厚生労働省は、介護職員の不足数について中期的な見通しを明らかにしています。 都道府県が推計した介護職員数を集計し、2023年度に約22万人、25年度に約32万人、40年度に約69万人が不足すると試算しています。このままでは超高齢社会を維持できません。
「8がけ社会」を克服するためには介護や医療等のエッセンシャルワーカーの処遇改善は不可欠です。それでは何故、エッセンシャルワーカーの処遇が改善されないのでしょうか。
ヒントはドイツにありそうです。ドイツの人口は8320万人(2021年)と日本が将来行きつくところの人口と想定されます。このドイツでのエッセンシャルワーカーの処遇は参考になります。 田中 洋子筑波大学教授の研究報告をご紹介して参ります。
「ドイツのスーパーマーケットには日本のようなフルタイムとパートタイムの処遇格差がないことでした。驚いたことに、ドイツにはこうした処遇の分断がありませんでした。ドイツにもパートタイム労働者は多くいるのですが、フルタイム労働者との格差がありません。こうしたことがどうして可能なのかというと、その土台として、産業別労働組合が地域の経営者団体と交渉して、働く時間の長さと関係なく、同じ仕事で働くと同じ給与になる、という単一の賃金表をつくっていることが挙げられます。
対策を考えるに当たっては、何故、日本においてエッセンシャルワーカーの処遇が改善されないのかという根源的な原因を探る必要があります。
それは、構造改革や行政改革、「官から民へ」、「小さな政府」という新自由主義的な政策の存在です。こうした新自由主義的なイデオロギーに基づく経済とは、人件費をできる限りカットして、企業の都合に合わせて人を安く使うほど、企業の業績が良くなり、競争力が高まるとする考え方です。 こうした考え方が1990年代から30年間で日本中に広がった結果、エッセンシャルワーカーの低賃金構造がもたらされた、というのが研究によって見えてきたことでした。
<次回に続く>