無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

カテゴリ: 身元引受サービス

先日問題提起をした身元引受トラブルとして最大の課題は、契約した本人が認知症になり判断能力が不十分になった時の財産管理ではないかと思われる。 この対策として多くの専門家の方々が任意後見制度の活用をうたっているが、果たして、任意後見制度はどこまで有効なのであろうかを考えてみたい。  

最高裁判所事務総局家庭局ホームページ「成年後見関係事件の概況─令和2年1月〜12月─」。によれば、次のように記載されている。https://www.kajo.co.jp/tameshiyomi/40868000001/pageindices/index23.html#page=23   

(1)任意後見契約の契約数 
令和元年(平成31年を含みます。以下同じ)の1年間に任意後見契約を締結した件数は14,102件。平成27年から令和元年までの5年の任意後見契約の合計数は60,066件で、年間平均で12,013件。任意後見の契約件数は増加傾向にある。

(2)任意後見契約の発効数 
任意後見監督人選任の申立ては、令和2年が738件。ここ直近5年の申立ての合計数が3,845件で年間平均は、約769件。本人が、認知症などで判断能力が衰えたことにより監督人の選任申立てをし、契約の効力が生じた件数。契約数からみると5%程度しか発効していないということになる。    

一方で、法定後見(後見、保佐、補助の合計)は、開始申立件数の合計が、令和2年が36,497件。任意後見監督人の選任申立ての738件を合わせると、成年後見制度全体の合計数は、37,235件。任意後見監督人選任の申立ては、全体からみると2%程度と、極端に少ないことが分かる。

又、最近の記事にも「任意後見制度 使い勝手が悪く進まぬ実利用」夕刊フジ2023年9月3日にも次のような記載がある。https://www.zakzak.co.jp/article/20230903-YWBULJA5ZPWPGBPGG4PBH33FQ/

 「現在、登記されている任意後見契約の数(閉鎖登記を除く)は10万件を超えているとされています。また、法務省、最高裁の調査などによれば、年間の任意後見契約の登記件数は、2015年に1万件を突破し、その後もコンスタントに1万~1万4000件程度の水準をキープしています。これに対し、ここ数年の任意後見監督人選任申し立ての件数は、年間700~800件程度と不自然に低い水準です。

 本人の判断能力が衰え、本来は任意後見監督人を選任すべき状態になっているにもかかわらず、任意後見監督人選任の申し立てがなされていない事案が相当数に上ることがうかがえます。」

要は親族が財産管理契約、見守り契約の段階で本人の財産を管理しきっている(善意に解釈して)とすれば、あえて判断能力が亡くなった段階で多額の費用がかかる後見監督人を付ける必要はないということではないか?任意後見監督人が選任されないまま本人が亡くなり、登記が閉鎖された割合が66%に上るというのは上記の理由によるものではないのか?   

 いずれも、任意後見制度が認知症により判断能力が不十分になった時の財産管理としては有効に機能していないことが伺える。その理由としては 先の記事にも
「任意後見監督人選任申し立て手続きの煩雑さ、契約発効後に発生する任意後見監督人への報酬の支払いや報告負担などを嫌い、任意後見契約をあえて発効させず、本人のための財産管理などをできる範囲で行っている親族が多いのかもしれません」と記載されている。   

これが現制度の実態なのであろう。本人の為の財産管理をぎりぎりまで行い、最終手段の任意後見監督人の選任には及ばないで、その役目が終了した時点で登記抹消を行うケースが圧倒的に多いのである。

現制度では任意後見監督人をつける、つけないの申立は任意後見契約の受任者以外に本人、配偶者、4親等内の親族も行うことができるとされているので、当該対象者が申立をしないかぎりはそのまま任意後見契約が継続されることになるのである。 https://niben.jp/legaladvice/soudan/kojin/management/column/entry/post_8.html   

 任意後見契約はそれだけ単独で契約するのではなくて、その前提として財産管理契約、見守り契約というのもセットで結ぶことが多い。任意後見は本人の判断能力が不十分になってから任意後見受任者が家庭裁判所に後見監督人選任の申立を行うことで発動される。そうすると本人の判断能力が不十分になっているか任意後見受任者は日頃から接していなければならないので、事前に見守り契約を結ぶということになる。   

 また、急に判断能力が衰えるということはありえないので、判断能力は衰えていないけど任意で財産管理を行う任意財産管理契約を結ぶことがほとんど。そして、これらの契約を結んでいると、判断能力が衰えてきても任意後見に移行しないでそのまま財産管理契約に基づき財産管理を行うということができることになる。   

 実質上、当協会が行っている身元引受契約、金銭管理契約、死後事務委任契約と何ら変わりはないのではないか。問題は任意後見制度を活用するための、公正証書を作成し、登記をするという行為が付加されるに過ぎないのではないかと考えてしまう。

 公正証書を作成することで高い証明力、執行力が最大のメリットであるので、よりトラブルになる可能性があれば、有効かと思われる。但し、その手続きの煩雑さとかかる費用負担は覚悟しなければならない。   

 ここで最後に任意後見制度に係る費用をみてみたい。   
①専門職への契約時の報酬は 8万~15万円(税別)
②その他公証人手数料等を含めて10万円~17万円(税別)
③専門職を任意後見人に選ぶ場合は3万円から5万円/月程度(本人の資産状況により変動あり)
④任意後見監督人選任申し立てを依頼した場合、約10万円から15万円程度
⑤任意後見監督人の報酬相場は1万~3万円/月額 これだけの費用がかかるのである。   

ここまで説明すれば、通常の低所得者の方々は専門職への委任はまずは対象にはなりにくいと言わざるを得ない。親族が任意後見人になることも約7割近くあるというが、そうなると登記申請だけを行い、実際には任意後見人として財産管理を行い、認知症になってもそのまま財産管理を行っているケースがほとんどというのもうなずける。それでも任意後見契約の締結から公証人への手続きを依頼すれば30万円近くの費用が発生することになる。これでは急増する認知症高齢者にとって有効な制度とは言えない。成年後見制度と併せて制度の見直しが求められる。
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身元引受事業を巡るトラブルが絶えないという。その問題点と、今後の対策について検証してみたい。
  
「おひとり高齢者の身元保証、サービス続々 トラブルも」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)  より 

総務省の調査によれば、特に近年、身寄りのない高齢者の増加に伴い、多くの事業者がこの分野に参入している。ここ5年以内が過半数を超える盛況ぶりである。   

但し、零細、中小事業者が多いために経験不足から様々なトラブルが発生していると指摘されている。主な問題点を列挙すれば次のようになる。 総務省調査概要から課題を引用する。  

1.契約した本人が認知症などになり、判断能力が不十分になった時に財産をどうするのかの規定がない事業者が4割を超えている。ある事業者は「認知症になっても、適切な手続きを取らないで財産を使う事業者もいる」といわれる。
…本人の判断能力が不十分になれば後見契約契約への移行が必要と言われるが、制度の問題点も検証しなければんらない。任意後見から判断能力が不十分となった際に求められる任意後見監督人の選任に及ぶのは僅か5%程度に過ぎないのは何故かを考えねばならない。そこには成年後見人制度が普及しないのと同じ問題点が内在する。この問題点を検証せずに任意後見契約へと誘導しても実効性は期待できない。

問題提起預託金、判断能力が不十分




















2.契約者が亡くなった後、契約したサービスがしっかり実行されたかの担保に関する規定がない事業者は2割を超す。契約の解約時の返金に関する規定も2割超の事業者が設けていない。
…特定商取引に関する法律に定める特定継続的役務提供契約に該当しないが、消費者保護の観点からクーリングオフ類似条項(契約日を含む8日間以内であれば、書面により契約申し込みの撤回を行うことが可能)をもりこむかどうかは要検討。

 契約解約と返金ルール

















 


3.適切な費用がわかりにくい面もある。身元保証、日常生活支援、死後事務を組み合わせて提供する事業者が多いが、そのサービス内容や料金体系はバラバラである。総務省の報告書によれば少なくとも100万円以上かかる事業者も多いという。
…サービス内容とその対価が明確に定められていないのは論外であろう。  

4.契約手続きでの課題も残る。契約に関する重要事項説明書を作成していない事業者が8割を近い。契約を結ぶ際にも、家族やケアマネ、弁護士など第三者の立ち合いが必要な事業者は7割にとどまる。
契約内容に詳細に書かれていれば、重要事項説明書が別途必要とは思わないが、詳細が不明な契約書が多いということであろう。契約を担保するための一つの方法はやはり第三者の立ち合いである。これは避けて通れない。ケアマネ、地域包括、行政、施設管理者等々の立ち合いは重要である。

  契約手続き、重説有り無し



















5.本人が納得していても、親族が「聞いていない」と怒鳴り込んでくることも多いという。確かにこの問題は最近多くなっている。特に相続財産を巡る問題として口出ししてくるケースが増えている。ただ、この場合は相続財産目当てである場合が多い。事業者にとってもリスクが高いのである。
…この分野は相続問題とからんだ争議となる可能性が高い為、弁護士等を入れたリスクヘッジ対策を手厚く対策する必要がある。  


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総務省が昨年調査した身元引受事業者の位置づけでは小規模事業者が乱立していることがわかる。事業所として5人未満が約6割を占める。事業者の母体となっている業種をみれば「ボランティア団体等母体がないと思われる事業者」と「士業が母体となる事業者」がそれぞれ最多で27%を占め、この2つで過半数を超える。

身寄りのない社会が広がる中で、その社会を支える事業母体としては甚だ脆弱であり、急速に拡大する無縁社会を支えるだけの基盤が作れないでいる。

何故であろうか?国は既に事業者団体の組織化を検討している。法整備と併せて、早急に社会を支える制度、組織としての成長が期待されているのである。にも拘わらず、その事業主体としては余りに脆弱で、個人的なマンパワーに頼っていると言わざるを得ない。

その要因としては身元引受事業のビジネスモデルがまだ確立していないことが挙げられる。国もこの事業を「身元保証」、「金銭管理」、「死後事務委任」の3つの分野からなるシステム事業としてその概念を形成しつつあるが、いまだシステムを支えるコンテンツやフォーマットが標準化されていないと考える。
このシステムを士業が過半数を占める作り上げたところがこの市場を席巻するという段階に来ているように思う。今までが導入期であれば、これからは成長期、その成長を支えるシステム構築をした組織がいち早く身元引受事業をリードしていけるのではないかと推測する。
小規模事業者が大多数を占める



















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 一般社団法人ロングライフサポート協会は2011年から14年間にわたり235名の方々を対象にフルパッケージ(身元保証+金銭管理+日常生活支援+死後事務委任)の身元引受事業を行って参りました。

 当初は施設入居の際に身元引受人がいない、生活保護受給高齢者を中心に行政と連携のもと身元引受をさせて頂いておりましたが、ここ数年で一気に環境が変わってきたと実感しております。  

 その背景にあるのは2025年問題。団塊の世代800万人全てが後期高齢者になるこの時点で社会の構造が大きく変わり始めたと考えられます。  
 
 子供のいない高齢者世帯が高齢者世帯の3分の1に達する、本格的に身寄りのない「無縁社会」の時代が本格的に到来したと考えるべきかと思います。

 社会構造が変わる中、医療も介護も従来の延長上では事業運営が難しい時代が到来しています。無縁社会のにおける新たな仕組み「身元保証から地域保証」の仕組みを公的機関、企業、地域の資源を組み合わせて早急に構築する段階にきているのではないでしょうか。

 そのためには、当協会の力だけでは足りず、施設、病院行政、居宅、企業と、それぞれが得意な分野で活躍していくことが肝要です。我々も各地域とりわけ身寄りのない独居高齢者が急増する関東圏に拠点拡大を急ぎます。

 身元引受事業を中心に、医療、介護、行政の皆様との連携を強化すると同時に、弁護士等士業の皆様、不動産事業者、葬祭事業者等広範囲に連携をしながら、地域保証のプラットホーム作りに全力を注ぎます。

身元保証から地域保証の時代へプラットホーム構築


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在宅での訪問看護や介護を行っている皆様、こんなことをご利用者から頼まれたことはございませんか?

・買い物をしてきて欲しい
・お金を下してきて欲しい
・税金や保険料の支払いをしてきて欲しい
・病院への入院や施設入居の際には身元保証人になって欲しい
・携帯電話やスマホの契約を代わりにして欲しい
・生活保護の申請をして欲しい
・亡くなった際の葬儀や納骨の手配をお願いしたい

実際の日常の介護や看護のお仕事に付随してこのようなことを頼まれた場合はどうしておられますか?

独居高齢者の増加で日常の介護や看護のお仕事の他に、ご利用者から様々な無理なお願いをされるケースが増えているのではないでしょうか?ある介護事業所では数十万円の建て替えを担当者が行っており、なかなか払ってもらえないという悩み事を抱えている方もおられました。

特に金銭に係る問題はできれば避けたいもの、介護や看護に係る方々も、自らを守るためにも我々のような身元引受事業者との連携が今後は重要になってくるように思います。

我々が皆様の代わりに責任をもって対応をさせて頂きます。皆様方には介護や看護に専念して頂きたいのです。

上記のようなお悩みを抱えておられる皆様は是非、お声をかけて下さいませ!
file:///C:/Users/kiyohara/Downloads/20230217-1433_2d8c7fac54c081e001a218cf8e3d1fef%20(1).pdf


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【本ブログについてのお問い合わせ】

一般社団法人ロングライフサポート協会

TEL:0120-196-119

E-mail:info@ll-support.jp

【一般社団法人ロングライフサポート協会について】

当協会は身元引受と法人コンサルの両面から高齢者の生活を支援する企業です。

身元引受は身寄りの無い方がご入居する際のサポート、葬儀サポート、金銭管理から、独居の方の電話による見守り業務まで幅広くおこなっております。

コンサルとしては、長年にわたる経験から、時代を先取りした”未来”をお届けするものです。介護報酬の改定やいろいろなリスクを勘案し、行政申請から内部監査、予算の見直しまで含めた総合的なものスポット的なものを取り揃えております。
高齢者支援サービスでお困りの際はロングライフサポート協会までお問い合わせください。

サポート協会URL:http://lls.sakura.ne.jp/
身寄りドットコム:http://miyori-support.com/

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