特養淘汰の時代














 特養入所の利用率は従来型が93.7%(同94.2%)、ユニット型が93.8%(同94.4%)とともに低下しています。特養は介護保険上の職員の配置基準が手厚くなっており、人件費などが膨らむため「定員の95%」程度の入所率が一つの黒字の目安とされています。わずかな空室の増加でも経営に影響が出る恐れがあります。利用率が95%を切れば当然赤字経営となる恐れがあるのです。  

 65歳以上の高齢者数は2042年にはピークを迎え、それ以降は減少に転じます。これまでは建築、設備費用や人件費等固定費が高くても、高い稼働率や待機待ちの増加で、顕在化しなかった経営問題がここにきて噴出し始めています。  

 全国老人福祉施設協議会の田中雅英副会長は「地方では事業の存続が難しい法人が増え、特養は淘汰の時代になる」と指摘しています。  

 要は、補助金を出して高い建築費用や充実した設備に加えて、手厚い介護のための高い人件費という固定費が高い事業は、利用者数の減少により、一気に経営問題化し始めてきたと言えるのではないでしょうか。それに介護報酬の改定では根本的な問題は解決しません。  

 重量級の施設運営から、民間の住宅型有料、サ高住といった軽量級の施設運営に大きく変化を遂げてきたのに、依然として体質を変えることのできない施設は淘汰をされていく。そのように時代になってきたとみるべきでしょう。札幌の特養のように、一部サ高住に転換して、稼働率アップをはかるような取り組みが今後は必要と考えられます。  
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「余る」特養、存続に黄信号 賃貸住宅転用で活路、北海道に先行モデル 
日経新聞2024年1月29日 
 長期間の入所待機が当たり前だった特別養護老人ホームの状況が変わりつつある。全国の入所待機者の減少が続き、地方で空室が目立ち始めた。人口減社会を迎え、高齢人口の増加ペースが過疎地中心に落ち着いてきたことなどが要因だ。サービス継続に危機感が生まれる中、柔軟運営で活路を見いだしたモデルケースが北海道にある。社会福祉法人の芦別慈恵園が運営し、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に一部を転用した全国初とされる施設だ。