人手不足等が原因の販売不振により小規模介護事業者が淘汰されていくという記事があるが、果たして人手不足が主原因であろうか?
『介護事業者の休廃業・解散が過去最多 初の年500件超 人材不足や大手参入で「淘汰の嵐」』と東京商工リサーチは表現している。 介護のニュースJOINT2024年1月17日
この現象は人手不足の原因の背後に、介護事業の採算性全体が悪くなり、環境適応が困難になってきているという背景はないのか?
地域介護のセーフティーネットと言われる「社会福祉協議会の訪問介護事業所」が全国で76市町村でゼロになったと言われる。社会のセーフティネットが崩れつつある。その要因は人手不足と人口減と指摘されている。「社協の訪問介護」の撤退が示すもの
又、地域介護の司令塔ともいわれるケアマネージャーの減少も重要な問題と指摘されている。介護事業者の数も、離職者が就職者の数を上回る。これらを総合すれば、介護保険制度が始まって20年を経過し、従来のビジネスモデルが機能不全を起こしつつあるのではないかと危惧する。
これらは何を物語るのか?
大きく俯瞰すれば、第一要因は人口減少であり、第二要因は人手不足であるが、それらは既に予測されていたこと。問題なのは、これらの予測があったにも関わらず抜本的な構造改革に手立てが打たれてこなかったことにある。
人口減少になった時に地域の医療と介護はどうあるべきか。その為の地域包括であったはずが、その機能も不完全。人口が減少しているので、地域の医療と介護の一体的な再編は不可欠であったはず。ところがこれが進んでいない。倒産、撤退の前に再編が必要であったのである。
人手不足はとりもなおさず待遇改善が優先しなければならない。少なくなる労働人口をよりニーズの高い分野にシフトさせねばならないのは必須であった。にもかかわらず介護や看護の報酬は依然として十分に改善されたわけではない。介護職は一般企業と未だ平均で月額7万円の差があり、ケアマネは年収にして同年齢平均収入に比べて50万程度低いと言われる。
世の中全体でエッセンシャルワーカーの位置づけと待遇改善が疎かになっているのである。ここに根本的な原因があるように感じてならない。淘汰という簡単な言葉で片づけて欲しくない。