無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
豊かな高齢者社会の構築に向けて、日々尽きることの無い気付き、出会いを綴って参ります。

カテゴリ: 中国の介護事業

これまで中国で介護事業を展開する際に、多くの企業が何か躊躇している理由が垣間見えます。あくまでも国策としての介護事業が前提で、民間企業が簡単に参入できない背景がわかります。これでは急拡大する中国の高齢化に対応できるのかが心配です。
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中国企業、「党の介入」明文化 上場288社が定款変更

今春から急増


2017/8/17 日本経済新聞 電子版

 【広州=中村裕】中国の上場企業で今春以降、共産党の経営介入が急速に進んでいる。

中国企業の定款変更を日本経済新聞社が調べたところ、党が経営判断に深く関わることを容認するなどの項目を盛り込んだ企業が4月以降で約200社にのぼった。

党の意向をくんだ経営が一段と強まれば、外資企業にとって合弁事業など中国投資のリスクが高まる可能性がある。世界規模の企業もあり、国際秩序と相いれず新たな摩擦を生む恐れもある。

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人口13億人を抱え、一人っ子政策のツケが回ってくる中国はどうか。2002年に7%を上回り、2025年には14%に達すると見られている。この間、24年。やはり日本より短い。

欧州諸国と比べると、その短さが「異常」だと分かる。

英国は1930年から1976年まで46年かかった。ドイツも似たようなものでほぼ同時期に42年。ところが福祉先進国のスウェーデンでは1890年から1972年まで82年もかかり、フランスはなんと114年もかけて1979年にやっと14%を超えた。


 つまり、欧州諸国では、長い時間をかけて高齢化が進んだため、対応策もじっくり検討しながら手を打てた。しかも、経済成長を終えたり、終盤期になってから高齢社会を迎えた。成長の果実を社会保障に振り向けることがたやすい。

そうはいかないのがアジア諸国。経済の成長期と高齢者の増加が同じ時期で、しかも、かなりの短期間で高齢化率が高まる。対応を急がねばならない。


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 楽齢が運営する同じような形態の高齢者ケア施設が石景山区内にあと3ヵ所ある。八角北路社区では、6人が入居していた。リンゴ園と奉寧の部屋数と定員はそれぞれ5室12人、3室8人である。

 各施設の入居者はほとんどが自立歩行できる軽度者。なかには食事介助を受けている高齢者もいたが、スタッフの手助けを得ながらゲームに興じたり、絵を描いていた。

 近くの高齢者宅への家事援助の訪問活動は、1時間で30元(480円)。4事業所で年間延べ61件とまだ少ない。長期の滞在料金は、自立者なら月2600~2800元(4万1600~4万4800円)、半分自立だと2800~3200元(4万4800~5万1200円)、寝たきりになると3800~4000元(6万800~6万4000円)になる。

 このうち900元のベッド代、900元の食費、400元の管理費はいずれも同じだが、介護費の違いで総額が変わる。

 先述の「万柳星林家園」で富裕層向けに取り組まれていた「通い」と「訪問」それに「宿泊」が、ここでも一般庶民向けに行われている。

 
居住環境が個室でないことや、生活感が欠落しているなど課題はまだまだ多いが、病院での長期入院を避けるサービスという点で大いに評価できそうだ。

 かつての日本では、自宅介護が難しい高齢者が行き場を失って、長期の入院を強いられていることが多かった。「社会的入院」と言われる。まだ、日本でも完全に消えているとは言えないが、病院が暮らしの場でないと言う認識は広がっている。

 中国でも、まだまだ同じような病院への依存意識が強いが、こうした先駆的な動きが確実に芽生えてきたのは住民には心強いことだ。大規模な病院や施設ではなく、こうした集合住宅などの住宅地の中で小さい規模の介護サービスが増えていくのはとてもいいことだと思う。


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地域密着型の在宅サービスも

 中国でもボランティアやNPOによる活動が環境や教育の分野で盛んになってきたが、高齢者介護でもNPOの目覚ましい活躍ぶりを見ることができた。北京市の西、石景山区の各社区で地域密着のユニークな在宅サービスを2006年から始めている「北京楽齢老年文化発展有限公司」(楽齢)である。

会社組織ではあるが、高邁な志はNPOそのものだ。行政手続きの問題があって、会社として登録せざるをえなかった。いわば「社会企業」といえるだろう。創業した王艶エン(火かんむりに火ふたつ)さんが1人で立ち上げ、今は専任職員を約40人も抱えている。

 まず、訪問したのは石景山区の八角南路社区にある高齢者ケアの施設。社区は、市の中の小さな行政名。町内会みたいなものだ。3000~5000人前後で構成される。もともと、社区とはコミュニティの中国語訳だという。

 日本の公営住宅のような5階建てのオレンジ色の集合住宅が、この八角南路社区内に建ち並んでいる。もうかなり前に立てられたようなたたずまいだ。同じ敷地内に簡単な造りの平屋の細長い建物が向かい合わせに建つ。「楽齢八角南路社区養老服務中心(高齢者サービスステーション)」と横断幕が掲げられている。つまり、楽齢が八角南路という地域で営む高齢者介護の施設というわけだ。

 ちょうど昼食時だった。30人ほどの高齢者が昼食を摂りに自宅からやってきていた。今日のメニューは餃子定食。1日1食で12元(72円)だが、行政からの補助金があるので、その7割ぐらいで済む。

 食事を摂っているすぐ後ろには、薄いピンク色のカーテンや衝立で仕切られただけのガランとした「居室」が左右にズラッと並んでいる。「24時間の預かり」と表示されており、滞在期間は長短あるようだが、相当に長く住みついている人もいる。

 内部には、ベッドが2台ずつあり、車いすも置いてある。各「居室」の壁には窓があるので、明るいとはいえ、まことに殺風景な雰囲気だ。家具や日常生活を営む調度品もない。写真や絵が壁に飾られてもいない。災害時の避難所を思わざるを得ない。

楽齢の居室はかなり殺風景

 全部で6室、定員は12人。10人が入居しているという。食事を提供しながら見守りが行われている。来所者と滞在者向けの介護のほかにも訪問活動もしている。でも全体のスタッフは4人と少ない。

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地方で暮らし続けた親が認知症になったり、1人での生活が立ち行かなくなると、都会に出てきた子どもたちが引き取る。でも、子どもたちには築いてきた家族の暮らしがあり、住まいにゆとりがないため、同居は難しい。そこで近くの施設に住んでもらえば、頻繁に行き来ができる。近距離介護となるわけだ。

 中国でも似たような事情があるという。運営しているのは「有愛・家養老照枦中心」という企業。7ヵ所の幼稚園を手掛けており、ここで高齢者介護を始めたのは2014年6月。

 デイサービスのように日中外部から通って来る高齢者は1人。それから、周囲のマンションで訪問介護を受けている人は7人。料理や掃除の訪問サービスは1時間で25元(400円)、通院介助は1時間50元(800円)。2人のスタッフで訪問する。週1回だけ利用する人も、毎日の家庭もあると言う。

 訪問と通所、それに宿泊の3サービスを同じ事業者が行っている。日本の介護保険の「小規模多機能型居宅介護」と近い在宅サービスである。といっても、北京には介護保険制度はないので、こうした費用はすべて利用者が支払う。

 泊まり続けている人の食事を含めた入居費は月4200元(6万7200円)。重度になると6000元(9万6000円)が必要になると言うからかなりの高額である。加えて入居時に保証金として5000元(8万円)かかる。入院時などの費用にあてるもので、残額は退去時に返金される。

 入居している85歳の女性について話を聞くことができた。夫が脳卒中のため自宅で倒れたので、夫婦で3ヵ月前に入居した。夫は3週間前に亡くなったが、妻は「1人だと寂しいので」、ここで暮らし続けている。地域の衛生サービスセンターから医師と看護師の来訪を受けながら療養してきた。入居費は夫妻で9000元(14万4000円)。

 スタッフは4人の女性だけという説明には驚いた。いずれも遠く離れた地方から北京に出てきた。全員がこの5DKの一室で泊まり込みながら働いている。「えっ」と思わず聞き返してしまった。だが、説明を聞くうちに納得させられた。かえって今の中国の介護の実情がよく分かった。

 介護制度が確立していないため、在宅サービスがまだ普及していないことや、有料老人ホームは富裕層向けで利用料が高額なため、自宅介護が一般的である。共働きが一般的だから、介護の手が足りない。そこで、沿岸部の大都市で暮らす中間層や富裕層は、家族介護のために地方出身の女性を住み込みで雇うことが広く行われている。

 北京市では、介護を受ける場所についての目標値を「9073」としている。自宅が90%、在宅サービスが7%、病院や施設が3%ということだ。上海市では「9064」である。いずれも2020年を計画達成年としている。自宅介護の比率が高い。

 自宅介護と同様のスタイルが、この「万柳星林家園」での住み込みという働き方で採られていると見ていいだろう。最近では、こうして地方から出稼ぎに来る人たちが少なくなり、大都市部での介護者の不足が問題になっているとも言われる。地方と都市部での人件費格差が縮まれば当然の現象だろう。

<次回に続く>

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