無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
豊かな高齢者社会の構築に向けて、日々尽きることの無い気付き、出会いを綴って参ります。

カテゴリ: 医療・介護制度

<前回に続く>

第4回報告書で盛り込んだ「自治体への期待」が、第5回報告書では「地域ケアマネジメント」という新語でさらに強調する。「自治体が課題を分析して目標を掲げ、具体的な計画を練り、評価と見直しを繰り返す」ことが地域マネジメントだと説く。

「自助」と「互助」の考えを地域住民に浸透させた自治体として、埼玉県和光市の名前を挙げて紹介し、「考え方の共有(規範的統合)」の成功例と記す。

 こうして、「和光方式」が介護保険の将来像として絶賛され、厚労省がPRに務めることになる。大分県が県を挙げて視察団を繰り出して「和光方式」を学び、県内の市町村が追随。他の自治体でも同様の動きが広がり出している。

高齢者に限定した「地域包括ケア」の考え方が一変

 最後になる第6回の報告書(2016年度事業、2017年3月公表)では、2度目の転換が起きる。というのは、安倍政権が2016年6月に「ニッポン1億総活躍プラン」を閣議決定して「地域共生社会」の実現を掲げ、7月には厚労省が「地域共生社会実現本部」を立ち上げたからだ。

 従来の縦割り行政を改め、年齢や高齢・障害・貧困などの分野を問わずに誰でもが「共生」を目指し全体を見通しながら取り組むべきだとされる。そこで「我が事、丸ごと」がスローガンとして打ち出された。これにより、高齢者に限定した「地域包括ケア」の考え方が一変せざるを得なくなる。

 第6回報告書では「事業概要」の第一番に「地域共生社会の実現」を書き込み、「地域包括ケアシステムとの関係性」として、苦しい弁明が叙述される。

「地域包括ケアシステムの深化と進化は、地域共生社会というゴールに向かっていく上では、今後も欠かせないものといえる」「地域包括ケアシステムは地域共生社会を実現するためのシステム、仕組みである」上位概念が投じられたため、肩身が狭くなったようだ。

 加えて、目標年度を2025年から2040年へと繰り上げ、報告書のサブタイトルも「2040年に向けた挑戦」とした。団塊世代が85歳以上になる2035年でも要介護高齢者は増加し続け、死亡者数のピークは2040年なので、中重度者対策が最も必要とされるのが2040年だから、という。

 重度者対応策として、事業者間のつながりを強めていく必要があり、現在の「連携」から「統合」に向かうべきだと提言する。同時に、サービス提供者の人員配置もサービスごとから、広く地域単位で考えてはと訴える。

 これまでの報告書が足元の改革を捉えていたのに対して、相当の長期的視点へと立ち位置も変えている。

(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)

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<前回に続く>

看護師やヘルパーなどの地域の専門職や自治体、社会福祉協議会など高齢者ケアの関係者が地域資源の有効活用を協議するのが「地域ケア会議」。そこに出席する「市町村担当者は地域課題を施策としての対応の検討が求められる」と叱咤する。さらに「法定給付の枠組みにとらわれず、市町村特別給付、地域支援事業、また一般財源を活用して市町村独自の施策を立案することも考えられる」と、市町村を誘導する。

 その活動に必要なのが「規範的統合」となる。規範的統合とは、「自治体が進める地域包括ケアの基本方針が、地域内の専門職や関係者に共有される状態」のこと、つまり情報共有である。

 こうして地域の様々な専門職を方向付けて独自の施策を編み出すことを国が自治体に求め出す。モデル例として「一部の自治体では、市町村職員が地域ニーズの調査結果を分析して計画に反映させており」と叙述した、「一部の自治体」は埼玉県和光市であろう。第4回報告書作成の委員9人のうち、唯一の自治体関係者が和光市の保健福祉部長であることからも明らかだ。

「和光方式」をモデルとして自治体は独自策を考え、費用削減に務めよ、というメッセージである。

サービスを選択するのは「本人」だけに


 第5回目の報告書(2015年度事業、2016年3月公表)では、「介護予防」が、専門職が担う「葉」から地域住民が主役となる「土」に移された(図5)。その通りに政策は動き、要支援者向けの介護予防事業は介護保険の本体から切り離し、自治体が担う「総合事業」へと移行が着々と進んでいる(図6)。訪問介護と通所介護が、総合事業では「訪問型サービス」と「通所型サービス」へと変容している。

 植木鉢モデルへの修正は、植木鉢の土台となるお皿にも及んだ。多くのサービスを受ける出発点のお皿について、これまでは「本人と家族の選択と心構え」と記されていたが、「本人の選択と本人・家族の心構え」に改めた。サービスを選択するのは「本人」だけにした(図5)。

 当然のことである。本人と家族が同格では、本人本位ではないことになる。要介護認定をはじめ、介護保険制度はあくまで本人の心身の衰えに対するサービス提供であり、本人自身がさまざまな介護サービスの中から自由に選択できる。

家族の介護力や資産は第一義的には配慮されない。従来の社会保障制度が家族単位で括られていたのに対し、介護保険が画期的と言われる所以でもある。

 第2回報告書で、1982年にデンマークで提唱された高齢者ケアの3原則が、日本の3原則として記されている。3原則とは、「本人の選択」であり「住み慣れた地位や住宅での生活の継続」と「自己(残存)能力の活用」である。なかでも、本人本位の自己決定は最も重要な要素だ。介護保険が始まって16年後に本人本位にやっと気がついたようだ。

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<前回に続く>

「在宅重視」が一転


 大半の要介護高齢者がかつては、「在宅」から「病院・施設」に移らざるをえなかったが、「地域包括ケア」が整えられると、病院・施設から在宅に戻ることができる(図3)。

 在宅は病院・施設と違って、制約された「非日常」でなく、自立した生活を送ることができる「日常」である。本人の気持ちが落ち着き、QOL(生活の質)が高まる。しかもかかる費用は安い。

 サ高住に、「診療」と「看護」「介護」3サービスが投入されれば、病院や施設への入院・入所は不要になる図4)。


 診療は、在宅療養支援診療所からの訪問診療であり、看護は訪問看護ステーションの訪問看護である。そして、介護は、小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護という介護保険サービスである。さらに、夜でも家族や友人が来てくれ、好物もいつでも食べられる。病院・施設にはない「生活」を得られる。

 第4回目の報告書(2013年度事業、2014年3月発表)になると、第1、2回目で掲げられた「徹底した在宅志向」「脱病院、脱施設」の理想論が大きく後退してしまう。既存の医療・介護事業者に配慮した現実路線に舵を切っていく。

「施設から在宅へ」「在宅重視」というのは介護保険の基本理念だった。ところが施設重視に切り替わっていく。

 特別養護老人ホーム(特養)がそのまま「住まい」になると記される。特養を「内部に蓄積された専門サービスが効果的・効率的に受けられる『住まい』として、これからも機能するよう引き続き期待される」と位置付け、「住宅への転換」案が消えてしまう。

 最重度者の施設、介護療養型医療施設までも「居宅で生活する医療依存度の高い要介護者に対する支援拠点としても期待される」と、こちらも「期待」感が高い。「医療は在宅医療で」と唱えていたはずが様相は一転する。いずれも既存事業者からの反発を買い、筋を通せなかったのだろう。

 そして第4回報告書で新たに持ち込んだのが「地域ケア会議」であり「規範的統合」という概念である。これにより、保険者としての自治体のリーダーシップが強く要請されることになった。

 一方で、消費税のアップが難しくなって財源難問題が浮上し、介護保険制度の持続性を保つには、総費用の抑制論が財務省から強く指摘されてくる。「保険者機能の強化」という言葉で、総費用の抑制に向かわせようという狙いが次第に鮮明になっていく。

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「共助」から「自助」への移行


 社会保障制度の基本的な考え方には4つの類型がある(図2)。「自助」「互助」「共助」「公助」の4類型について第1回の報告書でも触れていた。

「自助」とはアメリカ型の、自分のリスクは自分で責任をとり国や自治体をあてにしない。制度としての介護保険や医療保険を当てにしないから税率は低く、国民は銃で自らを守る。正反対が「公助」の国だ。高い税率だけれど、国や自治体が教育や医療、介護などの各サービスを運営し、国民はほとんどその利用料負担はない。25%もの高消費税を確立させた北欧諸国である。

 大半の欧州諸国と日本は「共助」の考えを保険制度として樹立させた。年金や医療保険であり、日本やドイツ、オランダは介護保険を加えている。保険料を積み立て、必要な時に引き出してリスクに対応させる方式である。

 もう一つの「互助」は、助け合い精神に基づく無償のボランティア活動など住民活動を担い手とする考え方である。

「植木鉢モデル」では、3枚の葉にあたる専門職の活動が「共助」であり、「住まい」や「生活支援」は「自助」と「互助」にあたる。

 ここで「生活支援」が「土」にあたり、「自助・互助」で担われるとされていることにも注視したい。生活支援とは、ホームヘルパーが訪れて、買い物や洗濯、掃除などの生活援助をすることが想定される。介護保険の訪問介護サービスとして扱われてきた「生活援助」が、「互助」であれば保険外という仕分けになってしまう。

 4年ほど前から始まった「総合事業」では、介護保険の要支援者向けの訪問介護と通所介護(デイサービス)が市町村の地域支援事業へと移管が進んでおり、その名も「訪問型サービス」「通所型サービス」と変わってしまった。

 さらに、この4月からの第7期介護保険制度では、「生活援助」のヘルパーの資格基準が緩められる。従来の130時間の研修期間が大幅に短縮される。近い将来、要介護者全員から「生活援助」が切り離され、新総合事業へ全面移管される地ならしと思われる。

 こうした「共助」から「互助」への移行は、この植木鉢モデルで既に示されていると言えよう。

<次回に続く>

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高齢者ケア「地域包括ケアシステム」はなぜ変容したのか

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