
従来型特別養護老人ホームは従来型(相部屋型)は48.1%が赤字、ユニット型では34.5%が赤字。赤字が拡大しているので介護報酬を上げる。当然のように聞こえるが、特養の経営の問題点について誰も触れない。 只、赤字施設は利用率が低く、収益が確保できていない一方、従事者 1 人当たり人件費が高いと結論付けている。しかし、これは全ての施設について当てはまるものではない。黒字施設と比較してみるとそれは特養全体に言えるのではない。ユニット型の黒字施設は平均8.3%もの利益を出しているのである。

特養の置かれている本質的問題点には誰も踏み込まない。赤字施設の割合はユニット型より従来型の方が多い。意外であった。逆かと思ったが、従来型の相部屋タイプの方が料金の高いユニット型よりも赤字割合が高いのである。
その理由は稼働率についてはほぼ同様、当然赤字施設はどちらも稼働率が91%程度と低い。大きく異なるのは一人当たりの利用者単価である。ユニット型の方が多い。
人件費比率は赤字施設ではどちらもほぼ70%程度となっており、黒字施設の60%程度からは大きな差がある。
利用者10人当たりの従業員数はユニット型の方が従来型よりも多い反面、従事者一人当たり人件費は従来型の方が高い。

以上を総括してみれば、ユニット型でも一人当たりの利用者単価が高く、人件費を抑えているところは8.3%もの利益を出しているのである。従来型でも一人当たりの利用者単価はユニット型よりも低くとも、古い建物で減価償却費が低く、利用者10人当たりの従業員数を押さえているところは人件費率も62%と抑えられ、結果としては5.7%の利益を出しているのである。

要は赤字が拡大している最大の要因は、報酬の問題よりも経営の問題に依存する部分が大きいのではないかと考える。入居率を高くして、一人当たりの利用者単価を確保し、相当の人員で運営をすれば一定の利益のでる構造はつくれるのではないかと思われる。
今回の介護報酬改定で従来型の赤字施設が約半数にまでになったというのは、前年に対して利用率が低下しているにも関わらず、従業員一人当たりの人件費が上昇し、併せて1施設当たりの水道光熱費が上がったことである。1施設当たりの水道光熱費の上昇はユニット型とほぼ同じであるので、最大の問題は稼働率と人件費のコントロールが出来ていないことによると判断される。
やはり経営問題なのである。にもかかわらず、介護報酬改定で何とかしようというのは団体の圧力に他ならない。このままでは居住系高齢者施設に淘汰される時代が来る。
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従来型特別養護老人ホーム48.1%が赤字 福祉医療機構調べ
ケアマネドットコムニュース 厚生政策情報センター2024.2.16
2022年度 特別養護老人ホームの経営状況について(2/7)《福祉医療機構》が報告された。そのポイントは次の通り。2022 年度 特別養護老人ホームの経営状況について《福祉医療機構》
サービス活動増減差額比率が低下、従来型は半数近くの施設で赤字
➢ 2022 年度の経営状況
✓ 利用率の低下および水道光熱費の増加によりサービス活動増減差額比率が低下。赤字施設割合も 従来型は 48.1%、ユニット型は 34.5%に拡大
✓ 水道光熱費率が 8%以上の施設は、赤字施設割合が過半数を占める
➢ 定員規模別、黒字・赤字施設別の経営状況
✓ 定員規模が大きいほどサービス活動増減差額比率は高い傾向
✓ 赤字施設は利用率が低く、収益が確保できていない一方、従事者 1 人当たり人件費が高い
福祉医療機構は、従来型の特別養護老人ホーム1,856施設の半数近くの48.1%が2022年度決算で赤字だったとするリサーチレポートをまとめた。
1施設当たりの利用率が「特養入所」「短期入所」の双方で下がる一方、収入に占める水道光熱費の割合は上昇し、本業の利益率に当たる「サービス活動増減差額比率」が低下した。 特養の経営では近年、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどとの競合も激化しているといい、報告では「他施設との差別化を進めて利用率や利用者単価の上昇につなげられるかがこれからのカギになる」としている。
リサーチレポートでは、融資先の従来型特養1,856施設から報告があった22年度決算のデータを使い、経営状況を分析した。 その結果、1施設当たりの入所待機登録者数は21年度(1,756施設)から16.5人減少し、16年度以降で最低の111.1人だった。「特養入所」の定員に対する利用率は92.7%で、0.9ポイントのダウン。「短期入所」の利用率(77.8%)も1.9ポイント低下した。一方、1年間の延べ利用者1人当たりの収入に当たる「利用者単価」は1万2,787円(381円増)、スタッフ1人当たりの収入は685.2万円(7.3万円増)と共に増えていた。
これに対し、費用では収入に占める人件費率(65.7%)が0.2ポイントダウンしたが、経費率は1.2ポイント上昇し、29.5%だった。中でも、水道光熱費率は1.1ポイント上昇し、収入の6.0%を占めている。 本業の利益率に当たるサービス活動増減差額比率は、21年度から逆に1.1ポイント下がり、22年度はプラス0.3%だった。 従来型特養のサービス活動増減差額比率は、17-20年度にはプラス2%台後半で推移していたが、21年度にはプラス1.4%と1ポイント超下がった。22年度には、黒字幅がさらに縮小したことになる。
赤字施設の割合は、20年度の35.2%から21年度には42.0%に上昇し、22年度は48.1%と半数に迫った。 赤字施設の割合は水道光熱費率が高い区分ほど拡大し、「水道光熱費率8%以上」では189施設の57.7%が赤字だった。報告では、物価高騰に伴う電気・ガス料金の値上げが特養の経営に影響を与えたと言及している。