2022年04月18日 15:30 〜 17:00 10階ホール「成年後見制度改革の必要とその方向性」 山野目章夫・早稲田大学大学院教授
国を始め、各地域で地域の社会保障のあり方について提言や検討がなされている。只、各々がそれぞれの立場で検討をしているにすぎず、いずれも超高齢社会の社会福祉、社会保障の処方箋とまでは至っていなのではないか。山野先生は成年後見制度改革と併せて、地域の社会福祉組織の在り方について提言しているが、まだその内容は不十分である。
社会福祉制度を支える新たな担い手として民間事業者の参入を増やすという点は評価できるが、民間と行政とで包括的地域支援の仕組みを作るべきというが、問題なのは包括的地域支援を支える多数のプレーヤーをどう動員するのか、そしてそれぞれのプレーヤーが持つコンテンツをどのように統合するのかというグランドデザインが不十分なのである。
例えば、山野教授は「被後見人や要支援者の金銭管理サービスを担うのは金融や生保などの民間事業者、日常生活を手伝うのは当事者団体や市民後見人養成研修を終えた個人、それらの業務が適正に成されているかを監督・支援するのは社会福祉協議会などの専門職団体。三者セットで運用されれば、横領や不正などの犯罪は防げるともくろむ。そして制度を監督・支援する役割を社福協などに任せること」を提言している。
果たして、この内容に実効性を期待できるのであろうか?
・金銭管理サービスを担うのは金融や生保➡100%難しい。金融機関が金銭管理サービスのリスクを負うことはまずないであろう。
・日常生活支援は当事者団体や市民後見人養成研修を終えた個人➡一体どれだけの団体や個人がその機能を担うことができるのか?認知症予備軍を含めて意思決定が難しくなっているという1,000万人のサポートすることは不可能であろう。
・それらの業務を監督・支援するのは社会福祉協議会などの専門職団体➡現状の業務で手一杯であり、その監督、支援業務にまでは到底手が回らないと考える。
・こうした社会福祉改革を実現させるには、民法をはじめ関連法の改正が必須になる➡民法の改正を待ってこれらの仕組みをバックアップするのにいつまで時間をかけるつもりなのか?改正を待って実行するのでは手遅れとなるのは明らかであり、民間サービスの大量導入により行政と連携しながら制度、法律を変えていくしかないのではないか。
以上の観点で、上記の提案は全く可能性がないものと考える。是非、皆さんのご意見を頂戴したい。