社協の死後事務委任の限界














各地の社会福祉協議会(社協)による死後事務委任の取り組みが注目を浴びている。社共が生前に委託契約を結び、亡くなった後の葬儀や家財の処分、行政への届け出などの死後事務手続きを行う仕組みである。単身高齢者の増加により間違いなくニーズは高くなっている。

しかし、社協が行う死後事務委任には限界も伴う。いち早くこの事業に取り組んだ福岡市社協では2015年から「住まいサポートふくおか」の事業を行っている。低所得者に賃貸住宅を斡旋する取り組みである。その一環として、死後事務委任事業として「やすらかパック事業」を行っている。月額3000円~5000円とリーズナブルであるが、対象者は生活保護を受けていない人に限られる。

名古屋の事例も50万円以上の預託金が払える人となっており、低所得者の死後事務委任はリスクが高くて難しいのである。

社協の取り組む住まいサポートも死後事務委任も、そのリスクの高さから利用者は一部に限られるのである。
ここに社協の限界がある。行政の延長上では制度的にリスク負担は難しい。これでは超高齢社会、単身社会のニーズには応えきれない。
何故福岡社協は理想に倒れたか?


















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<身元保証を考える>「死後事務」社協が代行 各地で取り組み
東京新聞2021.4.27  
亡くなった後の葬儀や家財の処分、行政への届け出などの「死後事務」を引き受ける団体が増えている。各地の社会福祉協議会(社協)などが生前に委託契約を結び、代わりに手続きを行う。身近に頼れる家族や親族がいない単身高齢者の増加に伴い、こうした取り組みがさらに広がっていきそうだ。  

◆生前に委託契約  
名古屋市社協は二月から、死後事務を代行する「なごやかエンディングサポート事業」を始めた。▽子や孫がいない▽五十万円以上の預託金が払える▽契約能力がある−などの条件を満たす市内の七十歳以上の人が対象。市社協には以前から「賃貸住宅に住んでいた身寄りのない人が亡くなった後、家財の処分をどうしたらいいか」といった相談が寄せられていたといい、法人後見センター担当の高須美貴さんは「社協として地域の課題に対応しなければと考えた」と話す。  

利用者は市社協の審査を受けた後、公正証書遺言を作成した上で契約。事務手数料(一万六千五百円)と定期的な見守りの年間利用料(一万一千円)のほか、死後に必要な費用を預託金として支払う。葬儀・納骨や債務の支払いのために五十万円以上を預け、家財の処分は見積額が必要。実際にかかった費用の一割を社協が執行費として徴収する。利用者はまだいない。  

単身高齢者の問題に詳しい日本福祉大教授の藤森克彦さんによると、今後、単身高齢者はさらに増えることが予想され、死後事務の対応に不安を抱えている自治体もある。身寄りがなく、第三者に死後事務の委任もしていない人が亡くなった場合、協力を得られる親族が見つからないことが多いからだ。「人の死」というデリケートなことへの対応で職員らの精神的な負担も大きい。   

単身高齢者の死後事務には、民間の身元保証団体が関わることも多い。ニーズに柔軟に対応できる一方、行政の支援がないため費用が高額になることもあり、低所得者は利用しにくいなどの課題もある。藤森さんは「自治体から権利擁護事業の委託を受けているNPO法人なども死後事務の担い手になり得る」と指摘。「自治体が補助すれば利用者の負担を減らせ、運営のチェック機能も働く。地域によって、さまざまな形が考えられる」と取り組みの広がりを期待する。