制度開設シリーズ③










【制度解説シリーズ③】社会福祉法改正でケアマネジャーは保険外事業に参入しやすくなるのか? ~利益相反と地域連携の視点から考える~

社会福祉法改正をめぐり、最近よくいただく質問があります。

「今回の改正で、ケアマネジャーや介護事業者は保険外サービスを自由に提供できるようになるのでしょうか。」

「利益相反の問題は解消されたのでしょうか。」

身元保証や死後事務、生活支援などの保険外サービスへの関心が高まる中、多くの介護事業者やケアマネジャーが制度の方向性に注目しています。

そこで今回は、現時点で公表されている法案や厚生労働省の概要資料をもとに、この点について整理してみたいと思います。

今回の改正の柱は何か

まず押さえておきたいのは、今回の社会福祉法改正の目的です。

公表されている資料を見る限り、改正の中心となっているのは次の三つです。

・地域における包括的な支援体制の充実
・福祉人材の確保・定着(更新研修の見直し等を含む)
・地域福祉を支える基盤の強化

つまり、高齢者や生活困窮者、身寄りのない方などを地域全体で支える仕組みづくりが主なテーマとなっています。

一方で、「ケアマネジャーが利益相反を気にすることなく保険外事業を販売・提供できるようになる」といった趣旨の規定は、少なくとも現時点で公表されている概要資料には明記されていません。

利益相反の考え方は変わったのか

私は、現時点では「大きく変わったとは読み取れない」と考えています。

ケアマネジャーは、利用者の立場に立って最適なサービスを中立・公正に選択することが本来の役割です。

そのため、自らが所属する法人の保険外サービスを積極的に販売・契約する場合には、

「利用者に本当に必要だから勧めているのか」

それとも

「法人の収益を増やすために勧めているのか」

という利益相反の問題が生じる可能性があります。

この考え方は、介護保険制度の信頼性を支える基本原則であり、今回の社会福祉法改正によって変更されたとまでは読み取れません。

保険外サービスが不要という意味ではない

もちろん、これは保険外サービスの必要性を否定するものではありません。

むしろ現場では、

・身元保証人がいない
・財産管理に困っている
・死後の手続きをお願いしたい
・入院時や施設入所時の支援が必要

といった相談は年々増えています。

これらは介護保険サービスだけでは対応できない課題です。

つまり、保険外サービスそのものの重要性は今後さらに高まっていくと考えられます。

では、介護事業者はどう対応すべきか

現実的には、自らすべてを受託するよりも、専門機関との連携を進めることが重要になるでしょう。

例えば、

・身元引受
・身元保証
・財産管理
・死後事務委任

といった専門性と契約責任を伴う分野については、それぞれの専門事業者へつなぐ仕組みを整備することが、利用者にとっても安心につながります。

介護事業者は利用者の日常生活を最も身近で支える存在であり、課題を最初に発見することができます。

一方、契約に基づき長期的な責任を負うサービスは、その分野に精通した専門機関が担う。

この役割分担は、利用者にとっても合理的な仕組みと言えるでしょう。

ケアマネジャーに求められる役割は「販売」ではなく「コーディネート」

今回の制度改正を見て私が強く感じるのは、ケアマネジャーの役割は「保険外サービスを販売すること」ではなく、「地域の資源をつなぐこと」にあるという点です。

利用者の生活課題を把握し、

「この課題は誰が支援するのが最も適切か」

を判断し、地域の専門機関へつなぐ。

このコーディネート機能こそが、今後ますます重要になっていくのではないでしょうか。

地域包括ケアは「連携」の時代へ

社会福祉協議会には地域福祉を支える役割があります。

地域包括支援センターには総合相談機能があります。

病院の医療ソーシャルワーカーには医療との連携があります。

ケアマネジャーには介護支援の専門性があります。

そして、

・包括型身元引受
・財産管理
・死後事務委任
・契約に基づく継続支援

などは、専門事業者が担う領域です。

これから求められるのは、それぞれが同じ仕事をすることではなく、それぞれの専門性を生かして連携することです。

「競争」から「共創」へ

高齢者を取り巻く課題は、医療、介護、福祉だけでは解決できません。

住まい、財産管理、契約支援、死後事務など、多くの課題が複雑に重なり合っています。

だからこそ、制度改正を「新たな競争の始まり」と捉えるのではなく、「地域で支え合う新たな連携のスタート」と考えることが重要ではないでしょうか。

現時点で公表されている資料を見る限り、今回の社会福祉法改正は、介護事業者が自由に保険外サービスを販売できるようにする制度ではなく、それぞれの専門性を生かした地域連携を強化する制度として理解することが最も自然だと考えられます。

私たち一般社団法人ロングライフサポート協会も、社会福祉協議会、地域包括支援センター、ケアマネジャー、病院、介護事業者、行政と連携しながら、公的制度だけでは対応が難しい「包括型身元引受」の分野を担う社会インフラとして、地域包括ケアの一翼を担ってまいります。

誰一人、必要な支援から取り残されない地域社会を実現するために、それぞれの専門性を尊重し、競争ではなく「共創」の視点で支援の輪を広げていきたいと考えています。