
社会福祉法改正で変わる高齢者支援 ― 「シャドーワーク」が正式な社会資源となる時代へ
近年、「身寄りのない高齢者」の増加は、介護・医療・福祉の現場における大きな課題となっています。
訪問介護事業所や居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)の皆様は、本来の介護保険サービスだけでは解決できない多くの支援を、これまで善意と使命感によって担ってこられました。
例えば、
・買い物や生活用品の手配
・病院への付き添い
・役所での各種手続き
・金融機関での手続きやお金の引き出しの補助
・緊急連絡先としての対応
・入退院時の支援
など、本来は介護保険制度の対象ではない「保険外サービス」が日常的に行われています。
こうした業務は近年、「シャドーワーク(見えない仕事)」と呼ばれるようになりました。
しかし、このシャドーワークは利用者の生活を支えるためには欠かせない仕事でありながら、十分な評価や報酬を得られないまま、現場の負担だけが増え続けてきました。
社会福祉法改正が示した新しい方向性
今回の社会福祉法改正では、「頼れる身寄りがない高齢者等」に対する日常生活支援や入退院支援、死後事務などを行う事業が第二種社会福祉事業として位置付けられる方向性が示されました。
これは単に制度が変わるというだけではありません。
これまで現場が「仕方なく」「無償で」対応してきた支援を、社会全体で支えるべき重要な福祉サービスとして位置付けようとする大きな転換点であると考えています。
もちろん、今後の省令やガイドラインで具体的な運用は明らかになりますが、国が「介護保険だけでは高齢者の生活は支えきれない」という現実を制度として認識し始めたことには、大きな意味があります。
第一層と第二層という役割分担
私は、これからの高齢者支援は次のような二層構造で考えると分かりやすいのではないかと考えています。
第一層 生活支援を担う社会福祉サービス
訪問介護事業所、居宅介護支援事業所、社会福祉法人、地域包括支援センターなどが中心となり、
・買い物支援
・通院同行
・入退院支援
・各種手続きの支援
・見守り
・日常生活のサポート
などを担う領域です。
これまでシャドーワークと呼ばれてきた業務が、この第一層のサービスとして制度化されていく可能性があります。
第二層 専門的な契約サービス
一方で、
・身元引受
・身元保証
・財産管理
・死後事務委任
・相続支援
・不動産処分
・残置物処理
などは、契約に基づく高度な専門サービスです。
これらは専門的な知識、リスク管理、契約管理が必要であり、今後も民間事業者が担う重要な役割であると考えています。
つまり、「生活支援」と「契約支援」は対立するものではなく、それぞれが補完し合う関係にあります。
介護事業者との連携がこれからの鍵
介護事業者の皆様が日常生活支援を担い、その中で身元保証や財産管理、死後事務など専門的な支援が必要になった際には、専門機関へ円滑につなぐ仕組みが求められます。
私たち一般社団法人ロングライフサポート協会は、その専門機関として全国の介護事業者、病院、地域包括支援センター、施設紹介会社などと連携し、第一層では対応が難しい案件を安心してお任せいただける体制づくりを進めています。
介護事業者が専門外の業務まで抱え込む必要はありません。
それぞれの専門性を尊重しながら連携することで、利用者にとって最適な支援体制を構築することができます。
同一法人でも連携は可能
「介護保険サービスと保険外サービスを同じ法人で行ってもよいのか」というご質問をいただくことがあります。
私は、適切な業務区分がなされていれば十分可能だと考えています。
ただし、
・担当者の区分
・契約の区分
・会計の区分
・業務記録の区分
・苦情対応体制
などを明確に分けることが重要です。
これは利用者を守るためであると同時に、事業者自身を守るためでもあります。
「競争」ではなく「協働」の時代へ
身寄りのない高齢者は今後さらに増加していきます。
一つの事業者だけで全ての課題を解決することは困難です。
だからこそ、介護・医療・福祉・行政・民間企業がそれぞれの専門性を生かしながら連携する時代が始まろうとしています。
私たちは、身元引受事業を単なる民間サービスとは考えていません。
高齢者が安心して暮らし続けられる社会を支える「社会インフラ」の一つであると考えています。
介護事業者の皆様が安心して利用者をご紹介いただける専門機関として、また共に地域を支えるパートナーとして、今後も全国の皆様との連携を広げてまいります。
超高齢社会の課題は、一つの組織だけでは解決できません。
だからこそ、専門性を持つ者同士が役割を分担し、つながり合うことで、誰一人「身寄りがないこと」を理由に必要な支援を受けられない社会をつくらなければなりません。
これからは「競争」の時代ではなく、「協働」の時代です。
私たちは、その新しい地域包括支援の仕組みづくりに、介護・医療・福祉の皆様とともに挑戦していきたいと考えています。
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