無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
豊かな高齢者社会の構築に向けて、日々尽きることの無い気付き、出会いを綴って参ります。

カテゴリ: 2018年医療・介護保険制度改正

<前回に続く>

「生活保護の母子世帯なら、テレビがなければ、かえって子どもの教育に良い……という方もいらっしゃりそうですけど、何かの買い替えを一切予算に入れられないくらい、今でも厳しいんです。そこから、さらに母子加算が削減や廃止となると……」(Yさん)

 もう、節約の余地はなさそうだが――。

「町内会を、子ども会を含めて脱退するしかないと思います」(Yさん)

 子ども会から脱退すると、子どもたちは地域のクリスマス会・誕生日会などの機会を失うことになる。

「地域の助け合い」だけでは無理
総選挙で彼女たちの姿を思い浮かべて

 今回は、母子加算があっても苦しい生活保護母子世帯の事情を紹介した。「地域コミュニティや人間関係が、もっと豊かになれば」「子ども食堂や無料の学習教室をもっと充実させれば」「フードバンクが食糧支援をもっと行えば」という意見を持つ方もいるだろう。

しかし結論から言うと、それらは生活保護母子世帯の困難を全く解決しないのだ。様々な事情から、生活保護を利用できずに生活保護以下の暮らしを続けている母子世帯に対しては、さらに解決にならない。

 すでに現在までの生活保護「見直し」は、特に複数の子どもがいる世帯に大きな打撃を与えている。影響は、家庭生活・住居をはじめ、あらゆる面に及ぶ。給付型奨学金の拡充は悪いことではないが、生育や家庭生活のハンデを埋めるものではない。

 いま、「ひとり親」というハンデを抱えた生活保護世帯に対する若干の支えとなっている母子加算が、もしも廃止あるいは減額されたら、いったいどうなるのだろうか。

最も影響を受けるのは、生活保護母子世帯・父子世帯の子どもたちだが、その子どもたちには、社会的発言力はない。もちろん、選挙権もない。

 読者諸氏には、どうか10月22日の選挙を棄権しないでいただきたい。そして投票行動の際、少しだけ発言力も選挙権もない生活保護世帯の子どもたちと親たち、特にひとり親世帯の母親・父親たちを思い浮かべていただければ幸いである。

(フリーランス・ライター みわよしこ)

<前回に続く>

「Tシャツは1枚180円で買えることもあるんですけど、ブラジャーやブラジャー付きタンクトップは、1枚1000円以下にはならないですね。底値のときに買うようにしていますけど」(Yさん)

 女の子は、月経が始まれば、生理用ナプキンが必要だ。学校生活、特に体育の授業などの運動に対応できる生理用ナプキンは、安価ではない。月経の量にもよるが、1ヵ月あたり1000円程度が必要になることもある。

「娘たちは、どうしても学校で必要ですから。でも私は生理用ナプキンを使っていません。自分の下着も、もう何年も買っていません」(Yさん)

 自分の経験を思い出して、思わず溜息がこぼれる。2006年、運動障害が発生したことをきっかけに、私は福祉事務所で生活保護の申請を勧められるほど困窮したことがある。当時まだ閉経していなかった私は、生理用ナプキンを使わず、ボロ布で代用していた。Yさんも、同様にしているということだ。

ノミとダニが布団に大量発生
捨てても買い替えられず布団が減る

 Yさんはこの夏、突然の出費の必要性に直面した。

「古くなった布団に、ノミとダニが発生したんです。畳の上など、家中に繁殖して、子どもたちを刺すんです。大人は狙われないんですけど」(Yさん)

 子どもたちは毎日痒がった。皮膚疾患にかかった子どももいた。

「それで、布団を何枚か処分せざるを得なくなったんです。今は布団が足りない状態です」(Yさん)

 現在は、大人のYさんも含め、布団は1組を2人以上で使っている状態だ。

「布団くらいは、衛生的なものがあるといいなあと思います。1組の布団を何人かで使うのは、子どもたちも大きくなってきたので、狭苦しいです。発達上も、好ましくないと思います」(Yさん)

 しかし生活保護費には、このような生活必需品の買い替えのための費用は存在しない。テレビも壊れているが、修理も買い替えもできない。

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<前回に続く>

子どもへの愛情と配慮を最大の費用とともに注ごうと考えている母親のもとでも、生活保護世帯の子どもの生活は厳しい。しかも当時は、母子加算があった。また、生活保護費の生活費分も、現在よりは高かった。生活費分の削減が始まった2013年夏のことを、ミサトさんはこう語る。

「1万4000円くらい下がって。これからアスカの高校受験もあるのに、どうしようかと思いました」

 もしも母子加算がなかったら、さらに何を諦めることになっただろうか。

「公営団地の子ども会に参加させることを諦めたと思います。あと削れたとしたら、子ども会費くらいでしたから。そうすると、地域の小学校の集団登校にも参加できなくなるのですが」(ミサトさん)

下着や生理用ナプキンを買えない
母親が自分のために「選択したもの」

 一方、千葉県のYさんは、6人の子どもとともに生活保護で暮らすシングルマザーだ。現在、高校生から小学生の6人の子どもたち全員が、母子加算の対象となっている。

 子どもたちは、Yさんの愛情に加え、保育士だったYさんの専門知識とスキルを反映した多様な配慮のもと、心身とも健やかに、個性豊かに育っている。Yさんが離婚する以前は父親からのDVや虐待が日常的だったのだが、過去の影は感じられない。

 公立高校に通う高校生の子どもには、給食がない。Yさんは、高校生の子どもの弁当を毎日手づくりしている。食費の増加が家計に痛い。また、中学までは生活保護費でカバーされる部分が大きかった学校関連の経費も、高校になるとカバーされない部分が大きくなる。

「予想以上にお金がかかります。中学校の比ではありません。そして、請求は一気に来るんです」(Yさん)

 貯金で備えることはできない生活状況だ。「支払いを待ってもらって振り込んだことが、何回もあります」とYさんは言う。高校生の子どもを含め、年長の子どもたちは思春期に突入した。第二次性徴が始まれば、女の子にはブラジャーも必要になる。
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<前回に続く>

ともあれ、ミサトさん・アスカさん母子が生活保護で暮らし始めた2010年、母子加算は復活していた。アスカさんの中学生時代、「お金がない」ことを理由に諦めたことをミサトさんに尋ねると、「もう、あれもこれも」ということだった。そのうちでも最も辛かったのは、中学校の他の生徒たちから見える部分であろう。

「まず、中学校指定のジャージを買い替えることが、なかなかできませんでした。結局、ボロボロになったジャージを3年間着せざるを得ませんでした」(ミサトさん)

 私は、裕福とは言えなかった家庭から私立中学・高校に通っていた。「どうしても」というもの以外は親に購入を相談しにくく、ジャージは中高6年間で1回だけ買い替えた。白くなくなった学校指定の白色Tシャツで授業に参加していたとき、引け目は「なかった」といえば嘘になる。アスカさんが日常的に感じていた引け目は、どれほどのものだったのだろうか。想像も及ばない。ジャージ以外にも数多かったことだろう。

「学校に持っていくサブバッグも、買い替えてやれませんでした。学校指定のものではなかったのですが」(ミサトさん)

 学校指定ではないのなら、比較的安価なはずなのに、買い替えが困難だったのだ。

生活保護の削減が始まり
いよいよ苦しくなった

「靴も、3年間買い替えられませんでした。外履きも上履きも学校指定のもので、入学年次によって違う色の線が入っているんですが」(ミサトさん)

 価格は、「外履きが3500円、上履きも同じくらいだったと思います」とのこと。朝日新聞(当時)の錦光山雅子記者が世に問うた、制服・学用品価格が「高止まり」しがちな問題そのものだ。入学当初、冬・夏の制服を含め、学校指定の一式を揃えるのに10万円近くの費用が必要だったということだ。生活保護費から入学準備金は給付されたが、2011年の金額は約4万6000円だった。

 それにしても、3年間同じ靴を履き続けることは可能なのだろうか。

「考えて、最初に1センチくらい大きめの靴を買いました。アスカは3年間、その上履きと下履きを履いていました。中3のとき、『外履きの底に穴が開いた』と言われましたが、『もう少しだから、我慢して』と言うしかありませんでした」(ミサトさん)

<次回に続く>

<前回に続く>

母子世帯になった事情が離別であれ、死別であれ、非婚(いわゆる「未婚の母」)であれ、子どもにとっての状況は変わりない。したがって、生活保護に関する数多くの「見直し」のもとでも、母子加算は維持されてきた。

 しかし2004年、母子加算は老齢加算とともに廃止の対象となり、段階的に廃止され、2009年4月に完全廃止となった。しかし民主党政権が成立した後の2009年12月、父子世帯も対象として復活され、現在に至っている。なお老齢加算は、2007年に完全に廃止され、現在もそのままである。

 2012年12月に第二次安倍政権が発足した後、生活費・暖房代・住宅費などあらゆる面にわたる生活保護「見直し」の中で、生活保護の母子加算の再度の廃止が浮上してきた。現在も社保審・生活保護基準部会などで、その審議が継続されている。

破れた靴を履きながら中学生活
生活保護シングルマザー家庭の実態

 では、母子加算はどのように役立てられているのだろうか。2人の生活保護シングルマザーの声を紹介したい。

 福島市在住のミサトさん(40代)は、1人娘のアスカさん(19歳)との2人暮らしだ。ミサトさんの歩みは、生育・結婚・出産・育児・離婚のあらゆる場面で、本人の責任とはとても言えない波乱に翻弄されることの連続だった。それでもミサトさんは、高校卒業後は必死で働き続け、アスカさんをほぼ1人で育ててきた。しかしアスカさんが小学6年の夏、ミサトさんは心身を病み、生活保護で暮らす決意をした。

 生活保護のもと、貧困であるものの安定した生活を送れるようになったアスカさんは、将来の夢に向かって歩むことが可能になった。成績は急上昇し、給付型奨学金の対象となり、希望の高校へも進学できた。

 しかし福島市が給付型奨学金を収入認定(召し上げ)したことから、アスカさんの高校生活も困難となった。高校を3年の2学期に中退したアスカさんは、現在、通信制高校の4年次に在学し、将来への展望を持つことも難しい状況にある。母子加算の対象は18歳までの子どもであるため、現在は母子加算の対象となっていない。

<次回に続く>

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