無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

2011年12月

本日は多くの方々と面談をし、高齢者住宅事業について意見交換をさせて頂きました。その中で、特に感じましたのはサービス付き高齢者住宅事業を介護事業経営者のインキュベーターにするという考えです

高齢者の受け皿であるサービス付高齢者住宅は介護事業に取り組みたい経営者にとって、重要なインフラになると考えられます。訪問介護事業や通所介護事業等において単体の事業モデルを構築するのは困難な時代になりつつあります。より安定した事業モデルとして高齢者の住宅事業に着手をしたいと考える経営者は多くありますが、投資金額が大きく、一般的には直ぐに手をつけることはできません。

1億以上の投資をするには、それだけの実績と信用力がなければ、融資もしてくれませんし、地主も簡単に建貸ししてくれるものではありません。

しかし、市場はより多くの高齢者の住まいの供給を待ち望んでいます。もし、適切なサービス付高齢者住宅事業への参入が可能であれば、訪問介護事業や通所介護事業とという既存の事業の強みを生かした一つの収益事業として成り立たせることが可能となります。

小規模ローコスト型の高齢者住宅は経営リスクを低くすることで事業参入リスクを少なくし、尚且つ既存介護事業のノウハウを生かせる意味で、最も適切な介護事業者を育てるインフラになると考えられます。

我々はより多くの介護事業に参入する経営者を育てねばなりません。エヌ・ビー・ラボがバックアップするエルスリーという高齢者住宅を通して、より多くの介護経営者を排出して参りたいと思います。その為のサポートシステムを構築して参ります。
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本日、ある医療法人から「外部サービス型特定施設」について相談がありました。我々もこれまでこの形態での取り組みはありませんので、改めて、その内容について確認をさせて頂きました。

来年度の介護保険改正で、訪問介護併設型サービス付高齢者向け住宅について、一定規模以上の高齢者住宅における訪問介護報酬が減額になるという内容が出されています。当面は40室以上となるようですが、実は「外部サービス型特定施設」は今後の制度改革において一つの方向性を示していると考えられています。

あえて、このモデルが真にこれからのサービス外付けのモデルになりうるかどうか、本当に事業としてなりたつものかどうかを検証して参りたいと思います。
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介護報酬と高齢者住宅との相性の悪さを解消するために、2006年の報酬改定で制度化されたのが「外部サービス利用型特定施設入居者生活介護」(外部サービス利用型)です。

これは、見守り、緊急対応などについては日額包括算定方式で行い、入居者個別の排泄介助、入浴介助などは、外部の訪問介護等を利用して出来高で算定するというものです。

名前からもわかるように、特定施設入居者生活介護の新しい介護報酬体系であり、包括部分と出来高部分を合わせた限度額は、従来の一般型特定施設の月額報酬程度に抑えられています。軽度要介護高齢者は、出来高部分を全額利用しないため介護報酬を抑えられ、重度要介護高齢者が全額利用しても、区分支給限度額と比較すると介護報酬を抑えることができます。

そもそも、区分支給限度額は、自宅で暮らす高齢者に適用する介護報酬ですから、ホームヘルパーや看護師が各自宅を回るという非効率性を加味して、介護報酬単価は高く設定されています。外部サービス利用型は、集合住宅で暮らす要介護高齢者の介護の効率性を反映させ、現在の介護報酬の課題を修正した高齢者住宅専用の介護報酬だと言えます。

しかし、この新しい介護報酬が設定されたことによって新たな歪が生じています。訪問介護サービス、通所介護サービスを併設し、一体的に運営している高齢者住宅事業者から見れば、区分支給限度額と外部サービス利用型のどちらで算定するのかによって、同じ介護サービスを提供しても、グループ全体で受け取る介護報酬が大きく違ってくるからです。

厚労省は、これに対して有料老人ホームや高専賃において区分支給限度額方式で訪問介護を算定する場合は、一人20分以上介護すること、2時間程度の時間を空けること等の通知を出していますが、事業者からすれば、そのように書類を整えればよいというだけですし、逆に入居者は、その制約によって介護サービスが受けにくくなります。

更に、都道府県・市町村では、その中身を精査せず、『外部サービス利用型も特定施設の一つ』として、総量規制に含めています。当然、事業者から見ても区分支給限度額のままで介護サービスを提供したほうが収入は大きくなるために、外部サービス利用型の指定は民間の高齢者住宅ではほとんど進んでいません。

ただ、このような制度の根幹に関わるような歪がいつまでも続くとは思えません。特に、この問題は逼迫する介護保険財政・社会保障財政に直結します。すでに医療保険における訪問診療、訪問看護の診療報酬は、高齢者住宅に対する単価が各自宅を回る報酬と区別して引き下げられています。

そのため、将来的には同様に高齢者住宅に対する区分支給限度額の算定は抑制され、外部サービス利用型に移行させられる可能性が高いと考えています。

そうなると、要介護5の高齢者に対するグループ全体で受け取る介護報酬は、35830単位から25870単位へと、1/3に、金額では約10万円下がることになります。

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仙谷氏「医療・介護に報酬付ければ雇用に」- 医療フォーラムで講演(2011年11月30日)

民主党の仙谷由人政策調査会長代行は11月30日、東京都内で開催された第11回医療フォーラムで講演し、社会保障制度改革の方向性について、「世界中で問題になっているのが、誰が雇用をつくるかだ。日本では医療・介護の就業者や、雇用が増えている。経済構造が完璧にサービス産業化している。それに対応した社会保障の政策を打っていかなければならない」と述べた。その上で診療報酬と介護報酬に関して、「医療・介護分野に適切に配分することで、雇用が生まれる」との考えを強調した。

この日の講演で仙谷氏は、2012年度診療報酬改定に関して、具体的に明言しなかった。一方で前回(10年度)のプラス改定を例に出し、「政権交代して民主党が『コンクリートから人へ』と予算構造を変えた。診療報酬改定で、大学病院や大きな病院など、かなりが黒字化した。報酬を付ければ、雇用が生まれ、病院や施設経営を赤字にならずにやっていただける」と述べ、前回改定の効果を強調した。
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上記のような見解は、報酬アップで全てが片付くといわんばかりの考え方は問題ではないでしょうか。医療と介護の制度改革に着手せずして、報酬にて誘導しようとする考えには限界があります。

医療制度改革をどうするのか、医療と介護の連携をどうするのか、今の日本の政治の問題点は、根本的な改革に目をつぶり、報酬のアップやばらまきでその場限りの対策に終始するという姿勢にあるのではないかと思います。医療制度改革、規制緩和等について明確な見解を求めます。
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子供一時預かり10倍 訪問看護は7割増

増税にらみ社会保障改革に数値目標 サービス拡充を訴え(2011/12/24付 情報元 日本経済新聞)という記事が掲載されましたので報告しておきます。医療から介護への移行を進めるための条件整備が進むことを期待します。

政府の社会保障改革案に盛り込んだ子育てや医療・介護の分野で達成をめざす数値目標が判明した。子育て分野では、保育所の一時預かり利用を2014年度までに10倍に拡大するために、施設の拡充を進める。医療・介護分野では、看護師などを増やし、訪問看護を受けられる人の数を25年度までに7割増やす。

医療・介護分野では在宅医療を充実させ、現在1日当たり28万人分の訪問看護を25年度には7割の49万人分に増やすことを目指す。25年度には160万人分の施設が必要になるとの試算もある。介護施設は現在の92万人分から131万人分に増やしたい考え。

医療と介護のサービスを一体的に提供する仕組みを導入することで負担も抑制する。例えば、病床数は症状や入院日数に応じて再編し、長期入院できる病床数は現在の3分の1程度にする。医療から介護への移行を促進することで、医療費を抑える狙いがある。

一方、短時間で働く母親も増えており、需要が高まっていることを反映して、一時預かりや認定こども園を増設する。現在は年間延べ348万人の利用にとどまるが、14年度には3952万人増やすことを目標とする。子供や保護者が交流する地域子育て支援拠点も現在の7100ヵ所から1万か所に増やす計画もある。

主な数値目標は次の通り。

①認定こども園         現在 358ヵ所  → 2014年度 2000ヵ所以上
②地域子育て支援拠点    同 7100ヵ所   →  同      1万か所
③一時預かり          同 述べ348万人→ 同3952万人
④病床数    
   病床数           現在 107万床→ 2025年度 一般病床 46万床
   (平均在院日数)        (20日程度)            (9日程度)
                                      高度急性期22万床
                                         (15日程度)
                                      亜急性期35万床
                                         (60日程度)
⑤訪問看護1日当たり     現在28万人分  →2025年度 49万人分
⑥在宅介護            同 304万人分 → 同     449万人分
⑦介護施設            同 92万人分  → 同     131万人分  
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昨日、総合ユニコム様主催の「サービス付高齢者向け住宅のタイプ別事業計画と開発のポイント」セミナーにて講師を務めさせていただきました。9月にも同様のセミナーが開催されましたが、今回は、前回からの環境変化を踏まえて再度サービス付高齢者向け住宅を運営者側の論理で提案をさせて頂きました。

これまで様々なビジネスモデルが誕生し、消えていきました。この事業を成功させるための成功要因を抑えることができなかったのです。この成功要因を抑えておかねば、どのようなタイプ別の事業モデルを作っても皆同じです。

その成功要因とは、収入を読む方法です。

自立型、介護型、医療型と色々なタイプがありますが、問題は各タイプにおける収益モデルが異なるということです。このことをしっかりと踏まえた計画を作らねばなりません。タイプ別に収益を読む方法、それが外付けサービスにおける最大のノウハウなのです。

サービス付高齢者向け住宅を1本のビジネスモデルで考えることは極めて危険です。多様化するタイプ別高齢者者住宅の各成功要因を集合させるところに真の成功要因があるのです。

サービス付高齢者向け住宅の市場が拡大しています。しかし、この成功要因を各タイプ別に抑えたモデル開発ができないと、いらずらに無用の高齢者住宅が市場にあふれることになるでしょう。それを我々は恐れます。
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