに特別養護老人ホームが犠牲になる。いつもその立地が問題となるが、現状では洪水浸水想定区域でも建設は可能とのこと。この6月閉会した通常国会で都市計画法が改正され、土砂災害の恐れがある地域では福祉施設や病院、スーパーなどの建設を原則禁止し、洪水浸水想定区域の一部でも福祉施設などの建設を厳しくこととなった。ただ、施行予定は22年4月で、既存施設は法の適用外となる。既に建設されている施設は今後も毎年災害リスクに晒されることになる。
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高齢者施設なぜ災害高リスク地に 相次ぐ犠牲、立地規制に限界
西日本新聞2020.7.9
熊本県南部を襲った豪雨による河川の氾濫で、球磨村の特別養護老人ホーム(特養)「千寿園」の入居者14人が犠牲になった。高齢者施設が被災し、居室で暮らす人の命が奪われる例は後を絶たない。そもそもなぜ、災害リスクがある場所への施設の建設が許されるのか。背景には、危険があると分かっていても、一律に立地を規制するのは難しい現行制度の限界がある。

水に漬かった千寿園一体は「洪水浸水想定区域」に指定されており、 国土交通省の図面では、園の周辺は浸水した場合、水深が10~20メートル未満に達するとされている。国土地理院は今回、最も深い地点で9メートルほど浸水したとみており、恐れていた被害が現実のものとなった。

特養は一般的に、公募などで選ばれた事業者が建設地を選び、整備計画をまとめる。これを自治体に提出し、承認されると着工できる。厚生労働省によると、洪水や土砂災害の恐れがある敷地に予定していると、自治体は場所を変更するよう助言はできるが、強制することはできないという。

例えば、自治体が一定範囲を「災害危険区域」に指定すると、一帯では住宅や福祉施設の建設を規制できる。また、都市計画区域内の市街化調整区域でも、整備が一定制限される。しかし、これらのほかは洪水浸水想定区域でも原則禁止されていない。

土砂崩れの恐れが高い「土砂災害特別警戒区域」も対策工事などが必要だが、条件を満たせば建設できる。行政側が民間の開発行為を止めるのには限界がある。