無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

日常生活支援事業は頭打ち













(身寄りなき老後)日常の金銭管理、ちょっとお手伝い 日常生活自立支援事業 朝日新聞デジタル 2024年12月6日

「福祉サービスを利用するための手続きや、日常的な金銭管理などに不安がある人をサポートする事業を、全国の社会福祉協議会(社協)が実施しています。頼れる身寄りがいない一人暮らしの高齢者も多く利用しているといいます。」 という記事が出ています。

それなりに国は身寄りの無い高齢者に対して支援の輪を広げようとしていますが、行政主導だけではその輪は広がりません。その実態を全国社会福祉協議会が報告しています。

その実態を見て見ましょう。
2023(令和 5)年 8 月 15 日 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 Action Report 第 246 号より   

令和 4 年度 日常生活自立支援事業に関する調査結果   
本会がとりまとめた令和 4 年度の本事業の実施状況調査結果によれば、年間の問合せ・相談件数は 233 万 1,881 件(前年度比 4 万 3,851 件増)であり、1999(平成 11)年10 月に「地域福祉権利擁護事業」の名称でスタートして以来、増加の傾向が続いています。また、1 年間の新規契約者は 1 万 866 人(同 36 件増)で、そのうちの約 4 割を生活保護受給者が占めており、福祉事務所のケースワーカーとの役割分担等が課題となっています。なお、契約終了件数は 1 万 748 件(同 259 件減)でした。  
生活支援事業相談・問い合わせ件数、新規契約件数














 
最新のデータでは65歳以上の生活保護受給者は約105万人と増加傾向にあります。日常生活支援はこのレベルで追いつくのでしょうか?

日常生活支援の実利用者数は56,550件ということで、その4割が生活保護としてもその数は22,000人程度となります。生活保護受給者においてもわずか2%程度しか支援ができていないことになりますし、下記にあるようにその数も頭打ちとなっています。しかも実際の支援の担い手である生活支援員は 1 万 5,388 人と減少(同 365 人減)しているのです。

支援したくても、予算と人員の制限でこれ以上の役割を果たすことが困難になっているのです。この事業の重要性は十分にわかるものの、何故マスコミを始めとして限界であることを指摘しないのでしょうか?国も行政もこの現実を直視すべきです。

日常生活支援事業は頭打ち













これにこれまでも指摘をしてきましたように3親等以内の親族がいない高齢者の数は286万人、これが2050年には約448万人にも膨れ上がります。到底行政主導で対応ができるはずがないのです。

令和 5 年 3 月末時点の実利用者数は、56,550 件(同比 1 件増)と、近年は横ばいの傾向が続いていますが、この背景には、本事業が補助事業であり、予算上の制約等から支援を担う職員体制の拡充が難しいことがあげられます。
生活支援事業利用者の推移


















  



本事業の実施主体は都道府県・指定都市の社協ですが、事業の一部を委託された基幹的社協(市区町村社協)数は、前年度比 18 増の 1,596 社協になりました。従事職員では、専門員(4,016 人、同 219 人増)は増加した一方、実際の支援の担い手である生活支援員は 1 万 5,388 人と減少(同 365 人減)しています。
基幹的社共等の状況

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高齢者向けシェアハウスのニーズが増加 配偶者との離婚や死別を機に入居される方も
女性自身 2024.12.2 
サブタイトル 「月6万円から入居できる物件も!終の住処に「高齢者用シェアハウス」3つのメリット」
記事まとめ
・高齢者向けシェアハウスのニーズが増えており、数が増加しているという
・住民同士の交流が生まれ「独りではない」という安心感を得られるのがメリットだという
・配偶者との離婚や死別、子どもの独立などを機にシェアハウスに入居される方が多いよう  
一般的に“シェアハウス”とは、一戸建てや集合住宅で自分専用の部屋を持ちつつ、キッチンやリビングなどは、ほかの住民と共有しながら生活する居住形態のこと。 比較的、初期費用や家賃を低く抑えられ、水道光熱費などもシェアすることで負担が軽減される。なによりも、住民同士の交流が生まれ、「独りではない」という安心感を得られるのがメリットだ。
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全国的にシェアハウスが増えているといいます。配偶者との離婚や死別、子供の独立などを機にシェアハウスに入居される方が多いといいますが、課題も残りそうです。 対象は元気なシニアが施設に入る前の段階で一人暮らしが不安な方が多いようですが、ここから次のステップにどう移行するかということでしょう。   

皆さんは極力、元気な内は現在の住居でお暮しになることを望まれると思います。段々弱ってきて、一人暮らしが不安になってきてから初めて、次の住まいと終活を考えるようになると思います。   

その段階ではただ単なる生活をシェアするというだけではなく、身の回りのお世話や介護が必要になってきた時の介護や医療をどれだけバックアップしてくれるか、亡くなった時のお世話は誰がしてくれるのか、病院に入院するようなときは誰が保証人になってくれるのかということだと思います。   

それともう一つは施設に入りたくても収入の面等でなかなか希望の所に入れない、そのような方々が一緒に暮らすことで生活同時にお財布もシェアすることでできるハウスであれば、それに越したことはありません。   

そういう意味では「低価格の介護付きシェアハウス」は今後のトレンドの一つになっていくのではないでしょうか?我々はそのような高齢者に向けて「みよりサポートハウス」の普及に努めます。   

今回、東京都足立区竹ノ塚で株式会社ルナ様と一緒に「みよりサポートハウス竹ノ塚」を立ち上げました。是非、皆さん、遊びに足を運んでみませんか。   

都内でありながら、縁側のある古民家風のシェアハウスです。見学大いに歓迎です。
詳しくはこちらまで ➡

みよりサポートハウス竹ノ塚
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保険外サービスの本質













介護の「保険外」サービスとは何を指すのか?-制度の基本構造から「正体」を探るとともに、普及策を検討する  ニッセイ基礎研究所 2024年8月28日 
保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任三原 岳氏

何故、ケアマネージャーのシャドゥ・ワークが解決しないのかという疑問について、上記の論文が参考になります。主要な記事を抜粋しながら検証してみたいと思います。   

介護保険サービスを実施している居宅支援事業所と民間のサービスの連携、或いは有料サービスとして居宅支援事業所が高齢者の生活支援事業に対して対価を取ることはできないのか?基本的には現状の制度ではできなということになります。   

介護保険という国民の税金を使っている以上、介護保険外のサービスを行うことは利益相反に当たる、つまり、居宅介護支援事業所はケアプランを作ると言った法定業務を行っているのであり、それ以外の報酬を受け取ってはならないということになります。   

従って、ケアマネジャーの報酬(居宅介護支援費)は現在、ケアプランに介護保険サービスを組み込まないと、一銭も受け取れない構造になっています。その結果、仮に「保険外」だけでケアプランを作っても、ケアマネジャーは居宅介護支援費を受け取れず、タダ働きになってしまうのです。又、介護保険外のサービスを提供することにより、高齢者の利便を高めるとわかっていても、他のサービス事業者との調整に要する時間と労力に対しても対価が払われることはないのです。   

その結果、ケアマネージャが介護保険外サービスに係ることは極めてレアケースでしかないのではないでしょうか、誰も無償で働きたくないのです。しかし、皮肉なことにその結果生まれているのが、ケアマネを苦しめる「シャドゥ・ワーク」となっているのではないでしょうか?   

以前は、ケアマネージャーが介護プランを作り、介護事業者が介護を行う、その他のシャドゥ・ワークは家族が行う、この線引きが明確な時代では通用した介護保険のシステムは家族の支援が得られない一人暮らしの高齢者にとって誰がその穴埋めを行うことが出来るのでしょうか?シャドゥ・ワークは無視できない業務なのです。ここを解決しない限り、ケアマネの有資格者だけを増やしても、敬遠されるだけではないでしょうか。シャドゥ・ワークを付帯業務として、法定業務を支える重要な業務と言う建前だけでは、誰もやらないでしょう。   

結論から言えば、介護制度を大きく、第1の介護:介護保険サービス、第2の介護:介護保険外サービス、第3の介護:身元引受サービスと位置づけ、介護保険サービスのみならず、介護保険外サービスのプラン作成にもきちとした対価を支払い、そして第2、第3の介護を実施した場合には応益負担を利用者の自己負担で行う仕組みを作るべきではないでしょうか。第1と第2の介護の混合型である「混合介護」も試みがあったにもかかわらず、面倒くさいのでしょうか、うやむやになってしまっています。   

「規制」ありきの厚生労働省の施策ではシャドゥ・ワークの問題は解決しません。厚生労働省の委託調査でも「訪問介護と保険外サービスの区分・区切りが明確となるような提供手順・方法」を求めている団体が95%を超えたといいます。いつまでも臭いものにはフタの発想では、本丸の介護保険制度をも根底から揺さぶられることになるでしょう。   

解決策は今まで放置してきた介護保険外サービスや混合サービスについてきちんと制度化し、一定のルールの元、ケアマネの負担の軽減、報酬のアップが図られる仕組み作りが重要です。加えて、居宅支援事業所の経営問題にも着手する必要があると思います。   

一つの提案です。医療でいうところのMS法人「メディカル・サービス法人」の取り組みを介護事業所も検討すべきではないかと考えます。即ち、介護保険事業所の経営形態の一つとして、クリニックや歯科医院の経営者が設立するような法人(仮称「CS法人「ケア・サービス法人)」を作るのです。 会社法をもとに設立される法人で、経営と介護を分離することができ、介護事業所ではできない介護と連携した営利事業などを行うことができるのではないかと考えられます。この組織で介護保険外のサービスを吸収できる仕組みができないものでしょうか。   

以下、ニッセイ基礎研究所の論文について引用させて頂きます。
保険外の「正体」とは?
正体は単なる自治体独自のサービスか、民間企業のサービス では、介護における「保険外」とは一体、何を指すのでしょうか。実は、介護における「保険外」の「正体」とは単に自治体独自のサービスか、民間企業のサービスに過ぎません。 ここで言う自費ヘルパーやタクシー、自治体や社会福祉協議会の付き添いサービスなどが「保険外」になるわけで、医療保険で想定されている「保険外」のような特別な商品やサービスではなく、単なる自治体の上乗せサービスか、民間企業のサービスに過ぎないことをお分かり頂けると思います。   

では「混合介護」とは?
2017年6月の規制改革実施計画では「混合介護の弾力化」が提唱されました。ここで言う「混合介護」とは「保険」「保険外」の併用、「弾力化」とは訪問介護で同じ時間帯に「保険」「保険外」を一体的に提供することを意味していました。例えば、ヘルパーが13時から13時20分の間、「保険」の枠内で高齢者の食事などを提供する際、ついでに高齢者の家族の食事を作っても、これは「保険外」に当たるため、家族から追加的に費用を徴収できませんでした。そこで、「混合介護の弾力化」を通じて、家族から費用を徴収すれば、「保険外」の発展に繋がるのではないか、と期待されたわけです。
➡結果は普及せず。   

なぜ「保険外」が普及しないのか? その原因

①保険サービスと保険外サービスの併用に係るルールが曖昧
②「保険外」の「正体」である自治体や民間企業のサービスに対し、行政が何らかの形で線引きを設定すれば、「制度化された保険外」という不思議な仕組みが生まれることになります。その結果、高齢者のニーズを踏まえた施策やサービスを検討しなければならない自治体や企業の自由な発想が失われる危険性を伴います。
③意外と市町村は高齢者の暮らしを知りません。この状況でマッチングに取り組んでも、高齢者の暮らしに沿った「保険外」が生まれるとは思えません。   
本丸はケアマネジャーの報酬見直し ケアマネジャーは本来、介護サービスの調整だけでなく、「保険外」とされるサービスをケアプランに組み込むことで、高齢者の暮らしを支えることが期待されています。   
しかし、ケアマネジャーの報酬(居宅介護支援費)は現在、ケアプランに介護保険サービスを組み込まないと、一銭も受け取れない構造になっています。その結果、仮に「保険外」だけでケアプランを作っても、ケアマネジャーは居宅介護支援費を受け取れず、タダ働きになってしまいます。   
ケアマネジャーは地域連携で保険外サービス事業者との調整などに多大な時間と労力を費やしても、居宅介護支援費は受け取れません。
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