日本のマスコミの安易さは如何ともしがたい。「0.7%の介護報酬改定で利用者の安定を支えるべき」と東京新聞が社説で主張している。改定率プラス0.7%を金額に換算すると約840億円の押し上げとなるという。果たしてこの金額でコロナ禍で経営悪化に苦しむ介護事業者の経営をどれほど改善させ、介護職員の不足を補うことができるというのか?ドイツでは統一サービス産業労組と連邦介護産業雇用者協会が新型コロナウイルスの感染拡大で人材不足が露呈したとして「介護士は緊急に、切実に求められており、良好な労働条件で獲得、維持するしかないとして、2023年までに約25%の介護士の賃上げに合意した。世界はエッシャンシャルワーカーの待遇改善に本気で取り組み始めている。日本だけが取り残されている。
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介護報酬増額 利用者の安心支えねば
東京新聞2021.2.9
改定の柱は、改定率の引き上げで得られる増額分を事業者の「基礎収益」に配分することだ。コロナ禍により、通所サービスで利用者が減るなど事業者の経営に深刻な影響が出ている。利用者に感染させたり、自身が感染する不安を抱えながら業務を続ける介護職員を支える必要もある。

前回三年前の0・54%引き上げに続く増額だ。コロナ禍でも事業者の経営を確実に支えることが、利用者の安心にもつながる。

利用者はコロナ禍でも被災時でも介護サービスを一日も欠くことができない。政府は事業者が効果的な感染防止策を講じたり、被災時に地域住民との連携ができるよう、支援に知恵を絞るべきだ。 

問題化している介護職員へのハラスメント対策も強化されることになった。賃金だけでなく職場環境改善は人材確保に欠かせず、サービス向上にもつながるはずだ。増額改定で事業者の収入は増えるが、介護保険料や利用者の負担も増える可能性がある。サービスの質向上に努めなければ、利用者の理解は得られまい。 

介護保険制度は、自立した高齢期を支えるため、利用者自らがサービスを決める自己決定権の尊重を重要な理念に掲げる。しかし、制度スタートから二十年がたち、サービスが多様化、複雑化していることも事実だ。利用者に分かりやすく、使いやすい制度の在り方を検討することも今後の課題だ。