無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
豊かな高齢者社会の構築に向けて、日々尽きることの無い気付き、出会いを綴って参ります。

カテゴリ: 医療・介護制度

多くの人が苦しんでいる関節リュウマチの治療が見つかってきました。朗報です。しかし、その原因が腸内細菌の乱れとは驚きです。もっと研究が進み治療薬が一般化されればどれだけ多くの患者が救われるでしょうか。
一日も早い治療が望まれます。
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関節リウマチの原因は腸内細菌の乱れ

関節リウマチ患者に認められるリウマトイド因子の標的は不明だったが、50年前の研究がきっかけで腸内細菌抗原に対する抗体の可能性が示された。最近、腸内細菌叢を改善すれば症状改善が得られることも明らかになってきた。



 関節リウマチの発症に腸内細菌が関わっている──。こんな研究に50年取り組んできたのが、愛知医科大学名誉教授(元愛知医科大学病理学第2講座教授)の青木重久氏だ。
 関節リウマチを専門とする病理医だった青木氏が腸内細菌に注目したのは、ある偶然がきっかけだ。


なぜウサギは関節炎を発症した?

愛知医科大学名誉教授 青木 重久氏


 1964年、米ボストン大学感染症教室に留学した青木氏に与えられた研究テーマは、難治性腎盂腎炎の病態解明だった。難治性腎盂腎炎は、尿中に腸内細菌が検出されないのに症状が改善しない。つまり炎症を引き起こす細菌由来の何かが、腎臓や膀胱などの組織のどこかに存在するはず。そう考え、この病態を解明するために青木氏がまず取り組んだのが、大腸菌O-14株を使って実験用の抗体を作製することだった。

 大腸菌O-14株を選んだのは、多くの腸内細菌に共通して存在する抗原(enterobacterial common antigen:ECA)を細胞壁に持っており、大腸菌だけでなくKlebsiella属菌やProteus属菌なども検出できる抗体を作ることができると考えたからだ。

 そして大腸菌O-14株の加熱死菌をウサギに筋肉内注射して得た抗体(抗ECA抗体)を使った研究で、難治性腎盂腎炎では腎臓の間質に腸内細菌由来抗原が存在しており、これがエンドトキシンとなって炎症を引き起こしていることを明らかにした。

 こうして研究に邁進していた青木氏は、ある時この抗ECA抗体を作るために飼育している20羽のウサギの中に、後ろ脚が伸びたままになっているウサギがいることに気が付いた(図1左上)。当初は「飼育環境が悪くて足が伸びてしまったのか」と考えたが、何羽かに同じ現象が起きていた。

図1 腸内細菌感作関節炎ウサギの肉眼および組織像(提供:青木氏)
(*クリックすると拡大表示します)


「これは何かが起こっている」。そう直感した青木氏は、持ち前の病理医らしさを発揮し詳細に検討したところ、関節炎が起きており、しかもリウマトイド因子様物質が陽性であることも確認した。実はこの時まで人為的に関節を傷害して作る誘発関節炎のモデル動物は存在していたが、リウマトイド因子が陽性の関節炎モデルは存在しなかった。青木氏が発見したこのウサギが世界で初めてのモデル動物となり、1972年、Nature誌に報告した。

 さらに青木氏は、加熱死菌を投与した200羽の日本の白色雑種ウサギとニュージーランド種の白色純系ウサギの関節を詳細に観察した結果を85年に報告した。

 それは、日本種ウサギの6割、ニュージーランド種の8割に関節炎が認められ、線維性強直や慢性滑膜炎を発症しており(図1右)、また両肩にも炎症が起きているというものだった(図1左下)。全身性の関節炎症・破壊という関節リウマチ患者に特徴的な症状と似た症状が認められたのだ。

 同時に、関節リウマチ患者で認められる臨床検査値異常や病理所見などをリストアップし、ウサギにもあるかどうかも検討した。

 関節リウマチ患者では、血中リウマトイド因子高値や高ガンマグロブリン血症が見られ、病理所見では慢性多発性関節炎や絨毛様増殖を示す慢性滑膜炎、滑膜表層のフィブリン析出、パンヌス形成や骨破壊、血管炎が起こる。免疫組織所見では、関節組織にフィブリノーゲンやIgG、IgMなどが局在する。こうした検査値異常や所見はいずれも腸内細菌感作関節炎ウサギに認められ、このウサギが関節リウマチ患者の病態に酷似していることが明らかとなった(表1)。一方、関節リウマチ患者と同様に、ウサギの関節液を培養しても細菌は検出されなかった。

表1 ヒト関節リウマチとウサギ腸内細菌感作関節炎との臨床検査・免疫病理学比較
(*クリックすると拡大表示します)

<前回に続く>

生産量確保を優先、AH3亜型の反応低下懸念は残ったまま
 通常、ワクチン株の選定過程は、厚生労働省健康局長が国立感染症研究所長にインフルエンザワクチン製造株の検討を依頼することから始まる。感染研は、所長の私的諮問機関である「インフルエンザワクチン株選定のための検討会議」の議論を踏まえて製造株を選定し健康局長に回答。これを受けて、健康局長が製造株決定の通知を出している。 

 今シーズンの選定では、AH3亜型に対応するワクチン株は当初、馴化の影響を受けにくい株である「A/埼玉/103/2014(CEXP-002)」が選ばれていた。厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会の資料によると、A/埼玉/103/2014(CEXP-002)は「卵馴化による抗原変異の影響が小さく、約60%の流行株と抗原性が類似していた」という。

 ところが6月になって、この株の増殖効率が想定より著しく悪いことが判明した。A/埼玉/103/2014(CEXP-002)を選定した時点では、昨年度比で「約84%のタンパク収量」だったものが、実際の製造過程において約33%程度と大幅に低下していた。このまま製造を進めると、ワクチン総生産量自体が低下し、昨年度比で約71%程度にとどまるというリスクが浮上した。

 生産量を確保できなければ希望してもワクチンが接種できない人が相当数発生すると見込まれ、社会的な混乱を生じる可能性がある。このため急きょ、A/香港/4801/2014(X-263)株に切り替えられた。AH3亜型に対する反応低下の懸念は残ったままだが、AH1pdm09亜型、B型のビクトリア系統と山形系統のそれぞれのウイルスには効果が見込めることから、このような決断に至ったと理解できる。この点は、当然の判断と受け止める人は多いだろう。

 加えて、厚労省が示した「ワクチンの有効性・安全性の臨床評価とVPDの疾病負荷に関する疫学研究」(研究代表者:医療法人相生会臨床疫学研究センターの廣田良夫氏)によると、AH3亜型が流行ウイルスの主流だった2016/17シーズンでは、ワクチン株と流行株の抗原性の合致度が良好でなかったものの、6歳未満の有効率は約41%だった。

 流行株の9割以上でワクチン株との反応性が低下していたにもかかわらず、6歳未満での有効率は約41%だったという事実をどう受け止めたらよいのだろうか。

 問題は、ワクチン株と流行株の抗原性合致度と、実際の有効率の間に一定の関連性が見られないということだろう。米疾病対策センター(CDC)のデータを見ても、合致度が良好でないときの有効率は19%から42%と幅がある。

 では、医療の現場はどのような対応を考えておかなければならないのだろうか。

 インフルエンザワクチンの接種を呼び掛ける際や接種時には、AH3亜型が流行した場合にワクチンの効果が十分でない可能性についての説明は必須になるのではないだろうか。加えて、これはなにもAH3亜型の流行に限ったことではないが、ワクチン以外の予防策の徹底を求めることも忘れてはならないだろう。

 その上で、仮にAH3亜型が流行した場合、ワクチン接種者であっても重症化する症例が出てくるという最悪のシナリオを想定し、その対応を考えておくべきだろう。

 今シーズンの流行株がどうなるかだが、現時点では混合感染の様相を示している。感染研がまとめているインフルエンザウイルス分離・検出報告数(10月6日、速報値)を見ると、体もあり、現段階ではどちらが流行の主流となるかは見通せない状況だ。検出されたウイルスはAH3亜型が10件、AH1pdm09亜型が20件、B型(山形系統)が8件だった。A型では今のところAH1pdm09亜型が多くなっている。しかし、地域別で見るとAH3亜型のみが検出されている自治

 AH3亜型にはワクチンが効きにくいというハンディを負って迎えた今シーズンは、例年以上に地域の流行株を注視する必要がある

今年はどこの施設もインフルエンザの取り組みが遅れています。その理由はワクチンの供給不足で、注射ができないのです。しかし、その上に、今回のような懸念が生じています。AH3亜型ウイルスが流行した場合には現在のワクチンでも効果が期待できない恐れが出てきています。そういう認識は持っておかねばなりません。
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不足だけでないインフルエンザワクチンへの懸念

日経メディカル 2017/10/16

三和 護=編集委員

 生産が例年より遅れ、供給不足の恐れが指摘されている今シーズンインフルエンザワクチンに、新たな懸念事項が浮上している。

 今冬は、仮にAH3亜型ウイルスが流行した場合、ワクチン株流行株との抗原性の合致度が良好でないことから、ワクチンの効果が十分に発揮されない可能性がある。

厚生労働省AH3亜型についても有効率は期待できるというデータを示しているが、医療現場ではAH3亜型でワクチンが効きにくいという最悪のシナリオも想定した準備が求められている。

 インフルエンザワクチンは、感染予防に加えて重症化予防にも欠かせない。2015/16シーズンからはカバー範囲が広がり、近年流行しているA型(A/H3N2、A/H1N1pdm2009)とB型(ビクトリア系統、山形系統)の4種類のウイルスに対する予防効果が期待されている。

しかし今年は、AH3亜型において、ワクチン株と流行が予想される株との間で抗原性の一致度が低いというハンディを背負っている。

 インフルエンザワクチンは、鶏卵で増やすという工程をたどる。このため、ウイルスが卵の中で増える段階で抗原性が変化してしまう「鶏卵馴化による抗原変異」という問題が生じる。つまり、ワクチンの基になったインフルエンザウイルス株と、実際に流行する可能性が高いウイルス株の間で抗原性が一致していたとしても、ワクチン製造の過程で抗原性が変化することがあるのだ。

 これまでも度々、ワクチン製造用のインフルエンザウイルスが発育鶏卵に馴化するという難題に直面してきた。例えば、2012/13シーズンにAH3亜型が流行したときは、ワクチンに選定した株と実際に流行した株で抗原性の一致率は高かったものの、製造したワクチン株と流行株との一致率は低下していた。つまり製造過程において、ワクチン株が馴化という洗礼を受け、その抗原性が低下してしまっていた。

 実は昨シーズンも「鶏卵馴化による抗原変異」が起こり、流行株と抗原性が乖離するという傾向が認められた。流行したウイルス(分離株)の9割以上が、ワクチン製造株に対する抗血清との反応性が低下しており、ワクチン株と流行株の抗原性が相違していのだ(図1)。

図1 2016/17シーズン流行株のワクチン株抗血清との反応性(感染研「インフルエンザウイルス流行株抗原性解析と遺伝子系統樹、2016年12月28日」より

 医療現場では、このような情報が早期に発信されることを歓迎している。ワクチン防御に代わる対策を、いち早く打ち出すことができるからだ。では、今シーズンはどうなるのか。

<次回に続く>
 

<前回に続く>

政府は16年11月、ビッグデータやAIを活用し、「予防・健康管理」と「自立支援」に軸足を置いた新しい医療・介護システムを20年までに本格稼働させる方針を明らかにした。

まさに時代の要請だった。岡本は、政府系ファンドの産業革新機構を筆頭に、セントケア・ホールディング、エンジニアリング会社の日揮、デイサービス大手のツクイ、社会福祉法人こうほうえんなどから総額15億円を調達。満を持してというタイミングで今年3月、AIによる自立促進・重度化予防のケアプランを提供するシーディーアイをスタートさせた。

グイド博士も米国でActivity Recognition社を設立。現在、日本の介護保険データとアメリカの先駆的なAIを合体させた、岡本曰く「人類に貢献するソリューション」の開発を進めている

7月には、愛知県豊橋市と協定を結んだ。同市で8年分蓄積した介護サービス利用者のデータ約10万件をAIが学習し、10月から市内約50〜100人の高齢者を対象にケアプランを作成するという。本格的なサービス開始は18年4月を予定している。

現状、日本の介護計画は、主にケアマネジャーが要介護者のADL(日常生活動作)、健康状態や要望、介護を担う家族の生活状況などを調べて作成する。1人のケアプランの策定におよそ1.5時間かかるとされるが、現在、要介護者の急増によりケアマネジャーの負担が増加し、ケアプランの質にもばらつきがあると指摘されている。そしてそれは、「介護保険の上限額いっぱいに使い」「家族の介助負担を少しでも軽減する」ことに主眼を置いたものになりがちだという。

だが必要以上の介護は、要介護者の行動量を減らし、筋力・気力を衰えさせる結果につながりかねない。本来ケアプランは、要介護者が日常生活を自立してできることを目指すもの。適切なプランにより、要介護度が減って、介護が必要なくなるという方向にも導けるはずだ。介助せずに自分でやらせることはリハビリにつながる。筋力も運動機能も行動力も認知症も回復する。

シーディーアイが開発するシステムは、要介護度認定の際の74項目の調査結果をインプットすれば、AIにより、要介護者の「自立支援」を目標としたケアプランの原案が、一瞬で策定される仕組みだ。

たとえば、膝が変形して歩けない73歳の要介護2の女性について、「デイサービスの利用を週3回から週1回に減らす一方、新たに訪問リハビリを月に8回、訪問入浴を適宜利用する」というケアプランが提示される。その原案をもとにケアマネジャーが、本人の希望などさまざまな要素を加味して最適なプランに仕上げていく。

「これまでは、個々の患者にどのような介護が必要かというのはケアマネジャーによる暗黙知に頼っていた。そのデータをAIに学ばせれば、一種の職人芸のようだったケアプランが体系化され、日本のみならず世界で活用ができる。ケアマネジャーの負担軽減にもつながるし、彼らのプロフェッショナルがより強化されると思います」

さらに今後は、「どんなケアプランの実行に対して74項目の数値がどう変化したか」という時系列のデータを取り、AIの深層学習が可能になる。より効果の高いプラン作成が可能になるだろう。要介護者の自立支援プランを作成する世界初のAI、それは、要介護者を健康に引き戻す知能なのだ。


岡本茂雄◎1958年生まれ。東京大学医学部保健学科卒業後、クラレ、三菱総合研究所、明治安田生命保険相互会社などを経て、2007年セントケア・ホールディングに入社し、執行役員に。17年3月、シーディーアイを設立。

 介護に新しい風が吹き始めています。AIを活用した自立支援のプログラムができつつあります。漸く介護が時代に追いついてきています。今後の取り組みに大いに期待をしたいと思います。

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「要介護度」を減らせ! AIによる自立支援の挑戦

シーディーアイCEO・岡本茂雄(photograph by Irwin Wong)

日本の介護保険制度によるケアプランの膨大なデータは、「宝の山」だった! スタンフォード大学の天才研究者と組み、AIを使って介護のパラダイムシフトを起こす。


2015年5月、訪問介護サービス大手のセントケア・ホールディングで介護ロボット、AI、認知症ケアの3分野で新規事業開発を担当していた岡本茂雄は、シリコンバレーを訪れていた。医療保険制度改革であるオバマケアの成否を有識者と議論するため、また人工知能(AI)がアメリカのヘルスケア市場においてどのように活用されているのかを確認するためだ。

介護にAIを活用できないか考えていた岡本は、会議で出会った24歳下のAI研究者、スタンフォード大学のグイド・プジオル博士に、ある考えを提案する。

「日本は公的介護保険制度が充実しており、介護サービスや機材のレンタルに対して、要介護者の身体状態に応じて7段階で上限金額の異なる保険給付が国から支給される。国はこの要介護度認定のために、『自分で食事ができるか』『自分で歩けるか』など74項目に及ぶ詳細な身体状態の検査を行っている。この膨大なデータを、AIを使ってより良い介護プランの作成に活用できないだろうか」と。

グイド博士は目を見開いた。そんな介護システムはアメリカにはないし、聞いたこともなかったからだ。「日本の要介護者約600万人×74項目×2000年の制度開始から15年分」ものビッグデータ。「素晴らしい。イノベーションが起こせるよ」と博士は言った。

「博士には、さぞ宝の山に見えたのでしょうね」と岡本は笑う。

さらに博士は続けた。「オカモトさん、日本の企業の中にいては実現できない。会社をつくってください。私もこのシステム開発のための会社をつくります」。それから日本企業の部長とスタンフォード大学の博士は、日米で準備を始めた。

このとき岡本の頭の中には、03年より全国に先駆けて介護予防を実施した埼玉県和光市の取り組みがあった。同市では、市内すべての包括支援センターのスタッフと、サービスを提供する看護師や理学療法士、ヘルパーなどが集まり、新たに認定された要支援者・要介護者の介護計画を検討する「コミュニティケア会議」を毎月2回、開いている。

その方針は明確だ。要介護者や家族に「楽をさせる」ためのプログラムではなく、「自立させる」ため、回復に向けたリハビリテーション中心のプログラムを組む。結果は顕著で、15年度の要介護認定率は全国平均が18.2%のところ、和光市は9.4%へと激減した。

要介護2から1、要支援1から介護保険卒業へと、要介護度が減っていく人がたくさんいる。誰もが漠然と、「要介護度は加齢により悪化していくもの」だと思っていたなかで、この成果は衝撃的だった。

高齢者が要介護者になる2大原因は、骨折と認知症です。これはどちらも、適切なプログラムを組めば、回復も不可能ではない。

結果がついてくると、患者や家族、介護にかかわる専門家みんなの意識が変わるんです。『とにかく家族の負担を軽減すべきだ』という一辺倒な思いから、『1年リハビリで頑張れば社会参加できるかもしれない』というように。ただ、そのような綿密な会議がどこの自治体でもできるわけではない。だからこそ、そのノウハウやデータをAIに学ばせて提供できないかと考えたのです」

<次回に続く>

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