無尽灯

医療&介護のコンサルティング会社・一般社団法人ロングライフサポート協会代表理事 清原 晃のブログ
高齢社会、貧困、子育て支援などの様々な社会課題が顕在化しつつあります。このような地域社会の課題解決に向けて家族に代わる「新しい身寄り社会」を創造する取り組みとして、2011年から①身元引受サービス②高齢者住宅低価格モデルの開発③中小零細高齢者住宅事業支援サービスを掲げた「ソーシャルビジネス」にチャレンジしています。

カテゴリ: 介護3施設の問題点

特養は淘汰される














 従来型特別養護老人ホームは従来型(相部屋型)は48.1%が赤字、ユニット型では34.5%が赤字。赤字が拡大しているので介護報酬を上げる。当然のように聞こえるが、特養の経営の問題点について誰も触れない。 只、赤字施設は利用率が低く、収益が確保できていない一方、従事者 1 人当たり人件費が高いと結論付けている。しかし、これは全ての施設について当てはまるものではない。黒字施設と比較してみるとそれは特養全体に言えるのではない。ユニット型の黒字施設は平均8.3%もの利益を出しているのである。   
従来型とユニット型の収益差推移


















 特養の置かれている本質的問題点には誰も踏み込まない。赤字施設の割合はユニット型より従来型の方が多い。意外であった。逆かと思ったが、従来型の相部屋タイプの方が料金の高いユニット型よりも赤字割合が高いのである。   

 その理由は稼働率についてはほぼ同様、当然赤字施設はどちらも稼働率が91%程度と低い。大きく異なるのは一人当たりの利用者単価である。ユニット型の方が多い。
人件費比率は赤字施設ではどちらもほぼ70%程度となっており、黒字施設の60%程度からは大きな差がある。
利用者10人当たりの従業員数はユニット型の方が従来型よりも多い反面、従事者一人当たり人件費は従来型の方が高い。
2021,2022年度の特養の経営状況
















  

 以上を総括してみれば、ユニット型でも一人当たりの利用者単価が高く、人件費を抑えているところは8.3%もの利益を出しているのである。従来型でも一人当たりの利用者単価はユニット型よりも低くとも、古い建物で減価償却費が低く、利用者10人当たりの従業員数を押さえているところは人件費率も62%と抑えられ、結果としては5.7%の利益を出しているのである。
特養の経営分析   














 要は赤字が拡大している最大の要因は、報酬の問題よりも経営の問題に依存する部分が大きいのではないかと考える。入居率を高くして、一人当たりの利用者単価を確保し、相当の人員で運営をすれば一定の利益のでる構造はつくれるのではないかと思われる。   

 今回の介護報酬改定で従来型の赤字施設が約半数にまでになったというのは、前年に対して利用率が低下しているにも関わらず、従業員一人当たりの人件費が上昇し、併せて1施設当たりの水道光熱費が上がったことである。1施設当たりの水道光熱費の上昇はユニット型とほぼ同じであるので、最大の問題は稼働率と人件費のコントロールが出来ていないことによると判断される。   
 やはり経営問題なのである。にもかかわらず、介護報酬改定で何とかしようというのは団体の圧力に他ならない。このままでは居住系高齢者施設に淘汰される時代が来る。
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従来型特別養護老人ホーム48.1%が赤字 福祉医療機構調べ 
ケアマネドットコムニュース 厚生政策情報センター2024.2.16   
 2022年度 特別養護老人ホームの経営状況について(2/7)《福祉医療機構》が報告された。そのポイントは次の通り。
サービス活動増減差額比率が低下、従来型は半数近くの施設で赤字
➢ 2022 年度の経営状況  
✓ 利用率の低下および水道光熱費の増加によりサービス活動増減差額比率が低下。赤字施設割合も   従来型は 48.1%、ユニット型は 34.5%に拡大  
✓ 水道光熱費率が 8%以上の施設は、赤字施設割合が過半数を占める
➢ 定員規模別、黒字・赤字施設別の経営状況  
✓ 定員規模が大きいほどサービス活動増減差額比率は高い傾向  
✓ 赤字施設は利用率が低く、収益が確保できていない一方、従事者 1 人当たり人件費が高い
2022 年度 特別養護老人ホームの経営状況について《福祉医療機構》
 福祉医療機構は、従来型の特別養護老人ホーム1,856施設の半数近くの48.1%が2022年度決算で赤字だったとするリサーチレポートをまとめた。

 1施設当たりの利用率が「特養入所」「短期入所」の双方で下がる一方、収入に占める水道光熱費の割合は上昇し、本業の利益率に当たる「サービス活動増減差額比率」が低下した。 特養の経営では近年、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどとの競合も激化しているといい、報告では「他施設との差別化を進めて利用率や利用者単価の上昇につなげられるかがこれからのカギになる」としている。

 リサーチレポートでは、融資先の従来型特養1,856施設から報告があった22年度決算のデータを使い、経営状況を分析した。 その結果、1施設当たりの入所待機登録者数は21年度(1,756施設)から16.5人減少し、16年度以降で最低の111.1人だった。「特養入所」の定員に対する利用率は92.7%で、0.9ポイントのダウン。「短期入所」の利用率(77.8%)も1.9ポイント低下した。一方、1年間の延べ利用者1人当たりの収入に当たる「利用者単価」は1万2,787円(381円増)、スタッフ1人当たりの収入は685.2万円(7.3万円増)と共に増えていた。

これに対し、費用では収入に占める人件費率(65.7%)が0.2ポイントダウンしたが、経費率は1.2ポイント上昇し、29.5%だった。中でも、水道光熱費率は1.1ポイント上昇し、収入の6.0%を占めている。 本業の利益率に当たるサービス活動増減差額比率は、21年度から逆に1.1ポイント下がり、22年度はプラス0.3%だった。 従来型特養のサービス活動増減差額比率は、17-20年度にはプラス2%台後半で推移していたが、21年度にはプラス1.4%と1ポイント超下がった。22年度には、黒字幅がさらに縮小したことになる。

赤字施設の割合は、20年度の35.2%から21年度には42.0%に上昇し、22年度は48.1%と半数に迫った。 赤字施設の割合は水道光熱費率が高い区分ほど拡大し、「水道光熱費率8%以上」では189施設の57.7%が赤字だった。報告では、物価高騰に伴う電気・ガス料金の値上げが特養の経営に影響を与えたと言及している。
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特養淘汰の時代














 特養入所の利用率は従来型が93.7%(同94.2%)、ユニット型が93.8%(同94.4%)とともに低下しています。特養は介護保険上の職員の配置基準が手厚くなっており、人件費などが膨らむため「定員の95%」程度の入所率が一つの黒字の目安とされています。わずかな空室の増加でも経営に影響が出る恐れがあります。利用率が95%を切れば当然赤字経営となる恐れがあるのです。  

 65歳以上の高齢者数は2042年にはピークを迎え、それ以降は減少に転じます。これまでは建築、設備費用や人件費等固定費が高くても、高い稼働率や待機待ちの増加で、顕在化しなかった経営問題がここにきて噴出し始めています。  

 全国老人福祉施設協議会の田中雅英副会長は「地方では事業の存続が難しい法人が増え、特養は淘汰の時代になる」と指摘しています。  

 要は、補助金を出して高い建築費用や充実した設備に加えて、手厚い介護のための高い人件費という固定費が高い事業は、利用者数の減少により、一気に経営問題化し始めてきたと言えるのではないでしょうか。それに介護報酬の改定では根本的な問題は解決しません。  

 重量級の施設運営から、民間の住宅型有料、サ高住といった軽量級の施設運営に大きく変化を遂げてきたのに、依然として体質を変えることのできない施設は淘汰をされていく。そのように時代になってきたとみるべきでしょう。札幌の特養のように、一部サ高住に転換して、稼働率アップをはかるような取り組みが今後は必要と考えられます。  
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「余る」特養、存続に黄信号 賃貸住宅転用で活路、北海道に先行モデル 
日経新聞2024年1月29日 
 長期間の入所待機が当たり前だった特別養護老人ホームの状況が変わりつつある。全国の入所待機者の減少が続き、地方で空室が目立ち始めた。人口減社会を迎え、高齢人口の増加ペースが過疎地中心に落ち着いてきたことなどが要因だ。サービス継続に危機感が生まれる中、柔軟運営で活路を見いだしたモデルケースが北海道にある。社会福祉法人の芦別慈恵園が運営し、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に一部を転用した全国初とされる施設だ。
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特養も老健も赤字が拡大している模様。WAMの調査では昨年度従来型特養の42%、ユニット型特養の30.5%が赤字という調査レポートを公表した。

収益の増加を費用の増加が上回ったというが、その主な要因は人件費や水道光熱費の増加等が挙げられている。又、他の要因としては稼働率が落ちている施設もあるという。

特養の収益構造が変わってきたというべきであろうか。元々、建設コストが高いだけにその維持費は高いことは前からの問題として指摘されてきところである。その上に、人件費や水光熱費の増加により損益分岐点が上昇し、加えて他の高齢者施設と大きく変わることのない入居費用により競争力を失いつつあるのではないかと懸念される。

特養、老健の構造的問題がより顕著になり始めている。最近では建築コストが高止まり、更にその維持費は高くなってきている。急速に競争力を失いつつあるのではないかと推察される。
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特養、赤字施設が増加 昨年度は従来型で4割超 人件費率・経費率が上昇=WAM調査
介護のニュースJOINT2023.3.28
 福祉医療機構が先週末、特別養護老人ホームの経営状況を明らかにする調査レポートを新たに公表した。   
 昨年度(2021年度)に赤字だった施設の割合は従来型で42.0%、ユニット型で30.5%。いずれも前年度より拡大していた。   

 従来型、ユニット型それぞれ、介護報酬のプラス改定の影響などで利用者単価は上昇している。ただ同時に人件費率が上がったほか、水道光熱費などの高騰で経費率も上昇。WAMは「収益の増加を費用の増加が上回ったことで経営状況が悪化した」とまとめている。この調査は、WAMの貸付先で特養を運営する社会福祉法人が対象。4946施設の昨年度の財務諸表などを分析した結果だ。    

 WAMは、「利用率を維持・向上し、利用者あたりの職員数を適正な水準にすることが良好な経営のために必要」と解説。「高齢者向け住まいの選択肢が広がり、また、高齢者人口が減少に転じる地域も出てきているなか、今後はいっそう利用者の確保が安定運営のカギになる」とも指摘している。

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【本ブログについてのお問い合わせ】

一般社団法人ロングライフサポート協会

TEL:0120-196-119

E-mail:info@ll-support.jp

【一般社団法人ロングライフサポート協会について】

当協会は身元引受と法人コンサルの両面から高齢者の生活を支援する企業です。

身元引受は身寄りの無い方がご入居する際のサポート、葬儀サポート、金銭管理から、独居の方の電話による見守り業務まで幅広くおこなっております。

コンサルとしては、長年にわたる経験から、時代を先取りした”未来”をお届けするものです。介護報酬の改定やいろいろなリスクを勘案し、行政申請から内部監査、予算の見直しまで含めた総合的なものスポット的なものを取り揃えております。
高齢者支援サービスでお困りの際はロングライフサポート協会までお問い合わせください。

サポート協会URL:http://lls.sakura.ne.jp/
身寄りドットコム:http://miyori-support.com/

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大震災以降も移転進まず。全国の自治体で約1000の自治体で災害区域内にある特養ホームや老健施設の移転が進んでいないことが明らかになった。ここにも日本の構造的な問題点がある。条件の悪い市街化調整区域につくってきた福祉施設の政策を転換せねばならないのに、思い切った対策が打てずにいる。特養約61万人、老健約36万人、合計約100万人の安全対策が危惧されている。
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全国の千自治体で災害区域に特養
富山新聞2021.2.13
津波・洪水の浸水想定区域や土砂災害警戒区域に、特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設が立地している自治体は、約千市区町村に上ることが13日、共同通信のアンケートで分かった。このうち東日本大震災以降、防災のために移転した施設がないとした自治体は約95%。介護施設で暮らす高齢者の被災が相次ぐが、立地面での安全対策がなかなか進まない実態が浮き彫りとなった。 

調査は昨年10~12月に実施。特養や介護老人保健施設(老健)など介護保険施設について尋ね、全国の1469市区町村から回答を得た。
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2019年度の社会福祉法人の経営分析がWAMから発表されている。赤字法人が減少というが、28.8%が28.5%とわずか0.3%減っただけで赤字体質に大きな差はない。実質横ばいに過ぎない。恐らく20年はコロナの影響で更に悪化することが予測される。ただ、この分析結果は社会福祉法人全体を分析したもので、特養等の高齢者施設を運営する社会福祉法人の経営は更に苦しくなっているのではないかと推定される。
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社会福祉法人 赤字法人減少 WAM調査 
高齢者住宅新聞2021.1.21

19年度決算 経営分析

独立行政法人福祉医療機構(以下・WAM/東京都港区)は6日、「2019年度(令和元年度)決算︱社会福祉法人の経営分析参考指標の概要」を公表した。19年度では従事者1人当たり収益増が人件費増を上回り、社会福祉法人の経営効率化が進んでいることがうかがえる。 

 

内訳をみると、事業の収益性を示す「サービス活動収益対サービス活動増減差額比率は、2.9%と18年度と同値。全体では、経営状況は概ね「横ばい」の結果となった。

社会福祉法人における事業ごとの収益については、介護保険事業収益は19年度では52.9%。
18年度の53.5%に対し、0.5%減と数世帯の場合は、後期高齢者の年収合計が320万円以上)の高齢者とした。導入時期は22年度後半とし、政令で定める。施行に際し全事業区分中、最大のマイナス値となった。
一方、保育事業収益は21.2%で18年度に対し0.8%増。保育所の公定価格の上昇によるもので、他のマイナスを補った。
経常増減差額が0未満の赤字法人の割合は、28.5%と、18年度の29.3%より0.9ポイント減少。また、経費率の内訳をみると、事業費率は13.4%と18年度より0.3%低下している。

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