市長申立て成年後見は万能ではない














市長申立て成年後見人の選任について問題点が指摘されるようになりました。下記の記事が掲載されていましたが、成年後見「市長申立て」トラブルが顕在化してきています。

成年後見「首長申し立て」トラブル 港区長が第三者調査を表明

202648 1400分 朝日新聞

編集委員・森下香枝
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以下、市長申立て成年後見の問題点を整理しておきたいと思います。

港区のニュースは、成年後見制度の運用、特に行政が主導する「首長申し立て(市長申し立て)」の在り方に一石を投じる事実に注目が集まっています。

身寄りのない高齢者や判断能力が不十分な方を守るための最終的なセーフティネットであるはずの首長申し立てですが、その運用にはいくつかの構造的な課題が潜んでいます。主な問題点を整理しました。

1. 後見人選任プロセスの不透明性とミスマッチ

首長申し立てでは、実務上、家庭裁判所が選任する後見人の候補者を自治体側が推薦(あるいは調整)することが多くあります。

  • 適性の判断不足: 本人の生活実態や細かいニーズよりも、事務的な効率や順番待ちの状況で選任されるケースがあり、本人と後見人の相性や専門性の不一致(ミスマッチ)が起こりやすい側面があります。
  • 第三者チェックの欠如: 今回の港区の件でも指摘されているように、選任後の活動内容を自治体が十分にモニタリングする仕組みが弱く、不適切な対応があっても表面化しにくいのが現状です。

2. 「身上保護」の軽視と事務的対応

本来、後見業務は「財産管理」と「身上保護(生活や療養に関する配慮)」の二本柱です。

  • 事務処理の優先: 首長申し立てで選任される専門職(弁護士・司法書士等)や市民後見人の一部において、通帳の管理などの財産管理に偏り、本人の意思尊重や生活の質の向上(身上保護)が後回しにされる傾向があります。
  • 孤立の継続: 「後見人がついた」という事実だけで行政側の支援が一段落したと見なされ、本人が社会的に孤立したまま放置されるリスクがあります。

3. 報酬助成制度の限界

首長申し立てが行われる対象者は、低所得者や生活保護受給者が少なくありません。

  • 報酬支払いのジレンマ: 本人に報酬を支払う資力がない場合、自治体が助成金を出しますが、その予算には限りがあります。これが原因で、質の高い、手間のかかる支援を継続的に行う動機付けが働きにくいという構造的課題があります。

4. 権限の行使と本人の権利制限

市長申し立ては、本人の同意がなくても進められる「職権」に近い性格を持っています。

  • 自己決定権との葛藤: 本人の意向に反して施設入所が強行されたり、住み慣れた自宅が処分されたりする場合、それが真に「本人のため」なのか、行政側の「管理の都合」なのかという境界線が曖昧になることがあります。

5. 自治体の担当部署の専門性とリソース不足

  • 異動による継続性の断絶: 自治体の担当者は数年で異動するため、長期にわたる後見事案の経緯や、後見人との信頼関係を維持することが困難です。
  • 指導・監督体制の不備: 申立人としての責任(後見人が適切に動いているかを確認する義務)を果たすための専門知識や人員が不足している自治体が多く、トラブルの芽を早期に摘み取れない体制の問題があります。

まとめ
今回の事案は、首長申し立てが単なる「手続きの完了」をゴールにしてしまい、「選任された後見人が適切に機能しているか」という事後評価(モニタリング)が機能していなかったことを示唆しています。

市長申し立ては万能な解決策ではなく、むしろ行政側がより強い責任を持って、後見人の活動を監視・支援する仕組み、あるいは第三者機関によるチェック体制の構築が急務であると言えます。