
横浜市が全国初の「事業者リスト公表制度」を開始。社会福祉法改正後の新しい潮流とは
2026年7月28日、横浜市は「身寄りのない高齢者を支援する民間サービス」に対し、市独自の基準を満たす事業者を選定し、連携協定を締結した上でリストとして公表する制度を開始したと発表しました。 この取り組みは全国的にも珍しく、行政が民間の身元保証・終身サポート事業者を公式に評価し、連携するという点で大きな転換点となります。
背景には、国が6月19日に成立させた改正社会福祉法があります。これにより、身寄りのない高齢者への支援が「第二種社会福祉事業」として法定化され、行政と民間が協働して支援体制を整備する方向性が明確になりました。
横浜市の制度は、この国の流れを受けて最も早く具体化したモデルと言えます。
■ 横浜市が導入した「24項目の独自基準」とは
横浜市は、民間の身元保証・終身サポート事業者に対し、国のガイドラインを踏まえつつ、全国初となる独自基準を含む24項目を設定しました。 基準は以下の3つの視点で構成されています。
① 利用者の意思尊重
本人の自己決定の尊重
本人意向の定期的な確認
相談窓口の設置 など
② 適正な契約の確保
サービス内容と料金の明確化
寄付・遺贈の受領禁止(全国初)
前払い金の原則禁止(全国初)
利益相反の禁止 など
③ 事業者の信頼性確保
財務状況の健全性
事業継続体制の確保
倒産時の対応方針 など
特に注目すべきは、寄付・遺贈の禁止や前払い金の原則禁止といった、利用者保護を強化する項目です。 これまで民間の身元保証事業は、料金体系や契約内容が事業者ごとに大きく異なり、利用者が比較・判断しづらい状況がありました。横浜市はこの課題に対し、行政が「質の担保」を行うことで、市民が安心して事業者を選べる環境を整えようとしています。
■ 行政が民間事業者と連携する時代へ
横浜市は今回の制度について、次のように説明しています。
「民間事業者での取組を活用しながら、行政と民間が連携して身寄りのない高齢者支援に取り組む必要がある」
これは、従来の行政のスタンスから大きく変化しています。
● これまで
行政は「身元保証は民間の任意サービス」という位置づけで、直接関与することは少なかった。 自治体によっては、民間事業者への警戒感が強く、連携どころか紹介すら控えるケースも多かった。
● 今後
社会福祉法改正により、 身元保証・入院手続き支援・死後事務支援が第二種社会福祉事業として法定化。 行政が民間事業者と協働することが制度上明確に位置付けられた。
横浜市のように、
行政が基準を策定
基準を満たす事業者と連携協定
市民向けにリストを公表 という流れは、今後全国に広がる可能性が極めて高いと考えられます。
■ なぜ行政は民間事業者と連携する方向に進むのか?
① 身寄りのない高齢者が急増している
横浜市の調査では、頼れる親族がいない高齢者は約8.7万人(高齢者の約10人に1人)にのぼるとされています。 全国的にも同様の傾向があり、行政だけでは支援が追いつかない状況です。
② 医療・介護現場が身元保証人を求めている
病院や高齢者施設の9割以上が身元保証人を求めているというデータが示されています。 しかし、家族がいない高齢者はその要件を満たせず、入院・入所が遅れるケースも増えています。
③ 民間事業者の役割が不可欠になった
入院手続き、金銭管理、死後事務など、行政が直接担えない領域を民間事業者が補完してきました。 今回の法改正で、これらの支援が「公的に認められた事業」として整理され、行政が民間と連携しやすくなったのです。
■ 横浜モデルは全国に広がるか?
横浜市は、
事業者公募(7〜9月)
事業者選定(10〜11月)
連携協定締結(12月)
リスト公開(12月下旬) というスケジュールを示しています。
この流れは、他自治体にとって「参考モデル」となる可能性が高いです。
● 行政側のメリット
信頼できる事業者を市民に紹介できる
医療・介護現場の入院拒否問題を緩和
高齢者支援の質を底上げできる
● 民間事業者側のメリット
行政との連携による信用向上
市民からの相談増加
事業の透明性向上によるトラブル減少
● 市民側のメリット
安心して事業者を選べる
料金や契約内容の不透明さが解消
悪質事業者を避けられる
■ 今後予測される全国的な動き
横浜市の制度は、今後以下のような全国的な流れを生むと考えられます。
① 各自治体が「事業者リスト制度」を導入
横浜市の成功事例を参考に、政令市や中核市が同様の制度を導入する可能性が高い。
② 医療・介護機関が行政のリストを参照
入院時の身元保証問題を解決するため、病院が行政の公表リストを案内する流れが生まれる。
③ 民間事業者の質の底上げ
行政基準に合わせるため、事業者が契約内容や料金体系を改善する動きが広がる。
④ 身元保証・死後事務が「公的に認められた民間サービス」として定着
これまでグレーとされてきた領域が、法的に整理され、社会的認知が進む。
■ まとめ:行政×民間の協働が「新しい高齢者支援モデル」になる
横浜市の取り組みは、 「行政が民間の身元保証・終身サポート事業者と連携する時代」の幕開けと言えます。
社会福祉法改正により、身寄りのない高齢者支援は公的な社会福祉事業として位置付けられました。 その中で、行政が民間事業者を評価し、連携し、市民に紹介する仕組みは、今後全国に広がる可能性が極めて高いです。
高齢者の単身化が進む日本において、 行政と民間が協働して支援体制を構築することは不可欠です。
横浜市モデルは、その先駆けとして大きな意味を持つ取り組みと言えるでしょう。



