孤立する「家族の介護」の犠牲者がまた出てしまった。10年以上にわたって介護をしてきた認知症の70歳の母親を47歳の息子が殺害する事件が起きてしまった。福島地方裁判所の柴田裁判長は「犯行動機は身勝手で、介護サービスの利用も十分にあり得た」と指摘した一方で、「遺族は処罰を望んでおらず、本人も反省している」として判決公判で懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。
一人で抱え込んでしまいがちな家族介護の難しさを物語っている。福島県で介護が必要と認定された高齢者は、約11万2500人。このうち介護サービスを受けていない、1人暮らしの高齢者や家族に介護されている人は、約1万6670人(約15%)いるという。福島県内でも、同様な事件が後を絶たない。
2019年10月、郡山市・63歳の夫が、長年1人で介護していた25歳年上の88歳の妻の首を絞めて殺害。
2019年11月、川俣町・68歳の息子が92歳の認知症の母殺害後、自殺。
2020年6月、伊達市・80代の夫婦が沼で自殺。
体が不自由な妻を夫が介護など、介護関連の事件が相次いでいる。コロナ禍で更に増えなければよいが。
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10年以上の介護の末、認知症の母を息子が殺害 なぜ事件は起きたのか?「家族介護」に生じる“孤立”
FNNプライムオンライン2020.11.29
認知症の70歳母親を殺害した息子 事件の背景は2020年4月、福島・南相馬市で、自宅で介護をしていた70歳の母親の顔に、折りたたんだ布団をかぶせ窒息死させるという事件が起きた。
逮捕されたのは、47歳の息子。犯行後、自ら消防に通報し、事件が発覚した。
2020年11月9日の初公判で、起訴内容を認めた息子。
法廷では、認知症を患い、徘徊(はいかい)などを繰り返す母親の面倒をみながら、毎日の食事やおむつ交換の時間を細かく記したノートも示された。検察側は、2020年2月ごろから、母親の顔に布団をかける行為を繰り返していたことを明らかにし、「泣き叫ぶ声が近所迷惑になると考え、犯行に及んだ」と厳しく指摘。
一方、弁護側は「責め立てられているようで、耐えられなかった」と、泣き声を少しでも小さくしようとしただけと主張した。
判決公判で福島地方裁判所の柴田雅司裁判長は「犯行動機は身勝手で、介護サービスの利用も十分にあり得た」と指摘した一方で、「遺族は処罰を望んでおらず、本人も反省している」として、懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。