高齢者施設への感染防止で検査体制が注目されるが、医療職と介護職のコラボも始まっている。最初は医療職が感染防止アドバイスに出向くところから始まったが、助言を受けた介護職らは次々と自信をもって日々の業務に当たるようになったという。更に医療職との雑談の中で防護着を作れると知り、スタッフと利用者が作り始めた。最後には防護服の販売まで手掛けるようになったという。「医療は病気を見るだけでなく、生活にどこまで踏み込めるかが大切。福祉の悩みがすくいきれていない」と医療側にも気づきを与えた。悩みが解消されると、福祉の現場は思いがけない力も発揮することを再認識した。
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介護職、自信を得て次の一歩 医療職が感染対策を助言
産経新聞2020.7.31
感染症対策に慣れない福祉や介護の現場へ、医療職がアドバイスに出向く取り組みが進んでいる。現場の悩みは多種多様。マスクはどこまで不可欠なのか、車いすの車輪まで消毒するのか。「こうしたらいい」「それでいい」と助言を受けた介護職らは、自信を持って日々の業務に当たり、次の一歩を踏み出していく。

東京都江戸川区にある障害者の自立生活センター「STEPえどがわ」はNPO法人「ジャパンハート」の医師と看護師の訪問を受けた。

 医療チームから防護服の脱ぎ方などを学び、自前の感染症マニュアルを確認してもらった。マニュアルを作成したSTEPえどがわの介護福祉士で看護師の市川裕美さんは「ネットや知人を頼って作ったので、内容に自信がなかった。『大丈夫』と言ってもらい、今後は自信をもって伝えていける」と安(あん)堵(ど)した。

STEPえどがわに医療チームを派遣したのは、公益財団法人「風に立つライオン基金」。歌手のさだまさしさんが5年前、「ささやかで偉大な活動を行う人を応援する」と設立した。新型コロナウイルスの流行に際し、一般から寄付を募り、福祉現場に医療チームを派遣している。同基金の古竹孝一理事長は「医療と福祉をつなげる活動に重きを置きたい」という。

「医療は病気を見るだけでなく、生活にどこまで踏み込めるかが大切。福祉の悩みがすくいきれていない」と指摘する。悩みが解消されると、福祉の現場は思いがけない力も発揮する。

 東京都町田市にある介護事業所「DAYSBLG!(デイズビーエルジー)」は、認知症の高齢者らが日中を過ごす場だ。ジャパンハートの訪問を受けた後、利用者とスタッフが感染防止のビニール製ガウンを作り始めた。

雑談の中で防護着を作れると知り、スタッフと利用者が「やる!」と手を挙げた。今後は風に立つライオン基金が製品を購入し、介護や医療の現場に提供する。